潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第十五章 晩餐にて

ロートレック 2

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おじ様が、銀のフォークを手に取った。

フォークの先が、血塗れの肉を、潤の口の中に押しやった。

潤の唇の端から、つつーと顎に赤い血が垂れた。

おじ様が、フォークを置いた。

おじ様は、潤を甘やかすように、潤の上半身を仰向けさせて、口を吸った。

唇の端から顎に垂れた赤い血を、おじ様の舌が、舐めとった。

顔の輪郭線、下顎の骨から始まって、潤の唇の左端までの道程を、おじ様は、焦らすように、ゆっくりと、舌で辿った。

「んー」

潤が、腰を、欲しそうに揺らした。

あそこが疼くように、欲しがるように、腰を動かして、無言のうちに催促した。

潤、また、そんな風に、退行している癖に淫乱で。

僕は、悲しくなった。

潤は、いったい、この迷宮から、いつになったら、出られるのだろう?  どうやったら?  鍵がかかっているわけじゃない、腐りで繋がれているわけでもないのに。

僕は、傍観しているしかなかった。

また一つ、蝋燭がジジッと微かな音をたてて消えた。

食卓は、少しずつ闇に沈んでいく。

沈んでいく船のように。

潤、君は、いってしまうの?

もときた道を戻って。

また、もとに戻ってしまうよ?

せっかく、僕と手をつないで、ここまで来たのに。

それで、いいの?

僕の悲しみの鼓動は、高まった。
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