悪役貴族に転生した俺、主人公のチート魔法を持ってました〜鬱展開をぶっ壊して、目指せ最高のハッピーエンド!〜

いちまる

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悪役貴族のニューゲーム!

【sideソフィー】竜と一緒にあの人へ♪

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「それでね、それでね! 怖い人に囲まれて、変な薬を飲まされて気を失ったんだけど、目が覚めたら誘拐犯さんはみーんなぐるぐる巻きになってたの!」

 私――ソフィー・オライオンが誘拐されかけたその日。
 目が覚めた私のところに、色んな人が集まってきた。
 まだちょっぴり薬のせいで眠たい私を、パパとママが泣きながら抱きしめてくれて、ばあやは顔を真っ青にして何度も頭を下げてた。

 気持ちが大分落ち着いてきた私に、パパが事情を説明してくれたの。
 私がばあやと廊下を歩いてたと思ってたんだけど、その人はばあやに変装した悪い人。本物のばあやは物置小屋の中に押し込められてたんだって。
 誘拐犯さんは皆、パパに恨みを持ってる領地の人。
 一人娘の私をさらって、奴隷商さんに売り飛ばそうとしてたみたい。
 それってすっごく怖いねって言ったら、ふたりとももう一度私を抱きしめてくれた。

 残党がいないかなんて、屋敷中の大捜索が入って舞踏会どころじゃなくなったけど、パパとママはそれよりもずっと気になることがあったの。

「ソフィー、ひとりでこんなことをやってのけたのかい?」
「あなたを助けてくれた人がいるの? 顔は見た? どんな人だったか、覚えてるかしら?」

 私を助けてくれた人を、私よりずっと知りたがってた。
 お礼を言うのかな、それとも「お前も犯人だーっ!」なんて言って、その人のことも捕まえてロンドミウムにあるアーベンハイル大監獄に押し込めちゃうのかな。
 でも、どっちだとしても私は言えない。

『俺のことは、誰にも言わないでくれよ』

 その人に、お願いされちゃったもん。

「……分かんない」

 だから、私はこう答えた。
 パパもママも、最後は納得してくれた。

 ――でも、私の好奇心は収まらない。
 ポーションを飲ませてもらって、すっかり回復した私は、何人も護衛を付けてもらったまま両親の寝室に連れて行ってもらった。
 今日は何が起きるか分からないから、一緒に寝るんだって。

「ねえ、パパ? 今日、私と踊った殿方のお名前って、分かったりする?」

 その時なら大丈夫だと思って、私はパパに聞いた。
 私の名前でも、私の体でもなくて、振り向いた時に私の目を見てくれた人――そして、私を誘拐犯さんから助けてくれた
 結局踊っている間も、助けてもらった時もあの人の名前を聞けてなくて、それだけがとっても気になって仕方なかったの。

「ソフィーと踊っていた……ああ、ドミニク君の弟か」
「ドミニク?」
「ゴールディング公爵の息子さんでね、事実上次期領主が確定している秀才だよ。その弟といえば……確か、ネイトとかいったかな?」

 ネイト。
 彼が、私を助けてくれたんだね。

「だけど、おかしな話だよ。ネイトといえば、とんでもないドラ息子だと聞いていたぞ」
「そうねえ。なんでも領地で好き勝手やって大暴れ、召使い達にも嫌われてて、もうじき家族の縁を切られるなんて噂も立っていたくらいなのに……」
「正直、ドミニク君から弟も連れてくると言われた時には、断ろうかと思ったくらいだよ」

 パパとママの会話が、私には信じられなかった。
 彼の手はあんなに温かかったのに、踊っているときはずっと私を気遣ってくれたのに。
 そんな素敵な人が、悪い人だなんて!

「……だけど、舞踏会に来たのを私も見たが、噂を疑ってしまったよ」

 驚く私のそばで、パパが首を傾げた。

「随分とさっぱりした見た目で、噂のような陰湿さはなかったし、むしろ爽やかだというのが第一印象だったな。ソフィーと踊っているところを見ていたが、乱暴さはまるでなかった。あれは、ドミニク君以上にいい印象があるな」

 すごい!
 パパがこんなに人を褒めるなんて、あまりないんだよ!

「トライスフィア魔導学園に、今期から入学するって聞いたわ。魔法の才能はからっきしだって聞いたけど、どうなのかしら?」
「いいや、あれは無才には見えんぞ。実力を隠しているだけで、意外とやるかもしれんな」

 ママも隣で頷いてるんだから、やっぱり私の予感は間違いない。
 ネイト君はいい人で、とっても素敵な人だって!

『――ぎゃあう♪』

 つい顔がにやけちゃう私の隣で、赤くてちっちゃい竜が一緒に喜んでくれた。
 そうそう、私も魔法を使えるんだよ。

 私の魔法は無属性魔法の中でも特質な『召喚魔法サモン・マギ』。
 別世界に住むモンスターと契約を交わして、必要に応じて彼らを呼び出して一緒に戦う魔法。私の場合は、このリトルドラゴンの『パフ』と契約してる。
 この子はすっごく人懐っこいけど、とっても強いの。
 さらわれた時も召喚さえできれば、誘拐犯さんだってやっつけられたのに。

「ねえ、パフもネイト君に会ってみたい?」
『ぎゃあおう♪』

 私がパフの頭をなでると、この子も口を大きく開けて頷く。
 じゃあ、決まりだね。
 多分他の誰が反対しても、私は押し通してたと思うけど。

「パパ、ママ! 私もトライスフィア魔導学園に入学したいっ!」

 私の気持ちは決まってた。
 ネイト君と同じ学校に行って、彼と一緒に過ごしたいの♪

「「ええーっ!?」」

 ふたりがベッドの上で跳び上がった。
 パパもママも、きっとこれからも屋敷の中で緩やかに過ごしてほしいって思ってたんだろうけど、今の私はもう誰にも止められない。

 私を助けてくれたネイト君に会いたい。
 私の目を見つめてくれたネイト君に会いたい。
 会って、ありがとうって気持ちを伝えて、思いっきりぎゅーって抱きしめたい。
 今の私は――もう誰にも止められない!

「試験はいつ? 入学式は? 属性魔法は使えないけど、多分無属性魔法か特異な魔法の生徒だけを集めたクラスがあるよねっ! 明日から家庭教師さんを呼んで、魔法基礎学について勉強すれば筆記試験も何とかなるはずだよっ!」
「ま、まあまあ、落ち着いて!」
「パフとの戦闘訓練も大事かな? えーっと、パフは空が飛べて、炎が吐けて、大人ひとりくらいなら簡単にやっつけられて……あ、そうそう! 面接があるなら、私のダンスを披露しちゃおっかな! ダンスの先生さんも呼んじゃおっと!」
「「ソフィ~……」」

 結局、夜が明けて、ふたりが納得してくれるまで私の説得は続いた。
 とにもかくにも、これでトライスフィア魔導学園への入学はほとんど確定したの。



 ネイト君、私、きっと会いに行くから!
 あの時のお礼と――ほんとーに『一目惚れ』しちゃったって気持ちを一緒に、ね♪
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