悪役貴族に転生した俺、主人公のチート魔法を持ってました〜鬱展開をぶっ壊して、目指せ最高のハッピーエンド!〜

いちまる

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悪役貴族のスクールライフ!

【sideソフィー】第2体育館の戦い

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 私のトライスフィア魔導学園スタートデーは、ほんとーに素敵だった。
 キレイな校舎に美味しい食事、クラスメートも優しくて楽しい子ばかり。
 学舎の全部が、ソフィー・オライオンって人間を歓迎してるみたいで、すごく嬉しかった。

 特に、ネイト君と出会えたのはもう奇跡だよね。
 ネイト君は周りからひどい人だとか、乱暴者だとか言われてるけど、それはちょっと目つきが怖いからって、それだけだよ。
 私は知ってるもん、ネイト君がとってもカッコよくて、いい人だって。

 そんな彼と入学式の前に出会えたんだから、今日はサイコーに幸せな日になる――。

(――はず、だった)

 全部が過去形なのは、私が今、友達と離れたきり寮に帰ってないから。
 お手洗いに入ったタイミングを待ちわびていたように、サイテーな人達がいて、サイテーな提案をしてきたから、今のところはサイテーな1日だよ。
 で、その人達っていうのは、私を囲んで、人目につかない第2体育館に連れてきた人達。

「……さて、ここなら、誰も邪魔をしませんね」

 私の友達を傷つけた――貴族主義ノーブル・ワンの生徒だ。
 ネイト君にこっぴどくやられてすっかり反省したと思ったのに、懲りたどころか、彼に勝てないからって私を狙ってたみたい。
 で、私を「逃げたら友達を襲う」って脅して、人気のない、暗い体育館に連れてきたんだ。
 ここに来る途中、取り巻きの人が言ってたんだけど、第2体育館は今はもう使われてない体育館で、ふりょーの生徒がたむろしてるみたいなの。
 そんなところに私を連れ込んで、お話しするだけじゃ終わらないなんてのは知ってる。むしろ、私が終わらせるつもりなんてないよ。

「これが最後のチャンスです。貴族主義に加わると宣言しなさい」

 ほら、やっぱり。
 私とパフを囲んで、無理矢理言うことを聞かせるつもりだ。

『ぎゃうるるる……!』
「逆らうのは、長い目で見ても良い選択肢とは思えませんよ。私は組織の一部にすぎませんが、もしも貴族主義に歯向かうものだと認識されたなら、学園に居場所なんてないでしょう」
「どうしてそこまで、私にこだわるの? 他にも貴族生まれの子はいるでしょ?」

 いくら私の魔法が珍しいっていっても、特殊魔法を使う子は他にも山ほどいる。
 私にだけ執着する理由なんてちっとも分からないし、そういうのが私は嫌い。ソフィー・オライオンって女性を見ずに、ガワだけを見てる証拠だもん。

「僕の趣味が半分、勧められたのが半分、ですかね」
「……私を仲間にしろって、子分におススメされたの?」
「誰かをあなたに教える必要はありませんし、今、大事なことでもありません」

 ぽき、と骨を鳴らして、ダンカンや仲間達が魔力を手に集める。

「私はこの学園で成り上がり、貴族主義の頂点に立ちます。もう誰も、私を眼鏡のチビだなんて言わせない……あなたには、私の御旗になってほしいのですよ」
「ミハタ?」
「私をいろどる装飾品です。もちろん、それ以上の関係性でも構いませんが」

 にたにたと笑う彼らのどこから、そんな自信が湧いてくるのかな?
 私もワガママな方だって自覚はあるけど、彼らはそんなレベルじゃない。
 自分が欲しいものは全部奪ってやるって変な気迫に満ちてるから、私が貴族主義の一員になってダンカンの後ろを歩くのが当然だって思ってるんだ。

「――そんなに自分を強く見せてるなんて、よっぽど怖がりなんだね!」

 だから、今のが突かれると取っても痛いところなんだよね、多分。
 ダンカンの顔から余裕が消えたもん。

「強がってばっかりだけど、目の奥がずっと怖がってる。本当はひとりだと不安で仕方ないのに、弱くないぞ、強いんだぞって虚勢を張ってるのがまる分かりだよ?」
「……減らず口を叩くのはやめなさい」
「だから取り巻きを作ったんだよね? 実家よりも位が上の相手を取り入れようとして、珍しい魔法の持ち主を仲間にしようとしてるんだよね?」
「やめろというのが聞こえないのですか!?」
「キミみたいなヒキョー者の命令なんて、絶対聞かないよ!」

 私がぐっと拳を握ると、パフも感情を昂ぶらせてくれる。

『ぎゃごおおっ!』
「うぅっ……」

 隣でパフが唸ったのを聞いて、皆が一斉に飛び退いた。
「せっかく『治癒魔法ヒール・マギ』で治してもらったのに、また怪我するよ?」
 トライスフィア魔導学園じゃあ、怪我を治すのにも魔法を使うの。
 特殊な無属性の魔力を患部に当てて傷口を塞ぐのも、ここじゃそんなに珍しくない。
 おかげで彼らも、ネイト君やテレサちゃん、私にやられた怪我がすっかり治ってるみたいなのに、今度は大やけどじゃすまないよ?

「く……見回りに来られても厄介です、さっさとやってしまいますよ!」

 逆ギレしたダンカンの号令で、一斉に皆が手をかざしたけど、パフの方がずっと速い!

竜火魔法ドラゴヒート・マギ! 『すぱいらるばーん』っ!」
『ギャオオオオッ!』

 パフが口から炎を吐きながら回転すると、たちまち敵がひっくり返った。
 この炎は竜の体内で魔力と一緒に精錬された炎で、並の火魔法とは比べ物にならないよ!

「うわ、お、熱づっ!?」
「落ち着け、水属性の魔法で消してやればいいんだ! 水魔法アクア・マギ――」
「そんなことさせないよっ! パフ!」

 パフが思い切り飛び上がって、尻尾を敵めがけて叩きつける。

「どぎゃああ!?」

 竜の尻尾や爪、牙を使った攻撃は魔法よりずっと強力だし、ずっと痛い。
 自分よりも何倍も大きな魔物だって、パフだけで倒しちゃうんだから!

『ぐうおおおっ!』

 火を吹き回るパフの翼に打たれて、爪で制服を引っかかれて、ダンカンどころか取り巻きの生徒達は追い込まれてて、もうほとんど相手になってない。
 ネイト君なら「参ったか」と聞くんだろうけど、私にそんなつもりはないよ。
 今度こそちゃんと反省させないと、また友達に手を出しかねないもん。

「パフ、竜風魔法ドラゴウィンド・マギでとどめだよっ!」

 これからくり出すのは、炎よりもずっと強烈な風。
 ダンカンと取り巻き、5人ともまとめて体育館の外どころか学校の外まで吹き飛ばすような強力な魔法だ。
 これでもう、私とパフの勝ちはほとんど確定だね♪

「クソ、やはり竜の力は相当なものですね……出し惜しみはなしといきましょうか!」

 なんて思ってると、ダンカンの取り巻きがポケットから何かを取り出した。

「お前達、を使いなさい!」

 4人が握りしめてるのは――紫の、宝石?
 手のひらより少し小さい程度の大きさで、竜の炎に照らされてとてもきれいに光っているはずなのに、見ているだけで不安な気持ちになる、妖しい宝石。
 あれを使って何をするつもりかは知らないけど、好き勝手させるつもりなんて毛頭ないし、パフの魔力はとっくに溜まって、魔法も発射できる。

「これでとどめだよ! 竜風魔法『ういんぐしょっと』!」
『ぎゃうーっ!』

 パフの翼がはためいて、つむじ風が敵めがけて襲い掛かる。
 オークだってひっくり返した魔法を受ければ、今度こそ――。



「――邪紫イビル風魔法ウィンド・マギ! 『バッドガスト』!」

 その瞬間、取り巻きのひとりの手から何かが放たれた。

「……え?」

 私は一瞬、何が起きたか理解できなかった。
 だけど、嫌でもすぐに理解させられた――竜の風を弾く、紫色の突風で。

「がは……っ!?」

 パフと私の体が宙に浮いて、体育館の壁に強烈な勢いで叩きつけられた。
 何が起きたかもわからないまま、私達は床に倒れ込んだ。
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