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第六章 新教会のお披露目
204 深くお詫び申し上げます!!
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眠っていた神官達は、甘いような、芳ばしいような香りに誘われるように、徐々に全員が覚醒していった。
「……お腹空いた……」
いつもは口にしないその言葉も、思わず出てきてしまうほど良い匂いが漂ってきている。
のそのそと起き上がると、周りの神官達と顔を見合わせる。そして、ここが教会ではないことを知って首を傾げた。
「ここ……どこだっけ……?」
彼らは、唐突に目の前に現れた神の使いである『賢獣』によって、助け出されたということを次第に思い出していった。
「あの、リウムさん……ここって……」
リウムは誰よりも早く、どうしてここに居るのかを思い出した。そして、立ち上がり、部屋の外へと向かう。扉は開いていた。
「外を見てきます」
「あ……私も行きます」
ついてくるのを感じながらも、リウムは振り返ることなく、そっと部屋の外へ顔を出した。すると、そこにコウヤを見つけたのだ。
コウヤも気づき、立ち上がって手招く。
立派な応接セットが揃っており、絨毯まで敷かれていた。そして、机の上には、先程からしていた匂いの元が大量に置かれている。
「リウムさんでしたよね?他の神官さん達も起きたならこちらへ来て食べませんか?」
「え、あ……はい」
ぐぅぅぅっと長めにお腹が鳴った。
リウムは部屋の中を振り返り、告げる。
「ここは安全のようです。動けるようなら行きましょう」
「あ、はい」
「良い匂い……行く」
「教会じゃないんなら、戒律とか……もう良いよね」
「早く行こう」
気が弱いのと、大人しいのと、色々吹っ切れたのと、真面目なのと、それぞれが揃って立ち上がり、部屋の外へ出てきた。
先に到着していたリウムは、テーブルの上にあるものを見てから、コウヤの側に座る者達へ視線を向ける。
「あの……そちらの方々は……」
コウヤの足下に座り込んでジュースを飲んでいるオスロリーリェのことは分かっている。コウヤの向かいに座っているニールも問題ない。だが、コウヤの両脇にぴったりと寄り添っている青年と少年は知らない。
「ああ、こちらが第二王子のシンリーム殿下です。そして、こちらが第一王子、ジルファス様のご子息のリルファム殿下になります」
「っ、で、殿下っ。失礼いたしました!」
スッと膝をついて頭を下げるリウム。後から出てきた神官達もしっかりと聞こえていたらしく、彼らもすぐに膝を折った。
これに慌ててシンリームが声をかける。
「あ、そんなっ。頭を上げて欲しいっ」
「ぼくもいやです……」
二人にそう言われても、神官達はどうすべきか分からなかった。
神官達の葛藤を見ながらも、コウヤはきちんとこの国の王族にも敬意を払える人たちで良かったと微笑ましく思っていた。
だから、続いた二人の言葉を誤魔化すタイミングを逸してしまう。
「コウヤ君といる私は、ただのコウヤ君の叔父だからねっ」
「ぼくはコウヤにいさまの、おとうととしてここにいます!」
「「「「「……え……」」」」」
「ん?」
思わず神官達が頭を上げる。誰もが誇らしげなシンリームとリルファムを見て、そこに嘘や冗談はないと確信する。神官として正しく人を見てきた彼らは、それらを見抜く才能を持っている。上の顔色も窺いながら、自分の身を必死で守ってきた彼らだからこそ、精度は高い。
そして、コウヤを見る目の端に映った文官、ニールが静かに目を伏せて頷いたのを捉え、真実だと確認する。
困ったような表情を浮かべたコウヤに彼らの視線が集まる時。それはやってきた。
《主さま。こちらでお手伝いできることはございませんか?》
それが『賢獣』であることは明白。その賢獣が『主さま』と呼んだ。リウムも、今になって気付いたのだ。賢獣が従っているのがコウヤであると。聖魔教教会についているのではないのだと。
それはコウヤが神に連なる者の証。
ここまで理解して、リウムはハッとした。妖精であるオスロリーリェが心から慕う様子も見せている。これで間違いなはずがないのだ。
「っ、魔工神様っ、いえ、聖魔神様であられるとはつゆ知らず、ご無礼をいたしましたこと、深くお詫び申し上げます!!」
「あ……」
一斉にリウムの後ろに並んでいた神官達も、揃って土下座していた。
「……また土下座……」
何度目の土下座だろうかと、少し遠い目をしてしまうコウヤだ。お陰で、こちらも否定するタイミングを逃してしまっていた。
************
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「……お腹空いた……」
いつもは口にしないその言葉も、思わず出てきてしまうほど良い匂いが漂ってきている。
のそのそと起き上がると、周りの神官達と顔を見合わせる。そして、ここが教会ではないことを知って首を傾げた。
「ここ……どこだっけ……?」
彼らは、唐突に目の前に現れた神の使いである『賢獣』によって、助け出されたということを次第に思い出していった。
「あの、リウムさん……ここって……」
リウムは誰よりも早く、どうしてここに居るのかを思い出した。そして、立ち上がり、部屋の外へと向かう。扉は開いていた。
「外を見てきます」
「あ……私も行きます」
ついてくるのを感じながらも、リウムは振り返ることなく、そっと部屋の外へ顔を出した。すると、そこにコウヤを見つけたのだ。
コウヤも気づき、立ち上がって手招く。
立派な応接セットが揃っており、絨毯まで敷かれていた。そして、机の上には、先程からしていた匂いの元が大量に置かれている。
「リウムさんでしたよね?他の神官さん達も起きたならこちらへ来て食べませんか?」
「え、あ……はい」
ぐぅぅぅっと長めにお腹が鳴った。
リウムは部屋の中を振り返り、告げる。
「ここは安全のようです。動けるようなら行きましょう」
「あ、はい」
「良い匂い……行く」
「教会じゃないんなら、戒律とか……もう良いよね」
「早く行こう」
気が弱いのと、大人しいのと、色々吹っ切れたのと、真面目なのと、それぞれが揃って立ち上がり、部屋の外へ出てきた。
先に到着していたリウムは、テーブルの上にあるものを見てから、コウヤの側に座る者達へ視線を向ける。
「あの……そちらの方々は……」
コウヤの足下に座り込んでジュースを飲んでいるオスロリーリェのことは分かっている。コウヤの向かいに座っているニールも問題ない。だが、コウヤの両脇にぴったりと寄り添っている青年と少年は知らない。
「ああ、こちらが第二王子のシンリーム殿下です。そして、こちらが第一王子、ジルファス様のご子息のリルファム殿下になります」
「っ、で、殿下っ。失礼いたしました!」
スッと膝をついて頭を下げるリウム。後から出てきた神官達もしっかりと聞こえていたらしく、彼らもすぐに膝を折った。
これに慌ててシンリームが声をかける。
「あ、そんなっ。頭を上げて欲しいっ」
「ぼくもいやです……」
二人にそう言われても、神官達はどうすべきか分からなかった。
神官達の葛藤を見ながらも、コウヤはきちんとこの国の王族にも敬意を払える人たちで良かったと微笑ましく思っていた。
だから、続いた二人の言葉を誤魔化すタイミングを逸してしまう。
「コウヤ君といる私は、ただのコウヤ君の叔父だからねっ」
「ぼくはコウヤにいさまの、おとうととしてここにいます!」
「「「「「……え……」」」」」
「ん?」
思わず神官達が頭を上げる。誰もが誇らしげなシンリームとリルファムを見て、そこに嘘や冗談はないと確信する。神官として正しく人を見てきた彼らは、それらを見抜く才能を持っている。上の顔色も窺いながら、自分の身を必死で守ってきた彼らだからこそ、精度は高い。
そして、コウヤを見る目の端に映った文官、ニールが静かに目を伏せて頷いたのを捉え、真実だと確認する。
困ったような表情を浮かべたコウヤに彼らの視線が集まる時。それはやってきた。
《主さま。こちらでお手伝いできることはございませんか?》
それが『賢獣』であることは明白。その賢獣が『主さま』と呼んだ。リウムも、今になって気付いたのだ。賢獣が従っているのがコウヤであると。聖魔教教会についているのではないのだと。
それはコウヤが神に連なる者の証。
ここまで理解して、リウムはハッとした。妖精であるオスロリーリェが心から慕う様子も見せている。これで間違いなはずがないのだ。
「っ、魔工神様っ、いえ、聖魔神様であられるとはつゆ知らず、ご無礼をいたしましたこと、深くお詫び申し上げます!!」
「あ……」
一斉にリウムの後ろに並んでいた神官達も、揃って土下座していた。
「……また土下座……」
何度目の土下座だろうかと、少し遠い目をしてしまうコウヤだ。お陰で、こちらも否定するタイミングを逃してしまっていた。
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