元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第九章

360 お仕事が待ってるみたい

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リクトルス達は、アビリス王達が受けた呪いのような効果をもたらす魔導具を見つけてから、この世界の過去の情報を少しずつ時間を掛けて確認していたらしい。それは、世界が最初に出来てからの全ての膨大な情報だ。

どんな些細なものも違和感があれば調べる。そうして、ようやく知りたいことが分かった。

「過去の全ての情報を精査した結果、この世界は、発生してから二度、再生されていることが分かった」
「二度? この世界って確か……神はゼストパパで三度目の交代だったはず……」

二度再生されたということは、二度崩壊しているのだ。神であっても、それほど簡単に世界を崩壊させたり、再生したりできるものではない。

その要因は前任の神にあったようだ。

「ええ。どうやら、前任の神は『破壊神』でもあったようです。二度、力が解放されたと記録されていました」
「なら、その前の世界を滅ぼしたのも……?」
「その神です」

『破壊神』としての顔を持っていたとしても、普通は問答無用で手にかけたりはしない。寧ろ、他の神達よりも自制しているはずだ。だから、相応の理由が必要だろう。

二度も、何が許せなかったのだろうかと、コウヤが考え込んでいると、今度はエリスリリアが口を開いた。

「一つ前は、神に成り代わろうとした種族が、逆鱗に触れたというのは、知っているでしょ? その前は……一番初めのこの世界の神達が喧嘩を売ったらしいのよ」
「……へ?」

神が他の神に、それも『破壊神』としての力を持つ神に喧嘩を売ったということに、驚くよりも先に呆れる。その気持ちも分かると、リクトルスが苦笑しながら続けた。

「で、確認は取れていないけど、情報を読み取ると、どうやら、その最初の神達が対抗策として放とうとした邪神を、この世界に封じていたようなんだ」
「……それが、神教国に……?」

なぜ封じたかは分からない。『破壊神』に喧嘩を売るような者たちだ。神の世界でも、それはおかしな行動といえる。

「ええ。反応があるのよ。ただ、やっぱり古い神なのね~。あの魔導具や、張ってある結界も、使ってる魔法形態が私たちの管理するものとは違い過ぎて、解除できないの。魔導具の方も、分解の仕方が分かっただけで、解明する所までは至っていないわ」
「元々、解明とかは、コウヤくんの担当だしね」
「あ、そっか」

コウルリーヤであった頃の記憶は、もうほとんど戻ってきているが、人として充実した日々を過ごしているため、ふとした時に神であることを忘れそうになるのだ。何より『魔工神』の肩書きがなくなったことが大きいかもしれない。もちろん、能力は受け継いでいるので、『魔工神』でもあることに変わりはない。

エリスリリアとリクトルスは、そういえばと自分のかつての立場を思い出すコウヤを、再び両側から抱きしめる。その表情は見えないが、声音には、明らかに先程のアビリス王と同じ、困った子だなという思いが感じられた。今日は困らせてばかりだ。

「コウヤちゃん……まあ、役割が変わってしまったものね……私たちって、肩書きが変わると、やっぱりそっちに傾いちゃうみたいだから……」
「そうですねえ。先代の神も、生まれた時は『破壊神』だったようですが、肩書きは『調停神』になっていたそうです。純粋な『破壊神』になり得なかったために、この世界の初代の神が甘く見て喧嘩を売ったんでしょう」

前任の神は、『破壊神』である自身を律し続けて『調停神』になったようだ。我慢強い人だったのかなとコウヤは会ってみたくなった。

「前任の神は、今どこに居るんですか?」
「……それが……分からないのよ。ここをゼストお父様が引き継いだ時は、他の世界に行ったって聞いたらしいんだけど、今回のことでお話を聞こうとしたら、いないって回答が来たの。それで、よくよく思い出すと変だって……ゼストお父様、それで悶々とするのが嫌だったのね~。すごい速さでアレを完成させていってるわよ」

ゼストラークは、何も考えたくない時も、何か考えをまとめようとする時も、何かを創る作業を行う。邪念を払うように、一心不乱に手を動かす。

「あれでも自制してますよ。前の世界では、一年で何もない、ただの荒野の大地を、生き物達の住めるものに創り変えたそうです。そうして、父上が創造した世界が、いくつもあるんですよ? 本気になったら、この世界もあっという間に創り変えられてしまいます」

コウルリーヤが討たれた時も、ゼストラークが理性もなく手を出していたなら、この世界には既に人は存在出来なくなっていただろう。それだけ力のある創造神なのだ。一つの世界を創り変えることなど、思考の片手間で出来る。

「謎は増えてしまいましたが、コウヤくんには、これから手伝ってもらうかもしれません」
「そんなの当たり前だよ。ちゃんと俺にも任せて」
「ふふふ。コウヤちゃんは頑張っちゃうから心配なのよ」

よしよしとエリスリリアは微笑みながらコウヤの頭を撫でた。

「でも、コウヤちゃん。こっちよりも先に、冒険者ギルド職員としてのお仕事が待ってるみたい」
「ん? 何かっ……」

そこに、騎士が飛び込んできた。

「失礼いたします! 申し上げます! 各地の商業ギルドが、多くの獣人達を含む集団によって、奇襲を受けているとのこと!」
「っ、なに!? 冒険者ギルドへの救援要請は!」
「それが……」

コウヤがギルド職員だと知っているので、彼は少し答えるのを躊躇ったようだ。構わないとの意味を込めて頷いて見せると、はっきりと答えた。

「確認したところ、出ておりません!」

普通ならば、関係が悪くとも、冒険者ギルドに救援要請を先に出す。国相手では、手続きなどで絶対に対応までに、下手をすれば数日、時間がかかるからだ。

「お祖父様。俺は冒険者ギルドに確認しに行ってきます」
「ああ……頼む」
「はい」

コウヤはすぐに部屋を飛び出した。

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二日空きます。
よろしくお願いします◎
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