元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

601 失敗はあるものだ

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ゼストラークはこの感情をきちんと隠せていると思っていた。何より、神が私怨で手を下すことはあるべきではないと思っている。全ては世界のためでなくてはならないと、多くの世界を創ってきたゼストラークは思っていたのだ。

「そうだ。何よりも、お前に手を出されたことが許せなかった」
「俺が倒れてから、粛清に手加減したのは、そのイレギュラーを予想したから?」
「うむ……あの段階で人が反発心だけで、あれだけ動けるはずがなかった。だから、何か外的な要因があるのではないかと予想した」

ゼストラークが怒りに任せて粛清すれば、この世界丸ごと消えて、また一から作り直していたはずなのだ。それを、手加減した。ベニ達の存在があったとしても、壊す事に躊躇はしなかっただろう。けれど、壊さなかった。

「ずっと探っていた。お前を地球の神に任せたのも、外から一度この世界を視るためだった。そうそう、外に出ることはできないからな。お前を理由にして、外的な要因を外から視て探れると思った」
「見つけてたんだよね?」
「小さな糸のような繋がりが別次元下手続いているのが視えた。だが、元々この世界は、別の神から引き継いだものだ。その神が異動する時に繋げて力のバランスを取ることもある。そこで、そうだと決めつけてしまった」
「先代が行方不明だなんて予想できないもんね」
「そうだ……」

その繋がりは、先代のものだと決めつけ、外的ない要因は見つけられなかったと処理した。そして、また別の角度から探ってはいたが、長い間答えは出なかった。

「やはり、あの見えていた繋がりが、原因に繋がっていたと……気付いたのは、つい最近だ。自分に呆れた」
「……」
「アレにぶつけようとしているのは、半分は私自身への苛立ちだ。見えているつもりで、見えていなかった。私もまだまだだ……」
「ゼストパパ……」
「すまんな。怒りに任せてあんなものを作った。威力など気にせずにな。そのせいで、お前に苦労をかける」

下手をすれば、世界丸ごと吹き飛ばすような威力もある武器を作り上げてしまった。それも、自身の苛立ちをぶつけるように、少しばかりタガを外して。それを、今は少しゼストラークは後悔していた。

しかし、コウヤは気にしていなかった。

「別に良いよ。たまには、ハメを外さないとね。それで失敗したりするのも、必要な事なんじゃないかなって思うんだ。神族なら、人にはやり直せない失敗でも、なんとかやり直せたらするしね」
「……」
「なんかね。人も、神族でも、失敗や後悔って別にすればいいんじゃないかって思うんだ。それは、予測がたりなかったり、想像力がなかったりした結果でもあるけど、その予想を超えたものがあったってことでもあるでしょう?」
「……ああ」
「それにどういう対処をするかって考えて、考えて、考えることが、生きるってことでしょう?」
「……」
「俺たちも生きてる。完璧なんて、上限なんて、この世にはないんだなって思うと嬉しくならない?」
「……っ」

コウヤはキラキラとした目でゼストラークを見ていた。その輝きに、ゼストラークは息を呑む。

「奇跡とか、可能性って無限なんだって思うと楽しくてっ。ほら、俺たちがそれを感じるより、人はもっとそれを感じられる経験が多くなるでしょう? それを見るのが楽しいんだっ」
「可能性……」

コウヤが目を向けた先には、リクトルスと共に異界化している神殿内で見たこともない醜悪な姿の魔獣や魔物と戦っている人々が映し出されていた。

「ゼストパパでも対処しきれなかったものに、挑んでいくってすごいよねっ」
「……そうだな」
「ねえ、ゼストパパ。俺たちと人が一緒になってこうして世界を変えようとしてる、守ろうとしてる今って……すごいことだよねっ」
「ああ……私でも、今までに経験したことはないな」
「だよねっ。これが終わったら、また一つ一緒に成長できそうだよねっ」
「……」

この経験の先を、コウヤは見ていた。新しい、人との付き合い方を楽しみにしているのだ。

「失敗を恐れずに進む、新しい世界の在り方ということか……」

自身でさえ気付かなかった。暗く、沈んでいたゼストラークの心は、いつの間にか随分と軽くなっていた。

「ふむ。きちんと脱出する余力は忘れずに残してもらいたいものだがな」
「あははっ。全力で逃げる必要があるもんねっ」
「威力の調整がは一応はしたがな」
「余波は?」
「うむ。それを忘れていた事に、今気付いたところだ」
「あははっ。まあ、仕方ないよね」
「うむ。失敗はあるものだ」
「大丈夫だよ。ちゃんとこっちでフォローするから」
「頼む」
「は~い」

ゼストラークの顔には、笑みが浮かんでいた。ただの私怨ではなくなった。きちんとこの世界のためだという理由が見つかった。それが何よりも、嬉しかった。そして、同じ想いを人々も持っているのだと思えば、それは今までで感じたことのない喜びがあった。








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