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第十三章
602 やるなら真剣に!
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神殿の中に入ったリクトルスや冒険者、神官達は、迷宮とはまた違う空気を感じながら、進んでいく。
入り口を塞ぐようにしていた醜い魔獣は全て倒せた後だ。その入り口の所から、奥に進むとそこには広い礼拝堂があるはずだった。
「やっぱ、コウヤの予想通りか……」
「これは、神殿の建物の中じゃねえよな~」
「空気もなんか違う」
「いや~な感じだよな。なんかまとわりついてくるみたいな?」
結界で覆われ、外界と遮断されていたとはいえ、篭ってしまった生温い空気のような、そんな不快にも感じる空気がまとわりついてくるような感覚だった。それが、入ってすぐに感じたものだ。
「むっ、あの辺の柱は神殿のものだ!」
「おいおいっ、じいさん! 今壊すなよ? 俺らもまとめて、くしゃんと行くからな?」
「くぅっ! 覚えておかねば」
「おかねば」
「おかねばな」
「うむっ」
ドワーフ達は、目をギラつかせている。彼らは、この神殿を壊す機会をずっと窺っていた。ようやく中に入れたということで、完全に目の色が変わっていたのだ。
「空間が捻じ曲がっていますね……気を付けてください。何が起きるか予想できません」
「「「「「はい!」」」」」
リクトルスも警戒を緩めない。
広い空間がそこにはあった。本来ならば、長椅子が並び、祭壇があるはずの場所。しかし、その祭壇はなく、長椅子も見当たらない。無機質な黒い壁があるだけ。けれど、明らかに外から見て想像する広さとは、三倍ほど違った。
「向こう側、どう見ても、突き当たりっスよね?」
「どこかに扉か階段がないか?」
「あるように見えないわ……」
少しずつ、慎重に、周りを注意深く見回しながら固まって進んでいく。
すると、壁に掲げられていた松明に一斉に火が灯った。薄暗かった空間が淡く照らされる。
部屋の中心、その床にあった丸いリングのような大きな円が赤黒く光るのが見えた。
「っ、来ますよ!」
そこから生えるように出て来たのは、巨大な魔物。顔は犬のようで、ギザギザとした歯が並び、体はドラゴンやワイバーンのように見える。しかし、表皮はツルツルしていそうだ。尻尾は異様に長く、トゲがついているようだ。
「なんだ……あれ……」
「あんな生き物……ねえだろ……」
「いや、さっきから出て来てたのも、見た事ない奇妙なやつだったじゃん」
「なあ……俺の経験からいくと……あんなツルツルの肌のやつは、かなりの確率で毒液を……っ」
そう言うのが早いか、口を開けたそれは、青黒い塊を吐き出した。
「避けて!」
ここにいる者で、その指示に遅れるものはいなかった。
命中した床は、ドロドロに溶けていた。
「うげえ……っ……これ、溶けるの一瞬じゃね?」
「あの口まず括るぞ!」
「きちんと避けてね~」
「そんじゃ、まず、口な!」
「あ、爪! あと尻尾っ!!」
またも、その声に合わせて避けることになる。尻尾が勢いよく振られたのだ。
「なっげぇぇぇっ! ってか、伸びなかった!?」
「伸びた」
「伸びたね」
「伸びてた!」
「次くる!」
また尻尾が振られて、それを飛び越える。おかげで、バラバラに散ることになった。
「リクト様ぁっ! 俺ら口行きます!」
「あ、私、囮~一番!
「二番!」
「三ばーん」
「四番行くです!」
「五っば~ん!」
「六!」
「はい! 七番!」
「あと定員三名!」
「はいはい! 八番!」
「うえっ、九バン!」
「ほーい! 十番! 行っきま~す!」
番号を名乗った者から、突撃している。そして、近付いて振られる尻尾を長縄のように扱って笑っていた。
「や~い! もっと早く振ってみろ~」
「ほっ、ほっ! キレがないぞ~!」
「こっちだほい!」
ゴギャァァァァ!!
「「「「「ないた~」」」」」
いやあ、鳴くんだねえと呑気に見上げる者が続出する。
「ちょっ、あなたたち! もう少し緊張感を持ちなさい! やるなら真剣に!」
「「「「「は~い!」」」」」
「はあ……」
緊張感があったのは、アレが出てくるまでだった。もう彼らには、イベント的な何かだ。
壁に張り付いて、スケッチしているのもいるし、毒液や、尻尾から抜けたトゲを採取している者もいる。
「大丈夫ですよ。それに、コウヤ君が、緊張しっぱなしだと疲れるから、適当に力抜いてって」
「そうそう。これだけ頼りになる仲間が居るし、昔だったらちょっと戸惑ったかもだけど、迷宮化の時とか、大人数で対応する経験を何度かしたんで、感覚的に、誰が何をやりたいか、何をやれば良いのか分かるんですよね~」
「それは……あなた達……」
大人数のレイドで、それができるのは、一流の証だ。本来ならば、そうそうすることが出来ない経験をここ数ヶ月でしている。それが、一気に彼らを成長させていた。
「リクト様も居るし、みんな仲間を信頼してますから」
「……なるほど……では、軽くあんなのは倒してしまいましょうか」
「「「はい!」」」
ソレを倒す頃、援軍が到着。
そして、次へ行けと言うように扉が出現した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
入り口を塞ぐようにしていた醜い魔獣は全て倒せた後だ。その入り口の所から、奥に進むとそこには広い礼拝堂があるはずだった。
「やっぱ、コウヤの予想通りか……」
「これは、神殿の建物の中じゃねえよな~」
「空気もなんか違う」
「いや~な感じだよな。なんかまとわりついてくるみたいな?」
結界で覆われ、外界と遮断されていたとはいえ、篭ってしまった生温い空気のような、そんな不快にも感じる空気がまとわりついてくるような感覚だった。それが、入ってすぐに感じたものだ。
「むっ、あの辺の柱は神殿のものだ!」
「おいおいっ、じいさん! 今壊すなよ? 俺らもまとめて、くしゃんと行くからな?」
「くぅっ! 覚えておかねば」
「おかねば」
「おかねばな」
「うむっ」
ドワーフ達は、目をギラつかせている。彼らは、この神殿を壊す機会をずっと窺っていた。ようやく中に入れたということで、完全に目の色が変わっていたのだ。
「空間が捻じ曲がっていますね……気を付けてください。何が起きるか予想できません」
「「「「「はい!」」」」」
リクトルスも警戒を緩めない。
広い空間がそこにはあった。本来ならば、長椅子が並び、祭壇があるはずの場所。しかし、その祭壇はなく、長椅子も見当たらない。無機質な黒い壁があるだけ。けれど、明らかに外から見て想像する広さとは、三倍ほど違った。
「向こう側、どう見ても、突き当たりっスよね?」
「どこかに扉か階段がないか?」
「あるように見えないわ……」
少しずつ、慎重に、周りを注意深く見回しながら固まって進んでいく。
すると、壁に掲げられていた松明に一斉に火が灯った。薄暗かった空間が淡く照らされる。
部屋の中心、その床にあった丸いリングのような大きな円が赤黒く光るのが見えた。
「っ、来ますよ!」
そこから生えるように出て来たのは、巨大な魔物。顔は犬のようで、ギザギザとした歯が並び、体はドラゴンやワイバーンのように見える。しかし、表皮はツルツルしていそうだ。尻尾は異様に長く、トゲがついているようだ。
「なんだ……あれ……」
「あんな生き物……ねえだろ……」
「いや、さっきから出て来てたのも、見た事ない奇妙なやつだったじゃん」
「なあ……俺の経験からいくと……あんなツルツルの肌のやつは、かなりの確率で毒液を……っ」
そう言うのが早いか、口を開けたそれは、青黒い塊を吐き出した。
「避けて!」
ここにいる者で、その指示に遅れるものはいなかった。
命中した床は、ドロドロに溶けていた。
「うげえ……っ……これ、溶けるの一瞬じゃね?」
「あの口まず括るぞ!」
「きちんと避けてね~」
「そんじゃ、まず、口な!」
「あ、爪! あと尻尾っ!!」
またも、その声に合わせて避けることになる。尻尾が勢いよく振られたのだ。
「なっげぇぇぇっ! ってか、伸びなかった!?」
「伸びた」
「伸びたね」
「伸びてた!」
「次くる!」
また尻尾が振られて、それを飛び越える。おかげで、バラバラに散ることになった。
「リクト様ぁっ! 俺ら口行きます!」
「あ、私、囮~一番!
「二番!」
「三ばーん」
「四番行くです!」
「五っば~ん!」
「六!」
「はい! 七番!」
「あと定員三名!」
「はいはい! 八番!」
「うえっ、九バン!」
「ほーい! 十番! 行っきま~す!」
番号を名乗った者から、突撃している。そして、近付いて振られる尻尾を長縄のように扱って笑っていた。
「や~い! もっと早く振ってみろ~」
「ほっ、ほっ! キレがないぞ~!」
「こっちだほい!」
ゴギャァァァァ!!
「「「「「ないた~」」」」」
いやあ、鳴くんだねえと呑気に見上げる者が続出する。
「ちょっ、あなたたち! もう少し緊張感を持ちなさい! やるなら真剣に!」
「「「「「は~い!」」」」」
「はあ……」
緊張感があったのは、アレが出てくるまでだった。もう彼らには、イベント的な何かだ。
壁に張り付いて、スケッチしているのもいるし、毒液や、尻尾から抜けたトゲを採取している者もいる。
「大丈夫ですよ。それに、コウヤ君が、緊張しっぱなしだと疲れるから、適当に力抜いてって」
「そうそう。これだけ頼りになる仲間が居るし、昔だったらちょっと戸惑ったかもだけど、迷宮化の時とか、大人数で対応する経験を何度かしたんで、感覚的に、誰が何をやりたいか、何をやれば良いのか分かるんですよね~」
「それは……あなた達……」
大人数のレイドで、それができるのは、一流の証だ。本来ならば、そうそうすることが出来ない経験をここ数ヶ月でしている。それが、一気に彼らを成長させていた。
「リクト様も居るし、みんな仲間を信頼してますから」
「……なるほど……では、軽くあんなのは倒してしまいましょうか」
「「「はい!」」」
ソレを倒す頃、援軍が到着。
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