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第十三章
610 本体どこだ?
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次の瞬間、こちらへと巨人は顔を向けた。そして、口と目を大きく開けたように見えた。
「わわっ。なんかくる!」
「なんかしようとしてる!」
冒険者達がどこに避けるかと周りを見回す。ようやく少し緊張感がやってきた。
それを見て、ベニ、キイ、セイが前に出て、結界を張った。
「来るでな」
「威力が分からんわ。五重で」
「そうしよう」
前方斜め上に向かって全部で十五枚の大きな盾が並んで現れる。それに向かって三つの光線が発射された。どうやら、両目と口らしき所の三箇所から放たれたらしい。
「目から光線!? すごい!」
「コウヤちゃん! 怪獣映画観てるんじゃないんだからね!?」
「コウヤくん、落ち着いて! ここ! 現場! 緊張感!」
エリスリリアとリクトルスはコウルリーヤのちょっとズレた感想に慌てていた。一緒になってコウルリーヤの足下に引っ付いているヅィルがキラキラした目で巨人を見ていた。目からの光線はヅィルからしてもすごいのかもしれない。
割れた盾は十枚。ベニ、キイ、セイはふっと笑う。
「中々やね」
「けど、威力はわかったわ」
「あれくらいなら、もっとギリギリでも対処できるわ」
「一人でも何とかなるなあ。なら、行くか」
「そうやね」
「あの体がどんなもんか、確認しよか」
そう言って頷きあうと、ベニ達は三方に散り、そこから攻撃を始めた。今度はこちらの番というわけだ。
「うわ! なにあの司教様達の攻撃っ。掠った壁が焼き切れた?」
「炎じゃないよな? 白いし」
「なんか、鉄が溶けるみたいな……熱?」
放ったのは、白い光線のようなものだった。それが巨人に当たる。赤くどろりと溶けて体の一部が窪んだ。
「貫通しない……ならば、手加減無用」
「ほれ、あんたらも強力なの試す機会でしょうが」
「足場崩すと向こう側に被害が出る。この角度の内に思いっきりやるといいよ」
今ならば、斜め上に向けて放てば良い。その向こう側への配慮が要らない分、やりやすい。
ルディエ達白夜部隊が、大技を放つ。どうやら、土台となっている神殿を保護結界で守ってもいるようだ。ガツンと上から押さえ付けられるように攻撃を浴びた巨人の頭は半分ほど窪んだのが見えた。
「普通は足場崩すんだが……上からしっかり押さえ付けるにはいいな……」
ジンクが何度か納得だと頷いていた。
「う~ん。俺ら斬り込めねえなあ」
「あの距離はなあ」
「というか、あのドロドロの感じを見るに、剣通らなくね?」
巨人の体は、常にドロドロとしたもので覆われている。
「ほら、窪んでも、なんか戻っていくし」
「本体どこだ?」
「あ~、あれじゃん? ほら、昨日従魔のもふもふの奴が水に濡れると半分以下の大きさになるやつ。中身アレなんじゃね?」
「「「「「ぷふっ」」」」」
「「「あり得る」」」
「ちょっ、笑わすなっ!」
やはり緊張感はない。誰もが思い出してしまったのだ。丁度、昨日従魔達に水浴びをさせている所を見ていた。もふもふの丸みのある大きな魔獣が、水をかけられて細くなっている様を。『え!? だれ?』と、散々笑いをとっていたのだ。
「あはははっ。細いの出てくんの!? よしよし。どこまで抉れるか見てやらんとなっ」
「それはええねえ」
「あのドロドロ鬱陶しいしね」
「洗い流せばええんかね?」
因みに、ベニ達も吹き出して笑っていた。エリスリリアも未だに肩が震えている。たまたま昨日の一件も見ていたらしい。
「洗い流すって、アレ流れてきたら嫌だけど」
そう言うルディエも、珍しく少し笑っていた。本当に緊張感がない。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「わわっ。なんかくる!」
「なんかしようとしてる!」
冒険者達がどこに避けるかと周りを見回す。ようやく少し緊張感がやってきた。
それを見て、ベニ、キイ、セイが前に出て、結界を張った。
「来るでな」
「威力が分からんわ。五重で」
「そうしよう」
前方斜め上に向かって全部で十五枚の大きな盾が並んで現れる。それに向かって三つの光線が発射された。どうやら、両目と口らしき所の三箇所から放たれたらしい。
「目から光線!? すごい!」
「コウヤちゃん! 怪獣映画観てるんじゃないんだからね!?」
「コウヤくん、落ち着いて! ここ! 現場! 緊張感!」
エリスリリアとリクトルスはコウルリーヤのちょっとズレた感想に慌てていた。一緒になってコウルリーヤの足下に引っ付いているヅィルがキラキラした目で巨人を見ていた。目からの光線はヅィルからしてもすごいのかもしれない。
割れた盾は十枚。ベニ、キイ、セイはふっと笑う。
「中々やね」
「けど、威力はわかったわ」
「あれくらいなら、もっとギリギリでも対処できるわ」
「一人でも何とかなるなあ。なら、行くか」
「そうやね」
「あの体がどんなもんか、確認しよか」
そう言って頷きあうと、ベニ達は三方に散り、そこから攻撃を始めた。今度はこちらの番というわけだ。
「うわ! なにあの司教様達の攻撃っ。掠った壁が焼き切れた?」
「炎じゃないよな? 白いし」
「なんか、鉄が溶けるみたいな……熱?」
放ったのは、白い光線のようなものだった。それが巨人に当たる。赤くどろりと溶けて体の一部が窪んだ。
「貫通しない……ならば、手加減無用」
「ほれ、あんたらも強力なの試す機会でしょうが」
「足場崩すと向こう側に被害が出る。この角度の内に思いっきりやるといいよ」
今ならば、斜め上に向けて放てば良い。その向こう側への配慮が要らない分、やりやすい。
ルディエ達白夜部隊が、大技を放つ。どうやら、土台となっている神殿を保護結界で守ってもいるようだ。ガツンと上から押さえ付けられるように攻撃を浴びた巨人の頭は半分ほど窪んだのが見えた。
「普通は足場崩すんだが……上からしっかり押さえ付けるにはいいな……」
ジンクが何度か納得だと頷いていた。
「う~ん。俺ら斬り込めねえなあ」
「あの距離はなあ」
「というか、あのドロドロの感じを見るに、剣通らなくね?」
巨人の体は、常にドロドロとしたもので覆われている。
「ほら、窪んでも、なんか戻っていくし」
「本体どこだ?」
「あ~、あれじゃん? ほら、昨日従魔のもふもふの奴が水に濡れると半分以下の大きさになるやつ。中身アレなんじゃね?」
「「「「「ぷふっ」」」」」
「「「あり得る」」」
「ちょっ、笑わすなっ!」
やはり緊張感はない。誰もが思い出してしまったのだ。丁度、昨日従魔達に水浴びをさせている所を見ていた。もふもふの丸みのある大きな魔獣が、水をかけられて細くなっている様を。『え!? だれ?』と、散々笑いをとっていたのだ。
「あはははっ。細いの出てくんの!? よしよし。どこまで抉れるか見てやらんとなっ」
「それはええねえ」
「あのドロドロ鬱陶しいしね」
「洗い流せばええんかね?」
因みに、ベニ達も吹き出して笑っていた。エリスリリアも未だに肩が震えている。たまたま昨日の一件も見ていたらしい。
「洗い流すって、アレ流れてきたら嫌だけど」
そう言うルディエも、珍しく少し笑っていた。本当に緊張感がない。
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