元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

611 まるハゲにしてやるぜ

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未だここには緊張感がない。それを注意していたリクトルスも段々と慣れてきていた。

「みなさん……もう少し真面目に……いえ……まあ、いいです。そうですね。一通りの属性魔法も試しましたが、あのドロドロが効果的に消える感じはありません。となると……」
「分離する?」
「コウヤくん、簡単に言いますけど……」
「ん~、でもね? ドロドロが湧き出ているようには見えるけど、無限ではなさそうだよ。ほら、あの目? の周り。ちょっと色違ってきてない?」
「目の?」

こちらに攻撃が来ないよう、周りでは順番に魔法の砲弾が放たれている。その合間から確認した。

「っ……確かに、何か黒く……」
「うん。だから、あのドロドロが減ってはいそうなんだよ。衝撃で吹き飛んだりして飛散した分は消えてるんだ。それも、ほら、何かシュワって空気に溶けるみたいに消えてる」
「確かに……周りにあのドロドロが飛んできてはいませんね……」
「周りでドロドロしてるのは、アレが出てくる前に出た黒いドロドロでしょう?」
「そうですね……」

神殿の建物を溶かした黒いドロドロは、今や固まっているように見える。

「黒いのと、あの巨人が纏ってるヘドロみたいな色のとは種類が違うんだよ。あの黒い方は、ばば様達や、ルー君達の魔法で消えてた。ほら、すっかりあの巨人の足下はないでしょ?」
「本当だわ」
「そうですね……ということは、あの黒いものは神聖力に弱い?」
「うん。でね? ジンクおじさ~ん」

コウヤはジンクを呼んだ。魔法など遠距離の攻撃がこちらから続いているので、巨人は攻撃を仕掛けてこない。ジンク一人抜けた所で問題ないだろう。そうジンクも判断したのだろう。駆け寄って来た。

「なんだ? 何か手が?」
「うん。ジンクおじさん。さっき、治癒魔法ぶつけてみてたよね?」
「ああ。神聖力が込めやすいからな」
「それだけじゃないよね? 攻撃魔法も混ぜたんじゃない?」
「「え?」」

エリスリリアとリクトルスがジンクを信じられないものを見るような目を向ける。これにジンクは後ろ頭を掻いた。

「お~、お見通しか」
「ちょっと混ざり切ってなかったけど、面白いなって。アレ当たった所。一気にあのドロドロが減ったんだよね~」
「俺も、これかもって思って調整してたんだが、やっぱ上手く混ざらなくてさ」
「さすがにぶっつけ本番は無理だよ」
「だよな~。もっと色々試しておくんだったわ」

これまで長い時間があったのに、試していなかったのが悔やまれるとジンクは苦い顔をしていた。

「仕方ないよ。こういうのは、必要に応じて思いつくものだからね。でね。神聖力と混ぜるなら火と水が相性良さそうなんだ。聖水と浄火だね。一度やってみるね」

そう言って、コウヤは弓をつがえるような仕草を見せると、そこに青白い弓と矢が現れた。矢は、引き絞ると白く輝き、それが巨人に向かって放たれた。

ギャォォォォッ!!
「「「「「っ、うわっ」」」」」

頭の天辺に刺さり、その辺りのドロドロが消滅した。真っ黒い皮膚なのか、中身が見えていた。

「すごい声。ちょっと状態異常かかるね。エリィ姉」
「う、うん! 治すわ!」

結界内全てに行き渡るよう、状態異常を解く魔力をエリスリリアが放った。

「ううっ、頭ぐらぐらする……」
「あの鳴き声のせい? 喉潰せばいいかしら」
「いや、喉どこよ」
「口塞ぐ?」
「どうやってだよ」
「何か口に突っ込めばいいんじゃね?」
「そもそも、口どれよ」
「穴全部塞げばいいじゃない」
「だな」
「それだ」
「そうしよう」

頭を振りながらも、冒険者達はまだ余裕そうだ。

「岩でいい?」
「あそこまで届くか?」
「はーい。風で吹っ飛ばす」
「そもそも、大きさは? あの穴塞ぐ大きさ、分からんけど?」
「まず測るか。あの辺の石投げて」
「「「「「そうしよう」」」」」
「飛ばす練習するわ」
「じゃあ、俺も。穴三つあるし」
「ってか、禿げたな」
「「「「「だな~」」」」」

コウヤが放った矢の影響か、頭の天辺から禿げが広がっていた。

「あのドロドロは任せて、俺らは口塞ぐぞ」
「「「「「おう」」」」」

魔法攻撃から物理攻撃に変えた冒険者達。そして、ジンクやベニ達は、コウヤがやったように聖水と浄火の攻撃に移った。

「まるハゲにしてやるぜ」
「丸裸やろ?」
「はいはい。ジンクおじさんやばば様達、神官さん達は、二人一組で、神聖力と水か火の攻撃魔法を一緒に放つようにやってみて」
「なるほどね。ジンク。神聖力の方頼むよ」
「えっ、ベニちゃんと! やばいっ、嬉しくて泣けてくるっ」
「さっさとやりな。合わせられんかったらどうなるか分かってるだろうねえ」
「任せてよ! 最高のパートナーだって言わせてみせるからね!」
「ふん。ほら、やるよ!」
「は~い!」

そうして、総攻撃が始まったのだが、やはり緊張感は生まれなかった。







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読んでくださりありがとうございます◎

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