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29. 舞踏会前に登場する悪党母子
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逢魔が時も暮れて、夏の大三角が東の夜空に輝く頃。
ブラッドリーは、皇城の一角に用意された控室に滞在していた。
四月に袖を通して以来の白い騎士服は、やはりいまいち似合わないように感じる。
右肩のみに羽織った濃藍のマントはどうにも動きにくく、式典の際には見栄えはするだろうが、実戦向きではない。
盛装版の騎士服でさえも動きやすさに配慮した作りになっていた第一や第二のものと比べると、職務の違いをひしひしと実感してしまう。
「ブラッドリー、あなたは舞踏会に出席したことがありますか?」
眼前のソファに座っている主人に尋ねられた。
テーブルに置いてある茶器に新しい紅茶を注ぐのは、邸の家令であるジャックバートだ。
ブラッドリーはこの日、皇族主催の舞踏会に出席するシェルエンの護衛として、城に足を踏み入れていた。
マダム・コメットが夢と欲望と丹精を込めに込めて作成したシェルエンの衣装は、先日のフィッティングからバージョンアップしたようだ。
どことは具体的に言えないが、何だか凄いことになっている。
決して派手なわけではない。
ギラギラやフリフリが付いているわけではない。
気品という土台の上に、優雅さと華やかさと可憐さとその他諸々が絶妙なバランスで存在感を放っている。
「ありません。領地の砦から離れられない辺境伯の父の代行に、と社交シーズンは何通も招待状が届いていましたが、訓練という大義名分を振りかざして毎回逃げていました」
「ダンスは不得手ですか?」
背後に立っているブラッドリーを見上げるシェルエンは、自然と上目遣いで見つめてくる。
会話をするたびにいちいちときめく胸の動きが煩わしくて、心の中で「殿下、どうか前だけを向いていてください」と拝み倒すブラッドリーだった。
「武骨な騎士なので……と言いたいところですが、父に雇われていたダンス講師がスパルタの泉から生まれ出た角の生えた妖精のような人で、あんまりにも厳しくレッスンされたせいで一通りは苦もなく踊れるようになりました」
「ふふふ、角の生えた妖精……善か悪か判断が難しいですね。ならばその人のおかげで、今でもステップは憶えていますか?」
「音楽が聞こえると自然と背筋が伸びて足が動き出します。しかも、これは結構悔しい部分ではあるんですが、戦闘においてダンスの基礎が意外と役に立つことがあるんです。下半身がブレないでいられるとしなやかでダイナミックな動きが出来るので、攻撃の幅が広がります」
「知りませんでした。あなたの強さはダンスの経験にも支えられているんですね」
とはいえ、それはほんの一部だ。
戦闘においてはとにかく敵を倒した者勝ちであるので、スマートな戦い方が必ずしも歓迎される世界ではない。
一瞬目を離した隙に、シェルエンの髪には薄紅の花が咲いた。
「殿下、新しい花が咲いたようですが、これは取ってしまってもよろしいですか?」
「ええ、お願いします。今日のテーマカラーは厳密に決まっているので、それ以外はマダム・コメットとジュディスの許可が下りません」
ブラッドリーは手を伸ばして、そっと、綺麗で複雑に編まれた髪を乱さないようにしながら薄紅を取り除いた。
七枚の可憐な花だ。
彼は思わずそれを鼻先に近づけて、香りを楽しんだ。
それは甘く、清廉な空気となって胸を満たす。
「芳しくてとってもいい香りがします。殿下そのものを表しているのかのようです」
眉を跳ねさせたシェルエンの首筋が、ほわほわと朱に染まっていく。
色白の肌と純白の衣服とのコントラストで、それは一目瞭然で分かってしまう。
髪を下ろしていない右の耳元を、ブラッドリーは指先で撫でた。
「照れていますか? 可愛いです」
「からかうのはやめなさい」
「殿下の香りも確かめてもいいですか?」
「断固拒否します。ふしだらな護衛騎士は、ここで留守番させますよ?」
「主人に置いて行かれたら、寂しくて泣いてしまいます」
シェルエンが座っているソファの背もたれ部分に大きく両腕を広げて、背後から囲うようにする。
首筋近くまで距離を詰めてくるブラッドリーの頬は、シェルエンにそっと押し返された。
その指先を捕らえて絡め取ってしまおうとしたのと、そばで静観していたジャックバートが盛大な咳払いをしたのと、扉の外から呼び掛けがあったのは、全て同じタイミングだった。
「第二妃キャロライン様と第二皇子サンディス様が、ご訪問でいらっしゃいます」
室内の三名はそれぞれ顔を見合わせた。
それまでとは一変して、不穏な空気が流れる。
主人とその者たちとの因縁を把握しているブラッドリーはその名を聞いただけで、自分のあらゆる感情が鳴りを潜めていくのを感じていた。
あるのは唯一、怒りのみ。
諸悪の根源を今ここで斬ってしまえるならば、それも吝かではない。
「舞踏会の前にごめんなさいね、シェルエン」
現れたのは、豊満なバストを強調した深紅のドレスに、ティアラと羽飾りのダブル使用で顔周辺がとてもうるさい女性だった。
後ろに付き添う男性は、豪奢ではあるがこれといって特徴のないジュストコールを着用している。
「お邪魔するよ、シェルエン」
記憶違いでなければ、第二皇子はシェルエンよりも実年齢は下だ。
同齢である第三皇子のカイザックはシェルエンのことを『兄様』と呼んでいたのに対し、その人物は呼び捨てにした。
ブラッドリーはその一言を聞いただけで、第二皇子を『いけ好かない奴』認定した。
「どうぞ、お座りください」
シェルエンの声掛けに、悪の母子はテーブルを挟んで対面に座った。
護衛騎士を三名引き連れている。
ジャックバートが完璧な所作で紅茶を並べ終わったタイミングで、第二妃が口を開いた。
「今日のお召し物も素敵ね。マダム・コメットの特注かしら?」
「ご厚意に甘えて作っていただきました」
「髪を飾っているお花、とっても綺麗だわ。角度によって色が変わるなんて不思議ね……そんな品種、見たことあったかしら。近くでよく見たいわ、ひとつ頂けるかしら?」
シェルエンの麗しい銀白の髪を飾っているのは、ホワイトオパールの花だ。
籠いっぱいに入ったそれをメイドのジュディスが持ってきたとき、七枚の花びらだが見慣れぬ色合いに、咲かせた本人も護衛騎士も首を傾げた。
「最近、新色が加わりました」とフットマンのデーヨにも言われて、まじまじと観察したふたりだった。
「髪と共に編み込まれてしまっているので、外せないんです」
「あなたから咲く花にそんな色はないはずだけれど、最近咲くようになったの?」
「人間の私から花は咲かないので、どなたかの作り話が巡り巡ってキャロライン様のお耳に入ったようですね。残念ながら、これは庭師のフィリパが育てている花のひとつです」
「またしらばっくれるつもりなのね。いつまで経っても、私たちを許してはくれないんだわ」
「そういうわけではありません。真実でないことを捏造するわけにはいきませんので」
「そんなことはないだろう、シェルエン? いい加減に私たちにも事実を教えてくれ。お前は奇病に罹っているし、赤い花は傷を治癒する効果があるんだろう?」
痺れを切らした第二皇子が声を強める。
どんな窮地でも威厳と優雅さを手放してはいけない皇族としては、その態度は落第点だ。
「私たちは家族だ。血を分け合った兄弟じゃないか。過去にお前を傷つけたことは謝罪済みだ。軽微な過ちも許せぬ狭い心の持ち主だなんて、私たちを失望させたりはしないだろう?」
相手に非があるような錯覚を起こさせて籠絡する。
気に食わないやり口だ。
さらに、シェルエンに怪我をさせた過去を軽微だと称したのにも納得がいかない。
被害を受けた人は未だに、後遺症に苛まれているというのに。
自然と、第二王子を直視する瞳が鋭くなる。
ブラッドリーは己の頭に血が昇っていくのを感じていた。
「シェルエン、私たちは悲しいのよ。病を患っていることで不便なことも多々あるでしょう。それを私たちは助けたいだけなの。それに、せっかく咲いたのなら、それらを大事に集めて有効活用できるようにしたいと思っているだけなのよ」
『有効活用』の範囲は私的流用であろう。
ファンデミアのために使うならばいざ知らず、故国のために使いたいという魂胆が丸見えの者にどうしてそれを渡せようか。
不用意に動かずじっと好機を待つ、それが獲物を狙う鉄則だ。
罷り間違っても、花が咲くか試したいから、と相手を直接傷つけてはならない。
賢明な両親や有能な側近の元で育てられてこなかった証拠だ。
ひとつの間違いが、全ての計算を狂わせる。
「皇后や皇太子は知っているんだろう? 水臭いではないか。意固地にならずに、国に貢献する功労者となれるよい機会をその手で掴もうではないか」
国は国でも遠く離れた異国だ。
事情を知っていると、言葉遊びが拙すぎて笑いが零れそうになる。
「サンディス、もう一度申し上げます。私は病とは無関係の身です。お役に立てることは何もありません」
「っ……では、そこまで言うなら、証明してもらおうじゃないか!」
いきなり立ち上がった第二皇子が、テーブルを迂回してシェルエンの元へやって来た。
その怒りを隠さない様子に、ブラッドリーはちらりと相手方の護衛騎士を見遣るが、彼らは一切姿勢を崩さない。
止める気はないようだ。
止めるな、と事前に命令されているのかもしれない。
ソファに座った第二皇子は、隙間を空けようとするシェルエンの繊細なマントを掴んで強引に引き寄せた。
「怪我をしても血が流れるだけなんだろう? 花になんて変わらないんだろう? 見せてくれ、今ここで。切り傷ひとつ作るくらい、男にとっては何てことないはずだ」
その手には、手の平サイズのペーパーナイフが握られていた。
封書を開けるために使われるものなので深手にはならないだろうが、切っ先は鋭利だ。
幼少の頃の不祥事のみならず、分別のつく年齢になってもシェルエンを害そうとするとは。
ブラッドリーは怒りが心頭に発して、爆発するのを感じていた。
「おやめください」
振り下ろされた真鍮のナイフを、ブラッドリーは片手で受け止めた。
「な、なんだ、お前……! 私の邪魔をするなど、皇子の邪魔をするなど近衛にあってはならないことだぞ! 離せ!」
「俺は近衛ですが、シェルエン皇子の専属護衛です。主人の危機になるような事象は全て、取り除きます」
贅沢をして暮らしている皇子と、常日頃から鍛えている騎士だ。
力の差は歴然、俊敏さも隙を突く間合いも比べ物にならない。
ブラッドリーは奪ったペーパーナイフを第二皇子の首元にひたりと沿わせた。
キャロラインの後ろに控える近衛騎士が剣に手を掛けるが、それは視線で制した。
「お、お前、何をしてるか分かっているのか。私はこの国の皇子だぞ。その私にナイフを向けて、ただで済むと思っているのか」
「俺は俺の仕事をしているまでです。主人にとって脅威になるもの全てから、主人を護ります。それがたとえ他の皇子であっても、一切関係ありません」
「身の程知らずの無礼者が! お前たち、何をしている! 早く私を助けないか!」
「そうよ、早くあの無作法な騎士を斬ってちょうだい!」
足音がする中で、ブラッドリーはナイフを滑らせる。
その冷たい感覚に、第二皇子の顔が引き攣る。
「おど、脅すのもいい加減にしろ。研いでもいない刃物とも呼べないようなもので、人など斬れようはずもないっ!」
「そうですね。確かに、斬れたとしても薄皮か、その少し下辺りまでですね」
「あ、あはははは。そ、そうだろう、そうだろう。分かっているなら悪あがきはよせ。今ならば事を荒げずに済ませてやる。私の寛大な心で大目に見てやるから」
ブラッドリーを取り囲んだ近衛騎士三名が長剣を抜く。
銀に輝くそれは、手の中にある真鍮よりも遥かに研ぎ澄まされている。
味方に囲まれて安心したのだろう、第二皇子の震えていた身体が落ち着きを取り戻す。
ここで油断をするなどもっての外なのに。
命の危機に瀕したことのない人間は、優勢に転じた瞬間に勝利を確信してしまう。
敵の攻撃が未だに届く場所にいては、勝敗など最後の最後まで紙一重だというのに。
ブラッドリーはため息を吐いた。
そして、滔々と説く。
「サンディス皇子殿下、油断してはなりません。いくら封書用で切れ味の悪いナイフとはいえ、衝撃を伴って圧すれば人間の肉にもめり込みましょう。俺が力の限りでその喉元に突き刺し、幾つも通る血管のひとつでも損傷させられれば、殿下は終わりです」
「ひ、ひぃっ」
「たとえ、取り囲む三本の剣に刺されたとて絶命までに数瞬はあるでしょう。そのまたたきひとつの間に、俺は腕を振り下ろします。身体から腕が物理的に離れてしまえば止められましょうが、この近衛たちの角度からでは実現は不可能。さらに俺は、片腕だけでもやり遂げられます。どうしますか、試してみましょうか」
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
第三皇子の身体が最高潮に震える。
擦り傷ひとつでも医師を呼ぶ皇族だ。
ブラッドリーの言葉ひとつひとつが、信じられないほどに生々しく想像を絶するものだっただろう。
あまりの度胸のなさにブラッドリーが笑いながら身体を離すと、その隙を突いて皇子は逃げ出した。
力の抜けた膝で転びかけながら、母の元へと帰っていく。
ゴテゴテとした飾りのついたドレスの胸元に顔を埋めているが、果たして痛くないのだろうか。
「野蛮な騎士だことっ! 皇太子の次に継承権を有する皇子を脅迫するなんて、自分の悪事を分かっているのかしら。この子が皇帝陛下にもなり得る尊い存在だということを、忘れているんじゃないでしょうね」
「それは次なる後継者として、正式に宣誓済みの皇太子殿下に対する謀反と捉えかねられません。お言葉は慎んだ方が賢明かと思われます」
キャロラインに対したのはシェルエンだった。
ファンデミアの皇位継承は大臣たちからの承認を得て、既に決定済みだ。
そこに異を唱える姿勢が僅かでも見受けられれば、それ即ち反逆と噂されかねない。
そうなれば粛清の対象となってしまう危うさも、先ほどの言葉は十分に含んでいる。
「そんなつもりで申したのではありません。私はただ、我が子が一国の主になれる素質を備えていると言いたかっただけです。親が子を可愛がるのは当然でしょう? 男子たるもの、頂点を目指せるように育てるのが母親の役目ですから」
「言葉を重ねれば重ねるほどに危うさは増していきます。私たちは聞かなかったことにしますので、どうぞお引き取りを」
「くっ……」
花を見ることが出来ずに終わったばかりか、思わぬ揚げ足をとられる事態になってしまった第二妃は、悔しそうな顔を隠そうともせず立ち上がった。
「お暇いたします。また会場でお会いしましょうね、シェルエン。サンディス、立ちなさい。行きましょう」
母と近衛に支えられて歩く第二皇子の後ろ姿は、部屋に入ってきた時よりも一回り小さくなっていた。
反撃されることを念頭に置いていない挑発は、子供の難癖と同等だ。
そこに不純物が混じっているだけ、質は圧倒的に悪い。
冷めた目で見送っていたブラッドリーは、手の中の存在に気づく。
要らないから返してしまおう、単純にそう思っただけだった。
「お待ちください、お忘れものです」
腕を軽く一振りした。
真鍮のペーパーナイフが、綺麗な軌道を描いて壁に突き刺さる。
それは部屋を出ようとしていた第二妃のすぐ真横だった。
「ひ、ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
母は息子を捨てて逃げ去っていった。
「足が速いですね」
「ブラッドリー、揶揄うのもほどほどにしなさい。一応あれでも第二妃ですから、怖い存在ではあるんですよ」
「悪の親子に葬り去られるなら、その前にあいつらの過ちを国中にぶちまけて本懐を遂げます」
「遂げなくていいですから、大人しくしていてください。私は私の護衛騎士を失くして、一体誰に護ってもらえばいいんです?」
意図のない上目遣いで見つめてくるシェルエンに顔を寄せる。
遠くで咳払いが聞こえた気がするが、意識の外に追いやった。
紫シルバーの瞳に吸い込まれそうになりながら、ブラッドリーはこう囁いた。
「駄目です。殿下は俺にだけ護られていてください。他の騎士に背中を預けるなんて、絶対に許しません。俺だけの主人でいてください」
その人は眉を少し動かしただけで、何も返答はしなかった。
髪を飾るホワイトオパールの花だけが、増えていた。
ブラッドリーは、皇城の一角に用意された控室に滞在していた。
四月に袖を通して以来の白い騎士服は、やはりいまいち似合わないように感じる。
右肩のみに羽織った濃藍のマントはどうにも動きにくく、式典の際には見栄えはするだろうが、実戦向きではない。
盛装版の騎士服でさえも動きやすさに配慮した作りになっていた第一や第二のものと比べると、職務の違いをひしひしと実感してしまう。
「ブラッドリー、あなたは舞踏会に出席したことがありますか?」
眼前のソファに座っている主人に尋ねられた。
テーブルに置いてある茶器に新しい紅茶を注ぐのは、邸の家令であるジャックバートだ。
ブラッドリーはこの日、皇族主催の舞踏会に出席するシェルエンの護衛として、城に足を踏み入れていた。
マダム・コメットが夢と欲望と丹精を込めに込めて作成したシェルエンの衣装は、先日のフィッティングからバージョンアップしたようだ。
どことは具体的に言えないが、何だか凄いことになっている。
決して派手なわけではない。
ギラギラやフリフリが付いているわけではない。
気品という土台の上に、優雅さと華やかさと可憐さとその他諸々が絶妙なバランスで存在感を放っている。
「ありません。領地の砦から離れられない辺境伯の父の代行に、と社交シーズンは何通も招待状が届いていましたが、訓練という大義名分を振りかざして毎回逃げていました」
「ダンスは不得手ですか?」
背後に立っているブラッドリーを見上げるシェルエンは、自然と上目遣いで見つめてくる。
会話をするたびにいちいちときめく胸の動きが煩わしくて、心の中で「殿下、どうか前だけを向いていてください」と拝み倒すブラッドリーだった。
「武骨な騎士なので……と言いたいところですが、父に雇われていたダンス講師がスパルタの泉から生まれ出た角の生えた妖精のような人で、あんまりにも厳しくレッスンされたせいで一通りは苦もなく踊れるようになりました」
「ふふふ、角の生えた妖精……善か悪か判断が難しいですね。ならばその人のおかげで、今でもステップは憶えていますか?」
「音楽が聞こえると自然と背筋が伸びて足が動き出します。しかも、これは結構悔しい部分ではあるんですが、戦闘においてダンスの基礎が意外と役に立つことがあるんです。下半身がブレないでいられるとしなやかでダイナミックな動きが出来るので、攻撃の幅が広がります」
「知りませんでした。あなたの強さはダンスの経験にも支えられているんですね」
とはいえ、それはほんの一部だ。
戦闘においてはとにかく敵を倒した者勝ちであるので、スマートな戦い方が必ずしも歓迎される世界ではない。
一瞬目を離した隙に、シェルエンの髪には薄紅の花が咲いた。
「殿下、新しい花が咲いたようですが、これは取ってしまってもよろしいですか?」
「ええ、お願いします。今日のテーマカラーは厳密に決まっているので、それ以外はマダム・コメットとジュディスの許可が下りません」
ブラッドリーは手を伸ばして、そっと、綺麗で複雑に編まれた髪を乱さないようにしながら薄紅を取り除いた。
七枚の可憐な花だ。
彼は思わずそれを鼻先に近づけて、香りを楽しんだ。
それは甘く、清廉な空気となって胸を満たす。
「芳しくてとってもいい香りがします。殿下そのものを表しているのかのようです」
眉を跳ねさせたシェルエンの首筋が、ほわほわと朱に染まっていく。
色白の肌と純白の衣服とのコントラストで、それは一目瞭然で分かってしまう。
髪を下ろしていない右の耳元を、ブラッドリーは指先で撫でた。
「照れていますか? 可愛いです」
「からかうのはやめなさい」
「殿下の香りも確かめてもいいですか?」
「断固拒否します。ふしだらな護衛騎士は、ここで留守番させますよ?」
「主人に置いて行かれたら、寂しくて泣いてしまいます」
シェルエンが座っているソファの背もたれ部分に大きく両腕を広げて、背後から囲うようにする。
首筋近くまで距離を詰めてくるブラッドリーの頬は、シェルエンにそっと押し返された。
その指先を捕らえて絡め取ってしまおうとしたのと、そばで静観していたジャックバートが盛大な咳払いをしたのと、扉の外から呼び掛けがあったのは、全て同じタイミングだった。
「第二妃キャロライン様と第二皇子サンディス様が、ご訪問でいらっしゃいます」
室内の三名はそれぞれ顔を見合わせた。
それまでとは一変して、不穏な空気が流れる。
主人とその者たちとの因縁を把握しているブラッドリーはその名を聞いただけで、自分のあらゆる感情が鳴りを潜めていくのを感じていた。
あるのは唯一、怒りのみ。
諸悪の根源を今ここで斬ってしまえるならば、それも吝かではない。
「舞踏会の前にごめんなさいね、シェルエン」
現れたのは、豊満なバストを強調した深紅のドレスに、ティアラと羽飾りのダブル使用で顔周辺がとてもうるさい女性だった。
後ろに付き添う男性は、豪奢ではあるがこれといって特徴のないジュストコールを着用している。
「お邪魔するよ、シェルエン」
記憶違いでなければ、第二皇子はシェルエンよりも実年齢は下だ。
同齢である第三皇子のカイザックはシェルエンのことを『兄様』と呼んでいたのに対し、その人物は呼び捨てにした。
ブラッドリーはその一言を聞いただけで、第二皇子を『いけ好かない奴』認定した。
「どうぞ、お座りください」
シェルエンの声掛けに、悪の母子はテーブルを挟んで対面に座った。
護衛騎士を三名引き連れている。
ジャックバートが完璧な所作で紅茶を並べ終わったタイミングで、第二妃が口を開いた。
「今日のお召し物も素敵ね。マダム・コメットの特注かしら?」
「ご厚意に甘えて作っていただきました」
「髪を飾っているお花、とっても綺麗だわ。角度によって色が変わるなんて不思議ね……そんな品種、見たことあったかしら。近くでよく見たいわ、ひとつ頂けるかしら?」
シェルエンの麗しい銀白の髪を飾っているのは、ホワイトオパールの花だ。
籠いっぱいに入ったそれをメイドのジュディスが持ってきたとき、七枚の花びらだが見慣れぬ色合いに、咲かせた本人も護衛騎士も首を傾げた。
「最近、新色が加わりました」とフットマンのデーヨにも言われて、まじまじと観察したふたりだった。
「髪と共に編み込まれてしまっているので、外せないんです」
「あなたから咲く花にそんな色はないはずだけれど、最近咲くようになったの?」
「人間の私から花は咲かないので、どなたかの作り話が巡り巡ってキャロライン様のお耳に入ったようですね。残念ながら、これは庭師のフィリパが育てている花のひとつです」
「またしらばっくれるつもりなのね。いつまで経っても、私たちを許してはくれないんだわ」
「そういうわけではありません。真実でないことを捏造するわけにはいきませんので」
「そんなことはないだろう、シェルエン? いい加減に私たちにも事実を教えてくれ。お前は奇病に罹っているし、赤い花は傷を治癒する効果があるんだろう?」
痺れを切らした第二皇子が声を強める。
どんな窮地でも威厳と優雅さを手放してはいけない皇族としては、その態度は落第点だ。
「私たちは家族だ。血を分け合った兄弟じゃないか。過去にお前を傷つけたことは謝罪済みだ。軽微な過ちも許せぬ狭い心の持ち主だなんて、私たちを失望させたりはしないだろう?」
相手に非があるような錯覚を起こさせて籠絡する。
気に食わないやり口だ。
さらに、シェルエンに怪我をさせた過去を軽微だと称したのにも納得がいかない。
被害を受けた人は未だに、後遺症に苛まれているというのに。
自然と、第二王子を直視する瞳が鋭くなる。
ブラッドリーは己の頭に血が昇っていくのを感じていた。
「シェルエン、私たちは悲しいのよ。病を患っていることで不便なことも多々あるでしょう。それを私たちは助けたいだけなの。それに、せっかく咲いたのなら、それらを大事に集めて有効活用できるようにしたいと思っているだけなのよ」
『有効活用』の範囲は私的流用であろう。
ファンデミアのために使うならばいざ知らず、故国のために使いたいという魂胆が丸見えの者にどうしてそれを渡せようか。
不用意に動かずじっと好機を待つ、それが獲物を狙う鉄則だ。
罷り間違っても、花が咲くか試したいから、と相手を直接傷つけてはならない。
賢明な両親や有能な側近の元で育てられてこなかった証拠だ。
ひとつの間違いが、全ての計算を狂わせる。
「皇后や皇太子は知っているんだろう? 水臭いではないか。意固地にならずに、国に貢献する功労者となれるよい機会をその手で掴もうではないか」
国は国でも遠く離れた異国だ。
事情を知っていると、言葉遊びが拙すぎて笑いが零れそうになる。
「サンディス、もう一度申し上げます。私は病とは無関係の身です。お役に立てることは何もありません」
「っ……では、そこまで言うなら、証明してもらおうじゃないか!」
いきなり立ち上がった第二皇子が、テーブルを迂回してシェルエンの元へやって来た。
その怒りを隠さない様子に、ブラッドリーはちらりと相手方の護衛騎士を見遣るが、彼らは一切姿勢を崩さない。
止める気はないようだ。
止めるな、と事前に命令されているのかもしれない。
ソファに座った第二皇子は、隙間を空けようとするシェルエンの繊細なマントを掴んで強引に引き寄せた。
「怪我をしても血が流れるだけなんだろう? 花になんて変わらないんだろう? 見せてくれ、今ここで。切り傷ひとつ作るくらい、男にとっては何てことないはずだ」
その手には、手の平サイズのペーパーナイフが握られていた。
封書を開けるために使われるものなので深手にはならないだろうが、切っ先は鋭利だ。
幼少の頃の不祥事のみならず、分別のつく年齢になってもシェルエンを害そうとするとは。
ブラッドリーは怒りが心頭に発して、爆発するのを感じていた。
「おやめください」
振り下ろされた真鍮のナイフを、ブラッドリーは片手で受け止めた。
「な、なんだ、お前……! 私の邪魔をするなど、皇子の邪魔をするなど近衛にあってはならないことだぞ! 離せ!」
「俺は近衛ですが、シェルエン皇子の専属護衛です。主人の危機になるような事象は全て、取り除きます」
贅沢をして暮らしている皇子と、常日頃から鍛えている騎士だ。
力の差は歴然、俊敏さも隙を突く間合いも比べ物にならない。
ブラッドリーは奪ったペーパーナイフを第二皇子の首元にひたりと沿わせた。
キャロラインの後ろに控える近衛騎士が剣に手を掛けるが、それは視線で制した。
「お、お前、何をしてるか分かっているのか。私はこの国の皇子だぞ。その私にナイフを向けて、ただで済むと思っているのか」
「俺は俺の仕事をしているまでです。主人にとって脅威になるもの全てから、主人を護ります。それがたとえ他の皇子であっても、一切関係ありません」
「身の程知らずの無礼者が! お前たち、何をしている! 早く私を助けないか!」
「そうよ、早くあの無作法な騎士を斬ってちょうだい!」
足音がする中で、ブラッドリーはナイフを滑らせる。
その冷たい感覚に、第二皇子の顔が引き攣る。
「おど、脅すのもいい加減にしろ。研いでもいない刃物とも呼べないようなもので、人など斬れようはずもないっ!」
「そうですね。確かに、斬れたとしても薄皮か、その少し下辺りまでですね」
「あ、あはははは。そ、そうだろう、そうだろう。分かっているなら悪あがきはよせ。今ならば事を荒げずに済ませてやる。私の寛大な心で大目に見てやるから」
ブラッドリーを取り囲んだ近衛騎士三名が長剣を抜く。
銀に輝くそれは、手の中にある真鍮よりも遥かに研ぎ澄まされている。
味方に囲まれて安心したのだろう、第二皇子の震えていた身体が落ち着きを取り戻す。
ここで油断をするなどもっての外なのに。
命の危機に瀕したことのない人間は、優勢に転じた瞬間に勝利を確信してしまう。
敵の攻撃が未だに届く場所にいては、勝敗など最後の最後まで紙一重だというのに。
ブラッドリーはため息を吐いた。
そして、滔々と説く。
「サンディス皇子殿下、油断してはなりません。いくら封書用で切れ味の悪いナイフとはいえ、衝撃を伴って圧すれば人間の肉にもめり込みましょう。俺が力の限りでその喉元に突き刺し、幾つも通る血管のひとつでも損傷させられれば、殿下は終わりです」
「ひ、ひぃっ」
「たとえ、取り囲む三本の剣に刺されたとて絶命までに数瞬はあるでしょう。そのまたたきひとつの間に、俺は腕を振り下ろします。身体から腕が物理的に離れてしまえば止められましょうが、この近衛たちの角度からでは実現は不可能。さらに俺は、片腕だけでもやり遂げられます。どうしますか、試してみましょうか」
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
第三皇子の身体が最高潮に震える。
擦り傷ひとつでも医師を呼ぶ皇族だ。
ブラッドリーの言葉ひとつひとつが、信じられないほどに生々しく想像を絶するものだっただろう。
あまりの度胸のなさにブラッドリーが笑いながら身体を離すと、その隙を突いて皇子は逃げ出した。
力の抜けた膝で転びかけながら、母の元へと帰っていく。
ゴテゴテとした飾りのついたドレスの胸元に顔を埋めているが、果たして痛くないのだろうか。
「野蛮な騎士だことっ! 皇太子の次に継承権を有する皇子を脅迫するなんて、自分の悪事を分かっているのかしら。この子が皇帝陛下にもなり得る尊い存在だということを、忘れているんじゃないでしょうね」
「それは次なる後継者として、正式に宣誓済みの皇太子殿下に対する謀反と捉えかねられません。お言葉は慎んだ方が賢明かと思われます」
キャロラインに対したのはシェルエンだった。
ファンデミアの皇位継承は大臣たちからの承認を得て、既に決定済みだ。
そこに異を唱える姿勢が僅かでも見受けられれば、それ即ち反逆と噂されかねない。
そうなれば粛清の対象となってしまう危うさも、先ほどの言葉は十分に含んでいる。
「そんなつもりで申したのではありません。私はただ、我が子が一国の主になれる素質を備えていると言いたかっただけです。親が子を可愛がるのは当然でしょう? 男子たるもの、頂点を目指せるように育てるのが母親の役目ですから」
「言葉を重ねれば重ねるほどに危うさは増していきます。私たちは聞かなかったことにしますので、どうぞお引き取りを」
「くっ……」
花を見ることが出来ずに終わったばかりか、思わぬ揚げ足をとられる事態になってしまった第二妃は、悔しそうな顔を隠そうともせず立ち上がった。
「お暇いたします。また会場でお会いしましょうね、シェルエン。サンディス、立ちなさい。行きましょう」
母と近衛に支えられて歩く第二皇子の後ろ姿は、部屋に入ってきた時よりも一回り小さくなっていた。
反撃されることを念頭に置いていない挑発は、子供の難癖と同等だ。
そこに不純物が混じっているだけ、質は圧倒的に悪い。
冷めた目で見送っていたブラッドリーは、手の中の存在に気づく。
要らないから返してしまおう、単純にそう思っただけだった。
「お待ちください、お忘れものです」
腕を軽く一振りした。
真鍮のペーパーナイフが、綺麗な軌道を描いて壁に突き刺さる。
それは部屋を出ようとしていた第二妃のすぐ真横だった。
「ひ、ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
母は息子を捨てて逃げ去っていった。
「足が速いですね」
「ブラッドリー、揶揄うのもほどほどにしなさい。一応あれでも第二妃ですから、怖い存在ではあるんですよ」
「悪の親子に葬り去られるなら、その前にあいつらの過ちを国中にぶちまけて本懐を遂げます」
「遂げなくていいですから、大人しくしていてください。私は私の護衛騎士を失くして、一体誰に護ってもらえばいいんです?」
意図のない上目遣いで見つめてくるシェルエンに顔を寄せる。
遠くで咳払いが聞こえた気がするが、意識の外に追いやった。
紫シルバーの瞳に吸い込まれそうになりながら、ブラッドリーはこう囁いた。
「駄目です。殿下は俺にだけ護られていてください。他の騎士に背中を預けるなんて、絶対に許しません。俺だけの主人でいてください」
その人は眉を少し動かしただけで、何も返答はしなかった。
髪を飾るホワイトオパールの花だけが、増えていた。
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