50 / 109
二章
08. 憂いなく眠れますように②
しおりを挟む
「ちょっと早いですけど、お風呂入りますか?今日あった嫌なことはシャワーでさっと流しちゃいましょう?」
「ええ、そうさせて貰えるなら」
「じゃ、行きましょう。アメリカから帰ってきてバスタブを交換したんですが、肩に小さい滝みたいなお湯が流れるのにしたら結構快適で」
そう言いながら鳴成の手を引いて月落は歩き始める。
二人が向かう先は浴室だろうが、疑問が向かう先はそこではない。
「え、あの、月落くん。一緒に入るんですか……?」
「え、一緒に入っていいんですか?」
鳴成の言葉を聞いて振り向いた月落は、それはもう、発光するかの如くとても嬉しそうな顔をしていた。
明るすぎてもはや白飛びしそうなほどの輝きだ。
「いえ、絶対にお断りします」
「えー……」
もの凄く分かりやすく肩を落とす大型犬。
「期待させたのなら申し訳ないんですが、一緒に入らないなら、どうして私たちは一緒にお風呂へと向かっているんでしょう?」
「色々機能の説明をしようと思いまして。あと、先生のパジャマを選ぼうかと」
「なるほど。それは私が先走りました」
「一緒に入っても窮屈じゃない大きさなんですが、それでも駄目ですか?」
リビングを出て2つ目の扉を開けると、濃淡の違うグレーで造られた洗面室と、ガラスドアで区切られた淡いグレータイルのバスルームが現れた。
部屋全体の総面積は鳴成の自宅の方が広いだろうが、浴室に関しては月落の自宅の方が大きいだろう。
一緒に入っても窮屈じゃないというのは、ひとつも嘘ではなさそうだ。
「ええ、駄目です」
けれど、一緒には入れない。
恋人でもなければ友人でもないただの職場の関係者と、私的な空間で服を脱いだ付き合いをするのは正しくない。
長時間手を繋いでいて何を今更、と見えぬ観客席から野次を投げられそうだが、そういう関係ではない。
「残念です。でも、先生にはゆっくり入ってほしいので、今回は諦めます」
「ありがとうございます」
今回は、という部分が少し引っかかるが追求しないでおこう。
「先生、普段寝るときは何を着てますか?」
「パイル地のパジャマです」
「え、何それ可愛い、想像するだけで可愛い」
「何ですか?」
「何でもありません。うちにはTシャツとスウェットしかないんですが、寝づらかったりしますか?」
「大丈夫です。学生の頃はスウェットで寝てたので」
「よかったです。色は……これかな」
洗面台の横の扉を開けた月落は、グレージュのスウェットと白いTシャツを取り出した。
「下着は新しいのがあるので使ってください。この前幼馴染が来たときに用意したものなので、パッケージさえ開いてないやつです」
「ありがとうございます」
その後も、タオルはここ、スキンケアはここ、新しい歯ブラシはここ、と説明されるのを鳴成は素直に頷きながら聴いていた。
―――――――――――――――
広い浴室でさっぱりとした鳴成は、若干大きめのTシャツとズボンに着替えスキンケアをした。
探したけれど見つけられなかった物は諦めて歯磨きをしていると、廊下へ出る扉からノック音が響いた。
「先生、入ってもいいですか?」
「ふぁい、どうぞ」
もこもこと泡立つ歯磨き粉と格闘しながら振り向くと、そこには探し物を手に立っている月落がいた。
「ドライヤー、もしかして探しましたか?」
「すこしだけ」
「昨日ベッドの上で乾かしたまま放り投げてたのを忘れてました。すぐ乾かせなくて寒くなっちゃいましたね、ごめんなさい」
「だいじょうぶ、です」
近づいてきた月落は、洗面台の扉を開けて手に取った緑のボトルから中身を出すと、鳴成の濡れた髪へとそれをざっくり塗った。
不思議な顔で見上げる人に、トリートメントです、と告げる。
歯を磨き終えて口をすすいだ鳴成がドライヤーを使おうとすると、その手を月落に遮られた。
「どうしました?」
「髪、乾かしてもいいですか?」
「え?」
「この綺麗なヘーゼルの髪、僕が乾かしても良いですか?」
後頭部に手を差しこまれて、髪を梳かれる。
自分も男だから手の大きさの違いなんて僅差だと分かっているけれど、頭皮を撫で上げる大きさが心地良くて鳴成は思わず許可してしまった。
「ここだとちょっとやりにくいので、上に行きましょう?」
そしてまた、年下に手を繋がれて連れて行かれる。
この部屋の中で生きるためには手を繋いでいるのが絶対条件なのかと思うほどに、当然の如く繋がれ、当然の如くそれを受け入れる。
疑問には思うけれど、その疑問を口にしたら温もりが離れてしまうんじゃないかと、寂しくて言えずにいる。
ズルいと思う。
けれど今夜は何故か、ズルくいたいとも思う。
「先生、ここに座ってください」
階段を上ってたどり着いたクイーンサイズのベッドの前、毛足の長いラグの上に鳴成は座る。
来る途中でソファから何個か持ってきたクッションで鳴成の周りを埋めると、月落はドライヤーのスイッチを押した。
脚の間にいる鳴成の髪を後ろから乾かしながら、指をするすると流れていく綺麗な色素を楽しむ。
「先生、休みの日は前髪分けない派ですよね?」
「……なんですか?」
耳元で馬力を発揮する機械の声は、騒音に等しい。
聞き取れず見上げてくる鳴成に、月落はドライヤーのスイッチをオフにしてもう一度問う。
「前髪、センターパートにしますか?」
「どっちでも良いです。きみのやりやすい方で」
「じゃあ、下ろすスタイルにしますね」
再び稼働させる。
火傷させないように注意を払う。
熱で温められて水気の抜けた髪から、シャンプーとトリートメントの混ざった香りがしてくる。
自分と同じものを使っているので嗅ぎ慣れているはずなのに、それが鳴成からするとなると途端に上品で優雅な香りに感じられるから不思議だ。
艶やかなヘーゼルに顔を埋めて胸いっぱいに深呼吸したい……明らかにドン引きされるだろうからやらないけれど。
前髪を乾かす時は、手の甲で額を覆って熱気が直接当たらないようにする。
「な、……ます……?」
「何ですか?」
再度訪れる静寂。
「手慣れてますね?」
「中学の時に、4つ下で小学生だった妹の髪を乾かす担当だったんです。加減が分からず度々熱いっていうクレームが入るので、半強制的に特訓させられました」
「英才教育ですね」
「もはやあれはスパルタ教育の領域です。要領を得たあとは上手に乾かせるようになったんですが、その頃には妹も結構大きくなってて。自分で乾かせるのにお風呂上りはなぜか僕のところにドライヤーを持ってきて無言で目の前に座るので、結局妹の高校卒業まで担当しました」
「ということは、きみは……」
「大学卒業でようやく廃業となりました」
「ベテランですね」
「はい。でも、今日はそれ以来ぶりなので熱かったら言ってください」
「それ以来、ですか?」
「妹のはほぼ義務だったので仕方なくだったんですが、誰かの髪を自主的に乾かしたいと思ったのは先生が初めてです」
ドライヤーのスイッチを入れる。
『つくづく尽くし攻め』だと幼馴染からあだ名をつけられている月落だ。
恋人への配慮は世間一般と比べるとずば抜けて高いという自負はあるが、けれどそこにも壁は確かにあった。
何でもかんでも、あれもこれも差し出すのでは決してない。
恋人へと与える範囲は広いとはいえ、それは無限ではなかった。
鳴成と出会う前は。
何でもかんでも、あれもこれも全部全部、自分に出来ることならば躊躇なく際限なく、際の際まで与えたいと思うのは人生で初めての経験だ。
愛が大きすぎて困る、とまさか与える側の自分が思う日が来るなんて。
人生、何があるか本当に分からない。
「先生、終わりました……先生?」
しっとりしていた髪がすっかりさらさらになったのを惜しく感じながら、指で梳く。
脚の間に座る鳴成にふくらはぎが当たらないように気をつけながら無理な体勢で覗き込むと、佳人はゆっくりとした瞬きで深い呼吸をしていた。
「先生、眠くなっちゃいました?」
髪を触られると気持ち良くてうとうとしてしまう。
適度な刺激で血圧が下降しリラックスするからだと聞いたことがある。
悲惨な場面が思い出されてもしかしたら今夜、鳴成は一晩中苦しむことになるのではと予想していたので、このまま眠ってしまえるのならばそれは願ってもない。
夜も深まっていない時間に眠くなるのはそれだけ疲弊している証拠だと言えばそうなのだろうが、今日を終わらせることで今日が一歩でも過去になればいい。
「立てますか?」
「がんばります」
ぽやぽやした返答に心を柔く引っかかれながら、立ち上がった鳴成をそっとベッドへと寝かせた。
端に腰かけて間接照明の照度を下げた後で、鳴成の首元までダウンケットを引き上げる。
目元にかかるヘーゼルを指で避けていると、長い間合いの瞬きの隙間で視線が合う。
「きみは寝ないの?」
「寝ます、シャワー浴びたら。先生、一緒に寝てもいいですか?」
「どうぞ」
うんうん、と素直に頷きながら鳴成は、空いてる隣のスペースを手の平で2回叩いた。
そして、覚束ない動作でベッドの上を彷徨う指先。
それを自分の指先と絡ませて、月落は口元へと持っていく。
琥珀の指先にそっと口づけを落とすと、そのまま濃茶の睫毛に縁取られた瞼にも唇で触れる。
「おやすみなさい、先生」
「…やす、み…さい」
憂いなく穏やかに眠れますように。
大切な人を、それからしばらく見つめていた。
「ええ、そうさせて貰えるなら」
「じゃ、行きましょう。アメリカから帰ってきてバスタブを交換したんですが、肩に小さい滝みたいなお湯が流れるのにしたら結構快適で」
そう言いながら鳴成の手を引いて月落は歩き始める。
二人が向かう先は浴室だろうが、疑問が向かう先はそこではない。
「え、あの、月落くん。一緒に入るんですか……?」
「え、一緒に入っていいんですか?」
鳴成の言葉を聞いて振り向いた月落は、それはもう、発光するかの如くとても嬉しそうな顔をしていた。
明るすぎてもはや白飛びしそうなほどの輝きだ。
「いえ、絶対にお断りします」
「えー……」
もの凄く分かりやすく肩を落とす大型犬。
「期待させたのなら申し訳ないんですが、一緒に入らないなら、どうして私たちは一緒にお風呂へと向かっているんでしょう?」
「色々機能の説明をしようと思いまして。あと、先生のパジャマを選ぼうかと」
「なるほど。それは私が先走りました」
「一緒に入っても窮屈じゃない大きさなんですが、それでも駄目ですか?」
リビングを出て2つ目の扉を開けると、濃淡の違うグレーで造られた洗面室と、ガラスドアで区切られた淡いグレータイルのバスルームが現れた。
部屋全体の総面積は鳴成の自宅の方が広いだろうが、浴室に関しては月落の自宅の方が大きいだろう。
一緒に入っても窮屈じゃないというのは、ひとつも嘘ではなさそうだ。
「ええ、駄目です」
けれど、一緒には入れない。
恋人でもなければ友人でもないただの職場の関係者と、私的な空間で服を脱いだ付き合いをするのは正しくない。
長時間手を繋いでいて何を今更、と見えぬ観客席から野次を投げられそうだが、そういう関係ではない。
「残念です。でも、先生にはゆっくり入ってほしいので、今回は諦めます」
「ありがとうございます」
今回は、という部分が少し引っかかるが追求しないでおこう。
「先生、普段寝るときは何を着てますか?」
「パイル地のパジャマです」
「え、何それ可愛い、想像するだけで可愛い」
「何ですか?」
「何でもありません。うちにはTシャツとスウェットしかないんですが、寝づらかったりしますか?」
「大丈夫です。学生の頃はスウェットで寝てたので」
「よかったです。色は……これかな」
洗面台の横の扉を開けた月落は、グレージュのスウェットと白いTシャツを取り出した。
「下着は新しいのがあるので使ってください。この前幼馴染が来たときに用意したものなので、パッケージさえ開いてないやつです」
「ありがとうございます」
その後も、タオルはここ、スキンケアはここ、新しい歯ブラシはここ、と説明されるのを鳴成は素直に頷きながら聴いていた。
―――――――――――――――
広い浴室でさっぱりとした鳴成は、若干大きめのTシャツとズボンに着替えスキンケアをした。
探したけれど見つけられなかった物は諦めて歯磨きをしていると、廊下へ出る扉からノック音が響いた。
「先生、入ってもいいですか?」
「ふぁい、どうぞ」
もこもこと泡立つ歯磨き粉と格闘しながら振り向くと、そこには探し物を手に立っている月落がいた。
「ドライヤー、もしかして探しましたか?」
「すこしだけ」
「昨日ベッドの上で乾かしたまま放り投げてたのを忘れてました。すぐ乾かせなくて寒くなっちゃいましたね、ごめんなさい」
「だいじょうぶ、です」
近づいてきた月落は、洗面台の扉を開けて手に取った緑のボトルから中身を出すと、鳴成の濡れた髪へとそれをざっくり塗った。
不思議な顔で見上げる人に、トリートメントです、と告げる。
歯を磨き終えて口をすすいだ鳴成がドライヤーを使おうとすると、その手を月落に遮られた。
「どうしました?」
「髪、乾かしてもいいですか?」
「え?」
「この綺麗なヘーゼルの髪、僕が乾かしても良いですか?」
後頭部に手を差しこまれて、髪を梳かれる。
自分も男だから手の大きさの違いなんて僅差だと分かっているけれど、頭皮を撫で上げる大きさが心地良くて鳴成は思わず許可してしまった。
「ここだとちょっとやりにくいので、上に行きましょう?」
そしてまた、年下に手を繋がれて連れて行かれる。
この部屋の中で生きるためには手を繋いでいるのが絶対条件なのかと思うほどに、当然の如く繋がれ、当然の如くそれを受け入れる。
疑問には思うけれど、その疑問を口にしたら温もりが離れてしまうんじゃないかと、寂しくて言えずにいる。
ズルいと思う。
けれど今夜は何故か、ズルくいたいとも思う。
「先生、ここに座ってください」
階段を上ってたどり着いたクイーンサイズのベッドの前、毛足の長いラグの上に鳴成は座る。
来る途中でソファから何個か持ってきたクッションで鳴成の周りを埋めると、月落はドライヤーのスイッチを押した。
脚の間にいる鳴成の髪を後ろから乾かしながら、指をするすると流れていく綺麗な色素を楽しむ。
「先生、休みの日は前髪分けない派ですよね?」
「……なんですか?」
耳元で馬力を発揮する機械の声は、騒音に等しい。
聞き取れず見上げてくる鳴成に、月落はドライヤーのスイッチをオフにしてもう一度問う。
「前髪、センターパートにしますか?」
「どっちでも良いです。きみのやりやすい方で」
「じゃあ、下ろすスタイルにしますね」
再び稼働させる。
火傷させないように注意を払う。
熱で温められて水気の抜けた髪から、シャンプーとトリートメントの混ざった香りがしてくる。
自分と同じものを使っているので嗅ぎ慣れているはずなのに、それが鳴成からするとなると途端に上品で優雅な香りに感じられるから不思議だ。
艶やかなヘーゼルに顔を埋めて胸いっぱいに深呼吸したい……明らかにドン引きされるだろうからやらないけれど。
前髪を乾かす時は、手の甲で額を覆って熱気が直接当たらないようにする。
「な、……ます……?」
「何ですか?」
再度訪れる静寂。
「手慣れてますね?」
「中学の時に、4つ下で小学生だった妹の髪を乾かす担当だったんです。加減が分からず度々熱いっていうクレームが入るので、半強制的に特訓させられました」
「英才教育ですね」
「もはやあれはスパルタ教育の領域です。要領を得たあとは上手に乾かせるようになったんですが、その頃には妹も結構大きくなってて。自分で乾かせるのにお風呂上りはなぜか僕のところにドライヤーを持ってきて無言で目の前に座るので、結局妹の高校卒業まで担当しました」
「ということは、きみは……」
「大学卒業でようやく廃業となりました」
「ベテランですね」
「はい。でも、今日はそれ以来ぶりなので熱かったら言ってください」
「それ以来、ですか?」
「妹のはほぼ義務だったので仕方なくだったんですが、誰かの髪を自主的に乾かしたいと思ったのは先生が初めてです」
ドライヤーのスイッチを入れる。
『つくづく尽くし攻め』だと幼馴染からあだ名をつけられている月落だ。
恋人への配慮は世間一般と比べるとずば抜けて高いという自負はあるが、けれどそこにも壁は確かにあった。
何でもかんでも、あれもこれも差し出すのでは決してない。
恋人へと与える範囲は広いとはいえ、それは無限ではなかった。
鳴成と出会う前は。
何でもかんでも、あれもこれも全部全部、自分に出来ることならば躊躇なく際限なく、際の際まで与えたいと思うのは人生で初めての経験だ。
愛が大きすぎて困る、とまさか与える側の自分が思う日が来るなんて。
人生、何があるか本当に分からない。
「先生、終わりました……先生?」
しっとりしていた髪がすっかりさらさらになったのを惜しく感じながら、指で梳く。
脚の間に座る鳴成にふくらはぎが当たらないように気をつけながら無理な体勢で覗き込むと、佳人はゆっくりとした瞬きで深い呼吸をしていた。
「先生、眠くなっちゃいました?」
髪を触られると気持ち良くてうとうとしてしまう。
適度な刺激で血圧が下降しリラックスするからだと聞いたことがある。
悲惨な場面が思い出されてもしかしたら今夜、鳴成は一晩中苦しむことになるのではと予想していたので、このまま眠ってしまえるのならばそれは願ってもない。
夜も深まっていない時間に眠くなるのはそれだけ疲弊している証拠だと言えばそうなのだろうが、今日を終わらせることで今日が一歩でも過去になればいい。
「立てますか?」
「がんばります」
ぽやぽやした返答に心を柔く引っかかれながら、立ち上がった鳴成をそっとベッドへと寝かせた。
端に腰かけて間接照明の照度を下げた後で、鳴成の首元までダウンケットを引き上げる。
目元にかかるヘーゼルを指で避けていると、長い間合いの瞬きの隙間で視線が合う。
「きみは寝ないの?」
「寝ます、シャワー浴びたら。先生、一緒に寝てもいいですか?」
「どうぞ」
うんうん、と素直に頷きながら鳴成は、空いてる隣のスペースを手の平で2回叩いた。
そして、覚束ない動作でベッドの上を彷徨う指先。
それを自分の指先と絡ませて、月落は口元へと持っていく。
琥珀の指先にそっと口づけを落とすと、そのまま濃茶の睫毛に縁取られた瞼にも唇で触れる。
「おやすみなさい、先生」
「…やす、み…さい」
憂いなく穏やかに眠れますように。
大切な人を、それからしばらく見つめていた。
173
あなたにおすすめの小説
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる