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第4話 それって、ものまね?
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仲里さんと真宮さんの身体が入れ替わっている――って……。
いやいや、仲里さんはなにを言い出しているんだ。妹の果奈や真宮さんもドン引きしちゃっているじゃないか。
にもかかわらず、彼女の表情は真剣そのものでウケを狙っているという感じでもなさそうだし……こ、これは反応に困る。
「あっ! わかった……それってアニメのものまねですかぁ? 映画で観たことあります!」
果奈が突然くすくすと笑いだしながら入れ替わりの話に反応した。どうやらアニメの話題だと思ったようだ。
「果奈ちゃん、それって何年か前に流行った漫画原作のでしょ!」
「そうそう、それです! 真宮さんもあの映画、観ました?」
「観たよー。いつ二人が元の身体に戻れるのかドキドキしたよね」
果奈と真宮さんは、まだ会って間もないはずなのに随分と意気投合しているよなぁ……妹がまた変な影響を受けなきゃいいけど。
「ねえ果奈ちゃん。仲里さんのものまねって、そのアニメで正解なんじゃない?」
「ですよね! 仲里さん、当たりですか?」
「ちっ、ちがいます! ものまねなんかじゃありません! 私はあお……」
仲里さんは、盛り上がっている二人の会話を打ち消すような強い口調で否定をすると、なにか言いかけたまま黙ってしまった。
けれど、果奈たちの反応は無理もない。誰だって、こんな突拍子もない話をされても素直に受けとれないだろう。
ただ、俺は真宮さんの反応には少し違和感を覚えた。
最初、仲里さんと言い合っていたときには、なにか事情をしっていそうな反応をしていたはず――。
うーん……。
――にぃにぃ!
「にぃにぃってば!」
「え? あ、ああ、なんだよ」
「なにぼーっとしてるの! いつまでも立ち話なんてしていないでさぁ、仲里さんにも家へ上がってもらったら?」
「へ?」
ななっ、なにを言っちゃっているんだ、この妹はっ! 家に上げる⁉︎ ただでさえフラれて気まずいのに?
でも――。
仲里さんは、俺と真宮さんの関係について勘違いをしているかも知れないし、そっちの誤解は解いておきたい。
そのためには妹の言う通り家に上がってもらって、落ち着いた場所で話した方が良さそうだ。
もっとも既にフラれている事実が変わるわけじゃないのだけれど……。
「えーと、仲里さん、良かったら少し上がっていかない? 変なのいるけど」
「ちょっと春時……変なのって、あたしのこと言ってたりする?」
「そのとおりだぞ真宮葵。他に誰がいるんだよ」
「なにそれ、彼女なのに、ひっどーい!」
「ちょっ、仲里さんが誤解するだろ」
仲里さんの様子が気になりチラッと視線を向けてしまう――。
「あの……早見くん、ごめんなさい。私……帰ります。……お騒がせして……」
え――?
「い、いや、でも仲里さん、まだ話は途中……」
「もういいんです。変なこと言って本当にごめんなさい」
彼女は静かに言うと軽く頭を下げ、そのまま玄関を出ていってしまった。気まずい空気がその場に漂う。
「はゎわわ、帰っちゃったね。なんだったのかなぁ?」
「うーん、なんだろうね」
果奈たちは仲里さんの話を、あまり気にしていないようだけれど、なぜ彼女はわざわざ家を訪ねて来てまで、あんなことを口にしたんだろう。
真宮さんに用があるなんて言ってたけれど、なんだか不自然じゃないか?
しかも自分がフった男の家になんて普通に考えたら、わざわざ来たくもないだろし……俺には、彼女が玄関を出ていく横顔が思い詰めた表情にも見えた。
なにかあるんじゃ……。
さっき出て行ったばかりだし、まだ近くにいるはずだよな。
「二人とも悪い、少し出てくるから適当に昼飯でも食っていてくれ」
「はわ? いいけど」
「春時、ちょっと!」
俺は急いで玄関を後にし、仲里さんを追いかける。
門を曲がるとミルクティーベージュの髪をなびかせながら走る彼女の姿を確認できた――が、思いのほか前を走っている。
俺は追いつこうと地面を蹴った。
この先には交差点があるし、そこでうまいこと信号が変わってくれたら追いつけそうだ。
それにしても仲里さんがこんなに速く走れるなんて――って、よく考えたら彼女は容姿に加えて勉強や運動も得意な才色兼備だったじゃないか!
だけど、走るだけなら俺だって自信はある! 走るだけならな……。
ようやく信号機が見えてきた。こんな真剣に走るのはいつぶりだろう。そろそろ息が切れそうだ……頼むから赤になってくれ。
「よしっ!」
願いが伝わったのか歩行者用のLEDが青色の点滅から赤色に切り替わった。
そのとき――。
横断歩道を走り抜けようとした彼女に車がせまる。
「仲里さんっ! 危ないっ!」
ダメだ――この距離からじゃ間に合わない!
いやいや、仲里さんはなにを言い出しているんだ。妹の果奈や真宮さんもドン引きしちゃっているじゃないか。
にもかかわらず、彼女の表情は真剣そのものでウケを狙っているという感じでもなさそうだし……こ、これは反応に困る。
「あっ! わかった……それってアニメのものまねですかぁ? 映画で観たことあります!」
果奈が突然くすくすと笑いだしながら入れ替わりの話に反応した。どうやらアニメの話題だと思ったようだ。
「果奈ちゃん、それって何年か前に流行った漫画原作のでしょ!」
「そうそう、それです! 真宮さんもあの映画、観ました?」
「観たよー。いつ二人が元の身体に戻れるのかドキドキしたよね」
果奈と真宮さんは、まだ会って間もないはずなのに随分と意気投合しているよなぁ……妹がまた変な影響を受けなきゃいいけど。
「ねえ果奈ちゃん。仲里さんのものまねって、そのアニメで正解なんじゃない?」
「ですよね! 仲里さん、当たりですか?」
「ちっ、ちがいます! ものまねなんかじゃありません! 私はあお……」
仲里さんは、盛り上がっている二人の会話を打ち消すような強い口調で否定をすると、なにか言いかけたまま黙ってしまった。
けれど、果奈たちの反応は無理もない。誰だって、こんな突拍子もない話をされても素直に受けとれないだろう。
ただ、俺は真宮さんの反応には少し違和感を覚えた。
最初、仲里さんと言い合っていたときには、なにか事情をしっていそうな反応をしていたはず――。
うーん……。
――にぃにぃ!
「にぃにぃってば!」
「え? あ、ああ、なんだよ」
「なにぼーっとしてるの! いつまでも立ち話なんてしていないでさぁ、仲里さんにも家へ上がってもらったら?」
「へ?」
ななっ、なにを言っちゃっているんだ、この妹はっ! 家に上げる⁉︎ ただでさえフラれて気まずいのに?
でも――。
仲里さんは、俺と真宮さんの関係について勘違いをしているかも知れないし、そっちの誤解は解いておきたい。
そのためには妹の言う通り家に上がってもらって、落ち着いた場所で話した方が良さそうだ。
もっとも既にフラれている事実が変わるわけじゃないのだけれど……。
「えーと、仲里さん、良かったら少し上がっていかない? 変なのいるけど」
「ちょっと春時……変なのって、あたしのこと言ってたりする?」
「そのとおりだぞ真宮葵。他に誰がいるんだよ」
「なにそれ、彼女なのに、ひっどーい!」
「ちょっ、仲里さんが誤解するだろ」
仲里さんの様子が気になりチラッと視線を向けてしまう――。
「あの……早見くん、ごめんなさい。私……帰ります。……お騒がせして……」
え――?
「い、いや、でも仲里さん、まだ話は途中……」
「もういいんです。変なこと言って本当にごめんなさい」
彼女は静かに言うと軽く頭を下げ、そのまま玄関を出ていってしまった。気まずい空気がその場に漂う。
「はゎわわ、帰っちゃったね。なんだったのかなぁ?」
「うーん、なんだろうね」
果奈たちは仲里さんの話を、あまり気にしていないようだけれど、なぜ彼女はわざわざ家を訪ねて来てまで、あんなことを口にしたんだろう。
真宮さんに用があるなんて言ってたけれど、なんだか不自然じゃないか?
しかも自分がフった男の家になんて普通に考えたら、わざわざ来たくもないだろし……俺には、彼女が玄関を出ていく横顔が思い詰めた表情にも見えた。
なにかあるんじゃ……。
さっき出て行ったばかりだし、まだ近くにいるはずだよな。
「二人とも悪い、少し出てくるから適当に昼飯でも食っていてくれ」
「はわ? いいけど」
「春時、ちょっと!」
俺は急いで玄関を後にし、仲里さんを追いかける。
門を曲がるとミルクティーベージュの髪をなびかせながら走る彼女の姿を確認できた――が、思いのほか前を走っている。
俺は追いつこうと地面を蹴った。
この先には交差点があるし、そこでうまいこと信号が変わってくれたら追いつけそうだ。
それにしても仲里さんがこんなに速く走れるなんて――って、よく考えたら彼女は容姿に加えて勉強や運動も得意な才色兼備だったじゃないか!
だけど、走るだけなら俺だって自信はある! 走るだけならな……。
ようやく信号機が見えてきた。こんな真剣に走るのはいつぶりだろう。そろそろ息が切れそうだ……頼むから赤になってくれ。
「よしっ!」
願いが伝わったのか歩行者用のLEDが青色の点滅から赤色に切り替わった。
そのとき――。
横断歩道を走り抜けようとした彼女に車がせまる。
「仲里さんっ! 危ないっ!」
ダメだ――この距離からじゃ間に合わない!
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