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第14話 どこにいくの?
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七月二十一日の午前十時――俺の夏休み初日は慌ただしく始まる。
てっきり家に泊まるものだとばかり思っていた真宮さんは、仲里さんに腕を引っ張られ帰っていった。
問題はそのあとだ。
今後スマホでやりとりが出来るようにと、三人の連絡先を交換していたとはいえ……。
まさか真宮さんから連絡がきていたなんて…… 普段メッセージを利用することはないから、気づくのが遅れてしまった。
しかもそのせいで、真宮さんをまたせてしまっている。
これからはスマホをマメに確認した方が良さそうだな。
そういえば今日はどこにいくんだろう? 真宮さんからは『三人で買い物するから準備してまつように!』とだけ書かれていて、まったく想像がつかない。
「にぃにぃ~! 真宮さんまってるよ! 早くしなよぉ~!」
一階から妹の果奈の声がする。相変わらず沖縄の方言にハマっているようだ。
いつになったら元のお兄ちゃん呼びに戻るのだろう。
「春時ぃいい! まだぁあああっ?」
数秒もしないうちに真宮さんの声も聞こえてきたので、俺は適当に返事をしてから着替えを急いだ。
結局、昨夜は真宮さんの出した提案を半ば強引に呑み込む状況になり、俺は二人と付き合うことになってしまった――が、彼女の提案には条件がある。
彼女として二人と付き合うのは七月二十一日から八月三十一日までの夏休み期間だけで、始業式の日どちらか一人を選ばなくてはならない。
正直、二人と同時に付き合うなんて彼女いない歴=年齢の俺にとっては難易度が高すぎるし、不誠実だとは思う。
けれど、二人のうち一人を選ばないといけない……俺の心にずっといた仲里さんを、ちゃんと見つけないとダメなんだ。
「春時ぃいいいい!」
真宮さんの声が再び家の中に響く――俺はスマホをポケットにしまうと慌てて部屋を出た。
「お、おお、おまたせ」
階段を降りると真宮さんが不機嫌そうな顔をして、玄関に立っている。
ん? 仲里さんの姿が見当たらない。たしか三人で買い物だって書いてあったよな……外にいるのかな?
「春時、次からちゃんとスマホ確認しなさいよね」
「わかったよ……ところで仲里さんは?」
「あ、エリカなら、もう先に行ってるよ」
「え? なんでだよ」
「詳しいことは後で話すから。ほらっ、急がないとエリカまたせちゃう!」
言うと真宮さんは俺の手を強引にとり、玄関を出た。
◇
最寄り駅から山手線に乗り換え、俺と真宮さんは池袋駅へと向かう。
平日の昼前ということもあってか電車の中は適度に空いてはいたけれど、座席は残念ながら埋まっていたので俺たちはドア前に立った。
「ところで仲里さんは、なんで別行動?」
「昨日の夜、二人で色々とルールを決めたのよ」
窓に流れる建造物の景色を眺めていた真宮さんは顔をこちらに向けて言った。
「ルール?」
「うん。夏休みはあっという間だし、一秒でも多く春時と二人だけの時間をつくりたいじゃない? だから三人で行動するとき、片方は現地集合にしているの」
「わざわざ別にしなくても良いと思うけどなぁ……」
「いいの! これは昨日エリカと決めたことだし、その代わり帰りはあたし一人で帰るんだから」
「そうなんだ?」
「うん」
「うーん……そうなのか……」
別に三人で行動するときくらい一緒でもいいと思うんだけど、よく分からないルールだなぁ……まぁ、彼女たちがそう決めたのなら俺はこれ以上なにも言わない方がよさそうだ。
「なぁ、今日はなにを買いにいくんだ?」
「はい! では春時くんに問題です! 夏といえば?」
「なんでクイズ形式なんだよ……」
「いいから答えてよ」
め、面倒くさい……が仕方ない。
「うーん。夏といえばか……花火とか?」
「ブッブー! ハズレです!」
「いや、花火は夏でいいだろ……」
「ほら! つぎ! 答えて!」
「たくっ、じゃあ……海かな?」
「おぉおお! 流石だね! 正解!」
「で? この質問、なんか意味ある?」
「ありありだよ! 海といえば海水浴! もうわかった?」
「海水浴……」
まさか……。
「もしかして、今日の買い物って……みず……」
「うん! 水着だよ!」
真宮さんは俺が言い終わる前に満面な笑みで言った。
「いやいやいや、そんな場所に男の俺が行くのは、どう考えてもヤバイ!」
「なんでよ? 彼氏なんだし、問題ないじゃん」
「でもさ……」
「あ! 池袋つくよ!」
俺が言いかけると彼女の声とともに電車は停車してドアが開いた……。
てっきり家に泊まるものだとばかり思っていた真宮さんは、仲里さんに腕を引っ張られ帰っていった。
問題はそのあとだ。
今後スマホでやりとりが出来るようにと、三人の連絡先を交換していたとはいえ……。
まさか真宮さんから連絡がきていたなんて…… 普段メッセージを利用することはないから、気づくのが遅れてしまった。
しかもそのせいで、真宮さんをまたせてしまっている。
これからはスマホをマメに確認した方が良さそうだな。
そういえば今日はどこにいくんだろう? 真宮さんからは『三人で買い物するから準備してまつように!』とだけ書かれていて、まったく想像がつかない。
「にぃにぃ~! 真宮さんまってるよ! 早くしなよぉ~!」
一階から妹の果奈の声がする。相変わらず沖縄の方言にハマっているようだ。
いつになったら元のお兄ちゃん呼びに戻るのだろう。
「春時ぃいい! まだぁあああっ?」
数秒もしないうちに真宮さんの声も聞こえてきたので、俺は適当に返事をしてから着替えを急いだ。
結局、昨夜は真宮さんの出した提案を半ば強引に呑み込む状況になり、俺は二人と付き合うことになってしまった――が、彼女の提案には条件がある。
彼女として二人と付き合うのは七月二十一日から八月三十一日までの夏休み期間だけで、始業式の日どちらか一人を選ばなくてはならない。
正直、二人と同時に付き合うなんて彼女いない歴=年齢の俺にとっては難易度が高すぎるし、不誠実だとは思う。
けれど、二人のうち一人を選ばないといけない……俺の心にずっといた仲里さんを、ちゃんと見つけないとダメなんだ。
「春時ぃいいいい!」
真宮さんの声が再び家の中に響く――俺はスマホをポケットにしまうと慌てて部屋を出た。
「お、おお、おまたせ」
階段を降りると真宮さんが不機嫌そうな顔をして、玄関に立っている。
ん? 仲里さんの姿が見当たらない。たしか三人で買い物だって書いてあったよな……外にいるのかな?
「春時、次からちゃんとスマホ確認しなさいよね」
「わかったよ……ところで仲里さんは?」
「あ、エリカなら、もう先に行ってるよ」
「え? なんでだよ」
「詳しいことは後で話すから。ほらっ、急がないとエリカまたせちゃう!」
言うと真宮さんは俺の手を強引にとり、玄関を出た。
◇
最寄り駅から山手線に乗り換え、俺と真宮さんは池袋駅へと向かう。
平日の昼前ということもあってか電車の中は適度に空いてはいたけれど、座席は残念ながら埋まっていたので俺たちはドア前に立った。
「ところで仲里さんは、なんで別行動?」
「昨日の夜、二人で色々とルールを決めたのよ」
窓に流れる建造物の景色を眺めていた真宮さんは顔をこちらに向けて言った。
「ルール?」
「うん。夏休みはあっという間だし、一秒でも多く春時と二人だけの時間をつくりたいじゃない? だから三人で行動するとき、片方は現地集合にしているの」
「わざわざ別にしなくても良いと思うけどなぁ……」
「いいの! これは昨日エリカと決めたことだし、その代わり帰りはあたし一人で帰るんだから」
「そうなんだ?」
「うん」
「うーん……そうなのか……」
別に三人で行動するときくらい一緒でもいいと思うんだけど、よく分からないルールだなぁ……まぁ、彼女たちがそう決めたのなら俺はこれ以上なにも言わない方がよさそうだ。
「なぁ、今日はなにを買いにいくんだ?」
「はい! では春時くんに問題です! 夏といえば?」
「なんでクイズ形式なんだよ……」
「いいから答えてよ」
め、面倒くさい……が仕方ない。
「うーん。夏といえばか……花火とか?」
「ブッブー! ハズレです!」
「いや、花火は夏でいいだろ……」
「ほら! つぎ! 答えて!」
「たくっ、じゃあ……海かな?」
「おぉおお! 流石だね! 正解!」
「で? この質問、なんか意味ある?」
「ありありだよ! 海といえば海水浴! もうわかった?」
「海水浴……」
まさか……。
「もしかして、今日の買い物って……みず……」
「うん! 水着だよ!」
真宮さんは俺が言い終わる前に満面な笑みで言った。
「いやいやいや、そんな場所に男の俺が行くのは、どう考えてもヤバイ!」
「なんでよ? 彼氏なんだし、問題ないじゃん」
「でもさ……」
「あ! 池袋つくよ!」
俺が言いかけると彼女の声とともに電車は停車してドアが開いた……。
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