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第31話 またせたわね!
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東京プールランドの出来事から三日が経ち、俺は園崎杏奈と会うために近所のファストフード店の前にいる。
一応、約束の十三時には遅れないよう、早めには来たものの、すでに十五分は過ぎていて、この真夏に外で立ってまつという行為は中々の罰ゲームだ。
「……彼女には、もう会うことはないと思っていたんだけどなぁ」
まさかプールの翌日に連絡がくるとは……詳しい話は会ってからするとメッセージには書かれていたけれど、どこか怪我でもしていたのだろうか?
捻挫でもしていたとか? まさか骨折……いや、さすがにそれはないだろう。
レストランでも元気そうに歩いていたし。
うーん……。
――ねぇ。
「ちょっと!」
「ん?」
聞き覚えのある声。
「なにボーッと立ってるのよ。おじいちゃんなの?」
視線を下へ向けると、そこにはピンクの髪色をした園崎杏奈が俺を見上げて睨んでいる。
「えっと……や、やぁ?」
「またせたわね」
「い、いや……」
彼女はなぜか制服を着ている。この白いセーラー服は、たしかこの辺で有名な女子高の制服だ。
「なんで制服? もう夏休みだよな?」
「別にいいでしょ。部活があったんだから仕方ないじゃない!」
「部活やってるんだ? 何部なの?」
「なんで、そんなこと教えないといけないのよ。それより暑いから早く中に入りましょ」
言うと彼女は店内に入っていったので、俺もあとに続く。
窓際の四人席しかあいていなかったので、そこへ腰を下ろすと正面に園崎さんも腰をかけた。
彼女のトレイにはポテトとドリンクがのっている。
「それだけで足りるの?」
「足りるけど?」
「あ、そ、そう」
なんか会話が続かないなぁ……この子ちょっと苦手なんだよ。
園崎杏奈は小さな手をポテトに伸ばすと、それを口に放り込む。
俺も合わせるように自分のポテトを口に入れた。
「それで……園崎さん? 話って、治療費の件だよね?」
「杏奈って呼んで」
「は?」
「だから、名字じゃなくて名前で呼んでって言ってるの」
なぜ……。
「あ、杏奈……」
「ちょっと! なんで呼び捨てなのよ! キモッ! 鳥肌たっちゃったじゃない、もうっ!」
自分が杏奈って呼べと言ったんじゃないか……と思ったが口にするのは危険そうなのでやめておこう。
「じゃあ、杏奈さん? 俺は今日、治療費の件でここに呼ばれたんだよね?」
「そうね。あなたのせいで、わたしは心の病にかかってしまったの」
ん? 怪我をしたんだよな? 心ってなんだ……。
「えーと……こころ?」
「そうなの! あの日からわたし、エリカちゃんのことが忘れられなくて!」
杏奈さんは、なぜか伏し目がちになって頬を赤らめている。
「はぁ……」
なるほど、そういえば杏奈さん、仲里さんのことをもの凄く気に入っている感じだったもんな。
「えーと……怪我は?」
「怪我? あなた怪我でもしたの?」
「なんで俺なんだよ。杏奈さん怪我したんじゃないの? それで連絡してきたのかと思ってたんだけど」
「怪我なんてしていないわよ。怪我じゃなくて、や、ま、い! わかる?」
「わかりません……」
「もう! 使えないわね! ねぇ! エリカちゃん、今どうしてる?」
「どうしてるって言われてもなぁ……」
「なにそれ。あなた一応、彼氏なんでしょ? わたしてきには不本意だけど」
「仕方ないだろ。一緒に住んでいるわけじゃないんだし、今なにしているかなんて分からないよ」
まったく……でもまぁ、怪我はしていないみたいだし、良かった。
そういえばあれから真宮さんと仲里さんには会っていないけど、どうしているんだろう。
真宮さんからは、たまにペットボトルとか地面のアップなんかのよくわからない写真が送られてきていたけれど……。
「春時!」
「あっ!」
俺の名前を呼ぶ声に視線を向ける――と、そこには真宮さんと仲里さんが立っていた。
――え? なんで二人がここにいるの?
一応、約束の十三時には遅れないよう、早めには来たものの、すでに十五分は過ぎていて、この真夏に外で立ってまつという行為は中々の罰ゲームだ。
「……彼女には、もう会うことはないと思っていたんだけどなぁ」
まさかプールの翌日に連絡がくるとは……詳しい話は会ってからするとメッセージには書かれていたけれど、どこか怪我でもしていたのだろうか?
捻挫でもしていたとか? まさか骨折……いや、さすがにそれはないだろう。
レストランでも元気そうに歩いていたし。
うーん……。
――ねぇ。
「ちょっと!」
「ん?」
聞き覚えのある声。
「なにボーッと立ってるのよ。おじいちゃんなの?」
視線を下へ向けると、そこにはピンクの髪色をした園崎杏奈が俺を見上げて睨んでいる。
「えっと……や、やぁ?」
「またせたわね」
「い、いや……」
彼女はなぜか制服を着ている。この白いセーラー服は、たしかこの辺で有名な女子高の制服だ。
「なんで制服? もう夏休みだよな?」
「別にいいでしょ。部活があったんだから仕方ないじゃない!」
「部活やってるんだ? 何部なの?」
「なんで、そんなこと教えないといけないのよ。それより暑いから早く中に入りましょ」
言うと彼女は店内に入っていったので、俺もあとに続く。
窓際の四人席しかあいていなかったので、そこへ腰を下ろすと正面に園崎さんも腰をかけた。
彼女のトレイにはポテトとドリンクがのっている。
「それだけで足りるの?」
「足りるけど?」
「あ、そ、そう」
なんか会話が続かないなぁ……この子ちょっと苦手なんだよ。
園崎杏奈は小さな手をポテトに伸ばすと、それを口に放り込む。
俺も合わせるように自分のポテトを口に入れた。
「それで……園崎さん? 話って、治療費の件だよね?」
「杏奈って呼んで」
「は?」
「だから、名字じゃなくて名前で呼んでって言ってるの」
なぜ……。
「あ、杏奈……」
「ちょっと! なんで呼び捨てなのよ! キモッ! 鳥肌たっちゃったじゃない、もうっ!」
自分が杏奈って呼べと言ったんじゃないか……と思ったが口にするのは危険そうなのでやめておこう。
「じゃあ、杏奈さん? 俺は今日、治療費の件でここに呼ばれたんだよね?」
「そうね。あなたのせいで、わたしは心の病にかかってしまったの」
ん? 怪我をしたんだよな? 心ってなんだ……。
「えーと……こころ?」
「そうなの! あの日からわたし、エリカちゃんのことが忘れられなくて!」
杏奈さんは、なぜか伏し目がちになって頬を赤らめている。
「はぁ……」
なるほど、そういえば杏奈さん、仲里さんのことをもの凄く気に入っている感じだったもんな。
「えーと……怪我は?」
「怪我? あなた怪我でもしたの?」
「なんで俺なんだよ。杏奈さん怪我したんじゃないの? それで連絡してきたのかと思ってたんだけど」
「怪我なんてしていないわよ。怪我じゃなくて、や、ま、い! わかる?」
「わかりません……」
「もう! 使えないわね! ねぇ! エリカちゃん、今どうしてる?」
「どうしてるって言われてもなぁ……」
「なにそれ。あなた一応、彼氏なんでしょ? わたしてきには不本意だけど」
「仕方ないだろ。一緒に住んでいるわけじゃないんだし、今なにしているかなんて分からないよ」
まったく……でもまぁ、怪我はしていないみたいだし、良かった。
そういえばあれから真宮さんと仲里さんには会っていないけど、どうしているんだろう。
真宮さんからは、たまにペットボトルとか地面のアップなんかのよくわからない写真が送られてきていたけれど……。
「春時!」
「あっ!」
俺の名前を呼ぶ声に視線を向ける――と、そこには真宮さんと仲里さんが立っていた。
――え? なんで二人がここにいるの?
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