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第64話 理由は?
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――早見くんは、もう私には用がないと思うのですけど――
真宮さんの言葉に動揺して俺はうまく言葉が出てこなかった。
本当にどうしたというのだろう。
なにか気に障るようなことをしてしまったのだろうか……記憶を辿ってもなにも思い当たらない。
「私、自宅へ戻ります」
真宮さんは背を向けてしゃがむと、床に置かれていたバッグの口を止めて言った。
「ちょっとまって! 出て行くだなんて、突然どうしたんだよ! 理由……理由は?」
彼女は俺の言葉を無視し、荷物を片付ける手を止めない――。
真宮さんは本気でこの家を出て行くつもりなんだ……。
「早見くんが……」
真宮さんは洋服が詰められたダンボールの蓋を閉じると背を向けたまま口を開く。
俺は黙って耳を傾けた。
「早見くんが初めて出会って好きになった子が仲里さんなんですよね。私は今までその身体を借りていただけ。仲里さんが元の姿に戻れたということは始業式の日まで、早見くんの返事をまつ必要はないじゃないですか……答えはもう出ているんです」
――そういうことか……。
たしかに俺が好きになったのは、今の仲里さんだ……それは間違いない。
間違いないけれど、だからといってその事実だけで答えは出せない気がする。
「ごめんなさい早見くん。荷物は仲里さんに送ってもらいますから。さようなら……」
彼女を止めたい……けれど、なんて声をかけたらいいのか分からない。
バックを片手に真宮さんは俺の横を通り過ぎてしまう。
階段を降りる音が次第に離れていく。
――追いかけなくちゃ。
ダメだ……追いかけたところで今の俺には真宮さんを引き留めることが出来ない。
その言葉が分からない……。
「はは……日本語って難しいや……」
――呆然としていると、階段を駆け上がる激しい音が近づいてくるのが分かった。
音が止むと同時に俺はその方向へと視線を向ける――仲里さんだ。
「春時っ! これってどういうことなの!」
仲里さんは走りよると、俺に向かってスマホの画面を突き出し見せてきた。
真宮さんの言葉に動揺して俺はうまく言葉が出てこなかった。
本当にどうしたというのだろう。
なにか気に障るようなことをしてしまったのだろうか……記憶を辿ってもなにも思い当たらない。
「私、自宅へ戻ります」
真宮さんは背を向けてしゃがむと、床に置かれていたバッグの口を止めて言った。
「ちょっとまって! 出て行くだなんて、突然どうしたんだよ! 理由……理由は?」
彼女は俺の言葉を無視し、荷物を片付ける手を止めない――。
真宮さんは本気でこの家を出て行くつもりなんだ……。
「早見くんが……」
真宮さんは洋服が詰められたダンボールの蓋を閉じると背を向けたまま口を開く。
俺は黙って耳を傾けた。
「早見くんが初めて出会って好きになった子が仲里さんなんですよね。私は今までその身体を借りていただけ。仲里さんが元の姿に戻れたということは始業式の日まで、早見くんの返事をまつ必要はないじゃないですか……答えはもう出ているんです」
――そういうことか……。
たしかに俺が好きになったのは、今の仲里さんだ……それは間違いない。
間違いないけれど、だからといってその事実だけで答えは出せない気がする。
「ごめんなさい早見くん。荷物は仲里さんに送ってもらいますから。さようなら……」
彼女を止めたい……けれど、なんて声をかけたらいいのか分からない。
バックを片手に真宮さんは俺の横を通り過ぎてしまう。
階段を降りる音が次第に離れていく。
――追いかけなくちゃ。
ダメだ……追いかけたところで今の俺には真宮さんを引き留めることが出来ない。
その言葉が分からない……。
「はは……日本語って難しいや……」
――呆然としていると、階段を駆け上がる激しい音が近づいてくるのが分かった。
音が止むと同時に俺はその方向へと視線を向ける――仲里さんだ。
「春時っ! これってどういうことなの!」
仲里さんは走りよると、俺に向かってスマホの画面を突き出し見せてきた。
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