不幸体質ですが、神様に溺愛されているので大丈夫です

紅茶緑茶ほうじ茶

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知ってる天井だ・・・よかった。

自室の見慣れた天井に一息つき少し態勢を変える。茶々丸が蹴り飛ばされ、拓斗の怪我を見て俺は気を失った。拓斗は大丈夫だろうか。利き手だった。怪我をしてしまえば仕事に支障がでる。悪化しない事だけ祈ろう。それにしても今何日の何時?暗いけど・・・。

「神様だから不法侵入できるの?」

暗い部屋でベッドに腰掛ける千雪は月明かりに照らされて一層神秘的に見えた。
「助けに来れなかった」
「俺は怪我してないよ。情けない話、勝手にぶっ倒れただけ」

昼間はあんなに近かったのに今は全く近づいて来ない。遠いな。

「外には出れるんだ。見舞い嬉しい。だから顔見せて。千雪」
「外には・・・出れる、怖いけど」
「怖い?」

俺は入るのが怖かったが、千雪は出るのが怖いのか。理由は教えてくれなかった。その代わりにゆっくり振り返る。はぁ、見舞いに来たなら病人に心配させるなよ。色白の肌が一層白いし震えている。

「お前の方が絶対顔色悪いよ。仕方ないな」

愛らしい『友人』の手を引いて布団の中に招き入れる。一度身を引いたが、こちらが引き寄せると抵抗はなかった。あぁ、もう本当に狭い。冷たい。手を握り足をすり合わせる。ちょっと温度戻ってきたな。

「なんか喋ってよ」
「自分の不甲斐なさで憤死する。守るって、ぷっわっ!」

あはは間抜けだ。俺に鼻を摘ままれて目を白黒させている。顔、少し赤い。

「千雪、内緒話。お前にだけしてあげる。俺、本当はすごく怖いんだ。昔は俺だけの不幸だったのに最近は俺を中心に広がっちゃう。自分が傷つく事で越えられる不幸は良い。大切な人を巻き込むことはやっぱり怖いんだ。もう絶対嫌なんだ」

ずっと隠し持ってた不安。初めて口にした。顔は見られたくないので千雪の胸に押し付けた。千雪の匂いがする。

「だからもし俺に何かあっても、絶対助けに来ないで」
「俺は君にとって大切な人なのか?」
「大切だよ、見た目がどれだけ変わっても俺の友人だから」
「・・・友人」
「もう友達に命かけなくていいんだよ」

千雪の体が跳ねた。

「お前が消える所をもう見たくないから」
「天。俺は・・・」
「いい子だから寝ろ。俺もまだ疲れてるし」

頭を撫でてやる。そしてその形の良い額にキスを落とした。子供の時のおまじない。

「大丈夫だから」

震えているのは俺だったのかも、千雪は優しく抱きしめてくれる。愛おしそうに。それなのに・・・。

あぁ、俺って最低。ついこないだ俺は同じ事をされて傷ついたのに友人だよなんて言って。
でも千雪はちゃんと気づいてくれただろう。俺が記憶を取り戻した事を。
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