イントロン・ギフター

 二十一世紀世紀初頭、突如として特異敵性体群S.I.Cs<Singular Inimical Characters >が出現した。地震や台風等の大規模自然災害を遙かに凌ぐ厄災をもたらす彼等を前にしてなす術のない人類。
 だが、それに呼応するかのように、人類の中から救世主ともいうべき超人的な能力を持つ『イントロン因子発現能力者』が発見される。
 人間のDNAとは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの四つの塩基を二重螺旋構造に約31憶対配列した高分子生体物質であり、その配列情報に従ってタンパク質に特定の臓器を造る命令を発するのだが、その塩基配列全てに意味があるわけではない。
 いわゆる生命の設計図として機能している部分と何の意味も持たずただ塩基が羅列されている部分があり、前者をエクソンと後者をイントロンと呼ぶ。
 この無意味と思われていたイントロンの部分に、人間を超人に変異させる遺伝子情報が隠されていたのだ。
 人類は、これを「イントロン・ギフト」と呼び、その解析に注力し恩恵に浴した。
 だが、イントロン・ギフトには、その存在自体に根本的な疑念を孕んでいた。
 それは、この特殊能力を生み出す情報は、意図的、人為的にイントロン遺伝子に組み込まれているという事である。つまり、イントロン・ギフトの送り主(ギフター)は、間違いなく人類を凌ぐ何らかの<知性体>だという事だった。
 文字通り人類に対する「贈り物」なのか、それとも、何らかの隠された意図に基づき仕組まれた「陰謀」なのか。どちらにしても、「イントロン・ギフトのない未来」という選択肢は、もはや人間に残されていなかった。
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