王太子からは逃げられない!

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【30】理性崩壊!それでももっと知りたい!*

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呆然としたまま、目の前のそれをじっと見つめる。熱を帯び、脈打つそれはまるで別の生き物のようで――見ているだけで息が詰まりそうになる。
気づけば無意識に、手が伸びていた。指先がほんの少し触れた瞬間、びくりと震える感触に驚いて手を引っ込めそうになる。だけど、その動きを止めたのは、彼の掠れた声だった。
「んっ……ユーリ……」
名前を呼ばれるだけで、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。逃げるどころか、もっと触れてみたくなる。
(おかしい……どうして……)
戸惑いながらも、そっと手を滑らせた。ビクビクと脈打つ熱が、得体の知れないもののようで怖い。なのに、もっと確かめたくなる。
(触れるだけで、こんなに熱い……)
じんわりと滲む雫が、指先に絡みついた。それを見た瞬間、なぜか喉が渇いたような気がして、唇をそっと舐める。
(……味、知りたい)
身体の奥から、信じられないような衝動が湧き上がった。戸惑いながらも、僕はそっと舌を伸ばす。
「ユーリ!?」
アルフレード様の驚いた声が降ってきた。けれど、止められるのが怖かった。もし今やめてしまったら、この胸の疼きがどうしようもなくなりそうで――僕は意を決し、その熱を唇で包んだ。
「……っ!」
瞬間、アルフレード様の身体がビクンと震える。彼の腹筋がわずかに引き締まり、喉の奥から押し殺したような吐息が漏れた。
初めての感触。未知の味。戸惑いながらも慎重に舌を這わせると、彼の息がさらに荒くなる。
「……っ、く……」
彼の声が低く震えた。それだけで、僕の心臓も跳ね上がる。どんな時でも余裕のある彼が、たったこれだけで息を詰めるなんて。
(もっと、感じてほしい……)
無意識に、吸い付くように夢中で舌を動かす。
「っ……!ユーリ……っ」
次の瞬間、不意に後頭部を押さえつけられた。驚いて口を離そうとするも間に合わず、喉の奥まで突き入れられる形になってしまう。
「んんっ!んぅ……っ」
苦しさに涙目になりながら見上げると、そこには完全に余裕を失ったアルフレード様の姿があった。普段の冷静さとはかけ離れた、荒々しく滲む熱に満ちた表情に胸が高鳴る。同時に、なぜだか妙な安心感も覚えた。彼もまた、僕と同じように必死なのだと、その瞳が物語っているようで――。
「はぁっ……ユーリ……っ」
切羽詰まった声で名前を呼ばれた瞬間、喉の奥に熱いものが流れ込んできた。驚いて離れようとするが、アルフレード様はしっかりと僕を押さえつけたまま、それを許してくれない。
結局全てを受け入れることになり、ドクドクと勢いよく注がれるそれを必死に飲み下す。
ようやく解放されると、僕はぐったりとベッドに沈み込み、身体を起こすことすらできなかった。そんな僕を見下ろしながら、アルフレード様はわずかに眉を寄せ、申し訳なさそうにそっと頬を撫でる。
「ユーリ……すまない……苦しかっただろう?」
掠れた声でそう告げるアルフレード様に、僕は静かに首を振った。責めるつもりなんてない。むしろ――彼のこんな姿を見られたことが、嬉しくて仕方がなかった。
その気持ちを伝えるように、今度は僕の方からそっと唇を重ねる。
触れるだけのつもりが、すぐに深く求め合う口づけへと変わっていく。絡み合う舌に酔わされ、思考が溶かされていくうちに――気づけば、再びベッドに押し倒されていた。恥ずかしくて身を捩ろうとするけれど、しっかりと押さえつけられているため動けない。
アルフレード様は、まるで宝物を愛でるような眼差しで僕を見つめ、低く囁いた。  
「……綺麗だ」  
その声だけで全身が熱を帯びるのが分かる。恥ずかしさに耐えきれず顔を背けようとすると、すぐに顎を掴まれ、優しく阻止された。  
「ちゃんとこっちを向いてくれ」  
静かながらも強い意志を感じる言葉に、逆らうことができず、おずおずと視線を戻す。すると、彼は満足そうに微笑んだ。
「いい子だ」  
そう言いながら、大きな手で優しく頭を撫でてくれる。その心地よさに、つい甘えてしまい、無意識に自分から頭を押しつけた。すると、アルフレード様は、さらに嬉しそうに目を細め、今度は額にそっと口づけを落とした。
「んっ……」
たったそれだけのことに、不思議と心地よさが全身に広がり、思わず小さな声が漏れてしまう。
アルフレード様はその反応を逃さず、唇を重ねてきた。何度も触れ合ううちに、頭がだんだんぼうっとしてくる。
もっと――もっと深く欲しい。
無意識に舌を伸ばすと、すぐにそれを絡め取られ、甘く絡み合う熱に飲み込まれていった。
「んぅ……っ」
ぴちゃりと水音が響く度に身体が跳ねてしまう。息継ぎのたびに甘い声が漏れ、それが自分で思っている以上に艶めいて聞こえてしまうのが恥ずかしい。
けれど、アルフレード様はむしろそれを楽しむように、わざと音を立てるような口づけを繰り返す。触れ合うたびに熱が高まり、もう限界だ――そう思った瞬間、ようやく唇が解放された。
ほっとしたはずなのに、名残惜しさが滲んだ表情を浮かべてしまった自分に気づき、思わず息を詰める。アルフレード様はくすりと微笑み、次の瞬間、そっと首筋に顔を埋めてきた。
「ひゃっ……!」
思わぬ感触に思わず声を上げると、アルフレード様の動きがふっと止まる。驚かせてしまったのかと見上げれば、彼の瞳が熱を帯びていることに気づいた。
吸い込まれそうなほど濃い視線――そこに浮かぶのは、抑えきれない情欲の色。息を呑んだ僕の喉が、ごくりと小さく鳴った。
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