異世界学園の中の変な仲間たち3

ひしご

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そのごじゅうよん

アロエの相談

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 職員室でデスクワーク中のオーギュスティン。
 外部から聞こえてくる放課後の喧騒をスルーしながらパソコンの画面と睨めっこしていると、そろそろとカティルが近付いて来た。
「オーギュスティン先生」
 キーボードの打ち込み音を響かせ、彼は「何ですか?」と聞き返す。
「育てているアロエが最近元気が無くてね」
 またアロエの話か、と面倒そうにしながらもそうなんですかと社交辞令で無難な言葉を返した。
 話に乗ってくれた様子を見て、カティルは安心したように彼の隣の席に腰を掛けて苦笑いを交え「そうそう」と話を続ける。
「寂しくないようにいつも話しかけているんだよ。ほら、何らかの音楽や会話をしていると成長しやすいとか聞いたもんでねぇ」
「はぁ」
 何故こんな話を聞かされなければならないのだろうか。
 カティルの話に、オーギュスティンはキーを打っていた手を止めた。
「あまり育て方は分からないのですが、調べてみましたか?」
「ああ、ちゃんと調べて色々試しているよ。土を変えてみたり日当たりに気を使ってみたりねぇ。どうにもしっくりこなくて」
 色々手を尽くしているようだ。
 真面目なオーギュスティンはうーんと腕を組み考える。
「音楽や話しかけているって言ってましたが、何の音楽を聞かせているんですか?」
 様々な手を尽くしていて元気が無いとなれば、他に理由があるのかもしれない。
 そして彼が気になったのが音楽や声掛け。
 置かれている環境の中で別に理由があるのかもしれないと思ったオーギュスティンは、不思議そうにカティルに問う。
 カティルはその質問に対して、「そうだねえ」と呑気に返した。
「最近怪談話に凝っていてね」
「か…?」
 怪談というと、あの怪談か?と眉を寄せた。
 いつもの調子でカティルはにっこりと微笑みながら続ける。
「そうそう、怖い話ね。色々聞いているんだけどこれが中々ハマってしまってね。あとは心霊系のDVDを見ているかな?部屋を暗くしてね、雰囲気を味わいながら…でもねえ、最近おかしい事が起こってて」
「………」
「何も無いのに変なラップ音とか、勝手にマグカップが落ちたりしてね。昨日なんてシャワーを浴びながら髪を洗っていたら、鏡に赤い服を着た誰かが映っていたような気が」
 オーギュスティンは呆気に取られて口を開く。
 普通に笑顔で言いながら、自ら変な環境に置かれている事に全く気付いていない模様。
「それ…じゃないですかね…」
「えっ?」
「いや、その環境はどう考えてもおかしいとおもいますよ。あなた一人暮らしなんですよね」
「ああ、そうだけど…」
 マグカップが勝手に落ちるだの、赤い服の誰かが映っていただの、どう見ても異常な状況ではないか。それなのに何の危機感も無く通常の環境として受け入れている彼に、思わず突っ込まずにはいられなかった。
 オーギュスティンはドン引きしながらカティルに「大丈夫です?」と問う。
「大丈夫って…何が?」
「何か居ますよ、それ。引き寄せてるんじゃないですか?」
「おかしいな、部屋には自分とアロエしか居ないんだけどなぁ」
 全く自覚が無い。
 試しに自分の手元にあった携帯電話で何気なくカティルを撮ってみた。そして画像を確認する。
 その瞬間、オーギュスティンは思わず「ひっ」と声を上げた。
 撮った画像が完全に真っ黒だったのだ。禍々しいものに絡み付かれていた。つい「うわ!!」と声を上げる。
「い、いいい居ますって!!とにかくお祓いをして貰った方がいいですよ、その方がアロエにもいいです!その前にあなたの身をどうにかしなさい!気持ち悪い!!」
 流石にこれは怖すぎる。
 意味の分からない画像をすぐ消去した。持っていたら自分までおかしくなりそうだ。
「ええ…そんな酷いかなぁ…」
 ここまで言われてもピンとこないらしい。
「酷いなんてもんじゃありません!!むしろこちらに近付いて欲しく無いレベルですよ!!」
 このまま彼を放置したら違う世界に連れて行かれそうだ。
 オーギュスティンは自分のパソコンを使い、近場で除霊をしてくれる場所を検索していた。
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