13 / 18
隠れ家
しおりを挟む
「エリン……エリン」
「ん…」
「寝かせておいてあげたいけどパーティが終わる」
フワフワとしてるのにベッドに吸い込まれているような疲れと下腹部の重み。
目を開けると服を着たレイが布を絞っていた。
「拭くよ」
毛布を取って私の体を優しく拭いた後は下着とドレスを着せてくれた。髪を整え終わるとまた上着を頭からかけられた。ここは王宮、王子の婚約者が王子の側近の部屋から出てきてはまずい。
「あっ」
「大丈夫?」
「はい」
足に力が入らずよろけてしまった。
彼は私を抱き上げると会場には戻らず馬車乗り場へ向かった。
「酒で気分が悪くなったと言っておくよ」
「はい」
そのまま屋敷に帰った。
ドレスを脱いで湯浴みをした。
「何か食事はあるかしら。残っているものでいいの。パンだけでもいいわ」
「すぐにお持ちします」
疲れているのにお腹がすいた。
パンと肉と野菜の煮込みとチーズを用意してもらった。お腹が満たされるとベッドに横になった。枕を抱きしめて目を閉じた。
体を重ねるということはこれほど変わるものなのだろうか。彼は敬語はやめて、する前より躊躇いなく触れ熱のこもった眼差しを向けていた。
私もおかしい。する前はあんなに恥ずかしかったのに、体を拭いてもらっても然程恥ずかしくはなかった。強烈な異物感だったはずなのに終わって私のナカから出ていってしまうと寂しく感じた。真っ白な強い快楽を何度か刻まれ、彼も気持ちよさそうに果てていた。男女が交わりたくなる理由がわかった。初めてを彼に捧げて良かった。
どうしよう、またしたくなってきた。またレイに抱いてもらいたい。なんともはしたない体になってしまった。
これはレイだから?それとも男なら誰でもいいの?
前者でも後者でも王子と結婚すれば最悪だわ。つまり、二度と悦びを得られないか、あの王子に身体を屈服させられる屈辱を与えられるということだもの。
翌日、花とカードが届いた。
封筒の差出人には“シンシア”と書いてあったけど知らない。使用人が代わりに開けましょうかと言ったけど、昨日の今日なので何だか自分で開けないといけない予感がした。まさか目撃者からの脅迫状?
中を開けるとレイからだとわかった。身体は大丈夫かと書いてあった。
「大丈夫じゃないわ」
そして日時と住所と店の名前が書いてある。
“シンシアの羽ばたき”
住所は王都の外れだった。
4日後の昼に指定された店に向かった。看板が出ているので実在する店のようだ。少し古びた小さな屋敷を利用したオーダーメイドの服屋だった。
「いらっしゃいませ、シンシアと申します」
名乗っていいのかわからないけど
「エリン・バランです」
「お待ちしておりました。奥で採寸をいたしましょう」
店の奥の扉を開けると廊下になっていた。その先の階段を上がりドアを開けてもらうと客室なのだろうか、ベッドやソファのある部屋だった。
「エリン、待っていたよ」
「レイ」
レイが立ち上がり、私の手の甲に唇を付けた。
シンシア様とメイドはドアを閉めて立ち去った。
「ここは?」
「シンシアさんは祖母の侍女をしていた女性の娘で、嫁ぎ先で酷い目に遭っていたんだ。祖母が助け出してこの屋敷を買って住まわせて、生活費も支援していたんだけど、得意の裁縫で店を開いた。今ではその利益で生活しているんだ。屋敷の維持費は持ち主の祖母が負担するけどね。彼女には言っていないけど祖母は自分が亡くなったら屋敷と彼女が生きている間に必要な額の金を遺すための遺言書を用意している」
コンコンコンコン
メイドがノックして入室し、お茶を注ぐと退室した。
「大切な侍女だったんですね」
「祖母がまだ小さい母を連れて馬車に乗っていたときに盗賊に遭遇してね。その侍女が身を挺して2人を守ったんだ。侍女は顔や手や肩や胸に切り傷を負ってしまった。それ以来、祖母は侍女というよりは専属の話し相手として側に置いて大事にしたんだ。負担のない仕事を少しさせて後は屋敷の庭の散歩とお茶の時間に付き合わせた。
もちろん慰労金を出して引退させることも考えたみたいだけど、顔に傷があるので今度は祖母が守りたいと思ったんだろう。縁あって私兵と恋に落ちて結婚しシンシアさんが生まれたんだ」
「そうだったのですね」
「ここを私とエリンの逢瀬に使わせてくれるというんだ。嫌だった?」
「いいえ。あの夜屋敷に戻ってすぐにレイが恋しくなりました」
「エリン……」
カーテンを閉めるとキスをしながら服を脱がしていくレイは意地悪な笑みを浮かべた。
「今日は脱がせやすい服にしてくれたんだね」
「っ!!」
カーッと顔が熱くなった。確かにそのつもりでこの服を選んだ。あからさまだったわ。
「カーテン開けていい?」
「もう!」
「少しだけ」
彼がカーテンを少し開けている間に毛布に包まり隠れた。
「エリン」
丁寧に力強く毛布を剥がして私の顔を見た。
「くっ、可愛いな」
「っ!!」
「すごく可愛い」
両手で頬を挟まれキスをして、毛布を完全に剥ぎ取られて下着を脱がされた。
「もう濡れてるんだね」
下着が湿ってしまったらしくレイがまた意地悪そうに微笑む。
「っ!」
恥ずかしさに涙が出てきた。
「ごめんごめん、嬉しいんだ。泣かないで」
「……」
「だって繋がりたいのに気持ち良くなってもらえなかったら義理で相手をしてくれてるってことになる。ここに来てくれたことも、脱がせやすい服を着てきてくれたことも、すでに濡れてくれていることもエリンが私との交わりを気に入ってくれた証拠だ。男にとって嬉しいことだよ」
「本当ですか?」
「本当だ」
「ん…」
「寝かせておいてあげたいけどパーティが終わる」
フワフワとしてるのにベッドに吸い込まれているような疲れと下腹部の重み。
目を開けると服を着たレイが布を絞っていた。
「拭くよ」
毛布を取って私の体を優しく拭いた後は下着とドレスを着せてくれた。髪を整え終わるとまた上着を頭からかけられた。ここは王宮、王子の婚約者が王子の側近の部屋から出てきてはまずい。
「あっ」
「大丈夫?」
「はい」
足に力が入らずよろけてしまった。
彼は私を抱き上げると会場には戻らず馬車乗り場へ向かった。
「酒で気分が悪くなったと言っておくよ」
「はい」
そのまま屋敷に帰った。
ドレスを脱いで湯浴みをした。
「何か食事はあるかしら。残っているものでいいの。パンだけでもいいわ」
「すぐにお持ちします」
疲れているのにお腹がすいた。
パンと肉と野菜の煮込みとチーズを用意してもらった。お腹が満たされるとベッドに横になった。枕を抱きしめて目を閉じた。
体を重ねるということはこれほど変わるものなのだろうか。彼は敬語はやめて、する前より躊躇いなく触れ熱のこもった眼差しを向けていた。
私もおかしい。する前はあんなに恥ずかしかったのに、体を拭いてもらっても然程恥ずかしくはなかった。強烈な異物感だったはずなのに終わって私のナカから出ていってしまうと寂しく感じた。真っ白な強い快楽を何度か刻まれ、彼も気持ちよさそうに果てていた。男女が交わりたくなる理由がわかった。初めてを彼に捧げて良かった。
どうしよう、またしたくなってきた。またレイに抱いてもらいたい。なんともはしたない体になってしまった。
これはレイだから?それとも男なら誰でもいいの?
前者でも後者でも王子と結婚すれば最悪だわ。つまり、二度と悦びを得られないか、あの王子に身体を屈服させられる屈辱を与えられるということだもの。
翌日、花とカードが届いた。
封筒の差出人には“シンシア”と書いてあったけど知らない。使用人が代わりに開けましょうかと言ったけど、昨日の今日なので何だか自分で開けないといけない予感がした。まさか目撃者からの脅迫状?
中を開けるとレイからだとわかった。身体は大丈夫かと書いてあった。
「大丈夫じゃないわ」
そして日時と住所と店の名前が書いてある。
“シンシアの羽ばたき”
住所は王都の外れだった。
4日後の昼に指定された店に向かった。看板が出ているので実在する店のようだ。少し古びた小さな屋敷を利用したオーダーメイドの服屋だった。
「いらっしゃいませ、シンシアと申します」
名乗っていいのかわからないけど
「エリン・バランです」
「お待ちしておりました。奥で採寸をいたしましょう」
店の奥の扉を開けると廊下になっていた。その先の階段を上がりドアを開けてもらうと客室なのだろうか、ベッドやソファのある部屋だった。
「エリン、待っていたよ」
「レイ」
レイが立ち上がり、私の手の甲に唇を付けた。
シンシア様とメイドはドアを閉めて立ち去った。
「ここは?」
「シンシアさんは祖母の侍女をしていた女性の娘で、嫁ぎ先で酷い目に遭っていたんだ。祖母が助け出してこの屋敷を買って住まわせて、生活費も支援していたんだけど、得意の裁縫で店を開いた。今ではその利益で生活しているんだ。屋敷の維持費は持ち主の祖母が負担するけどね。彼女には言っていないけど祖母は自分が亡くなったら屋敷と彼女が生きている間に必要な額の金を遺すための遺言書を用意している」
コンコンコンコン
メイドがノックして入室し、お茶を注ぐと退室した。
「大切な侍女だったんですね」
「祖母がまだ小さい母を連れて馬車に乗っていたときに盗賊に遭遇してね。その侍女が身を挺して2人を守ったんだ。侍女は顔や手や肩や胸に切り傷を負ってしまった。それ以来、祖母は侍女というよりは専属の話し相手として側に置いて大事にしたんだ。負担のない仕事を少しさせて後は屋敷の庭の散歩とお茶の時間に付き合わせた。
もちろん慰労金を出して引退させることも考えたみたいだけど、顔に傷があるので今度は祖母が守りたいと思ったんだろう。縁あって私兵と恋に落ちて結婚しシンシアさんが生まれたんだ」
「そうだったのですね」
「ここを私とエリンの逢瀬に使わせてくれるというんだ。嫌だった?」
「いいえ。あの夜屋敷に戻ってすぐにレイが恋しくなりました」
「エリン……」
カーテンを閉めるとキスをしながら服を脱がしていくレイは意地悪な笑みを浮かべた。
「今日は脱がせやすい服にしてくれたんだね」
「っ!!」
カーッと顔が熱くなった。確かにそのつもりでこの服を選んだ。あからさまだったわ。
「カーテン開けていい?」
「もう!」
「少しだけ」
彼がカーテンを少し開けている間に毛布に包まり隠れた。
「エリン」
丁寧に力強く毛布を剥がして私の顔を見た。
「くっ、可愛いな」
「っ!!」
「すごく可愛い」
両手で頬を挟まれキスをして、毛布を完全に剥ぎ取られて下着を脱がされた。
「もう濡れてるんだね」
下着が湿ってしまったらしくレイがまた意地悪そうに微笑む。
「っ!」
恥ずかしさに涙が出てきた。
「ごめんごめん、嬉しいんだ。泣かないで」
「……」
「だって繋がりたいのに気持ち良くなってもらえなかったら義理で相手をしてくれてるってことになる。ここに来てくれたことも、脱がせやすい服を着てきてくれたことも、すでに濡れてくれていることもエリンが私との交わりを気に入ってくれた証拠だ。男にとって嬉しいことだよ」
「本当ですか?」
「本当だ」
1,159
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました
Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。
「彼から恋文をもらっていますの」。
二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに?
真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。
そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。
※小説家になろう様にも投稿しています
婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました
ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」
大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。
けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。
王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。
婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。
だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。
皇帝の命令で、側室となった私の運命
ぱんだ
恋愛
フリード皇太子との密会の後、去り行くアイラ令嬢をアーノルド皇帝陛下が一目見て見初められた。そして、その日のうちに側室として召し上げられた。フリード皇太子とアイラ公爵令嬢は幼馴染で婚約をしている。
自分の婚約者を取られたフリードは、アーノルドに抗議をした。
「父上には数多くの側室がいるのに、息子の婚約者にまで手を出すつもりですか!」
「美しいアイラが気に入った。息子でも渡したくない。我が皇帝である限り、何もかもは我のものだ!」
その言葉に、フリードは言葉を失った。立ち尽くし、その無慈悲さに心を打ちひしがれた。
魔法、ファンタジー、異世界要素もあるかもしれません。
あなたの言うことが、すべて正しかったです
Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」
名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。
絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。
そして、運命の五年後。
リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。
*小説家になろうでも投稿中です
旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました
睡蓮
恋愛
ドレッド第一王子と婚約者の関係にあったサテラ。しかし彼女はある日、ドレッドが自分の家出を望んでいる事を知ってしまう。サテラはそれを叶える形で、静かに屋敷を去って家出をしてしまう…。ドレッドは最初こそその状況に喜ぶのだったが、サテラの事を可愛がっていた国王の逆鱗に触れるところとなり、急いでサテラを呼び戻すべく行動するのであったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる