エロゲーのモブ(♂)に転生した～スパダリたちにエロかわいいと熱愛されてます(泣)～

1 幼年期の終わり

1ー1 目覚め

　1ー1　目覚め 
　
　　俺がこの世界が前世で嗜んだことのあるエロゲーの世界だということを思い出したのは、５歳の頃のことだった。
　母が亡くなり父であるフランシア伯爵が後妻である義母と結婚したときに連れてきた妹であるリリーを屋敷の裏にある古井戸に落とそうとしていた俺は、思わぬ妹の抵抗にあって逆に足を踏み外して井戸に落ちてしまったのだ。
　初めて感じた死の恐怖に俺は、パニックになっていた。
　そして。
　脳裏をよぎる走馬灯。
　なぜか、その中には、俺が見たことも聞いたこともないような記憶が混じっていて。
　そうだ。
　俺は、意識を失う前に悟ったのだ。
　ここは、俺の世界じゃない、と。

　俺は、カナエ・フォン・フランシア。
　前世での名前は、覚えていない。
　驚くほどに前世のことは、覚えていないにも関わらず、この世界が俺の世界でないことだけは理解できた。
　この世界は、たぶん、俺や俺の学校の友人たちがプレイしていたスマホゲームの世界だ。
　スマホゲームにもいろいろあったが、この『ブリリアント・リリー』は、１８禁の恋愛シュミレーションゲームで当時、絵がきれいだと話題になったものだった。
　特に主人公のリリーがものすごいエロかわいくて人気があったんだ。
　主人公のエロいシーン見たさに俺は、何度も繰り返しプレイしたものだった。
　そんな夜のおかず的な世界に俺は、転生してしまったのか？
　
　「・・リリー・・」
　俺は、うっすらと目を開いた。
　ぽたぽたと冷たい水滴が顔を濡らしてしるのを感じて。
　目の前には、はちみつ色の美しい金髪に澄んだ緑の瞳をした美少女がいた。
　「お、にい、様・・」
　そこには、俺が何度も夜のおかずにしていた美少女のまだ幼かった頃の姿があった。
　ほんとなら自分が井戸に落とされていただろうというのにもかかわらず、俺を心配して泣きじゃくっている妹の頭を俺は、そっと手を伸ばして撫でる。
　「大丈夫。俺、生きてる、から」
　そう。
　生きてる。
　俺は、妹のゆるふわな柔らかい髪を撫でながらにこり、と微笑んだ。
　けど。
　なぜか、涙が溢れて。
　俺と妹は、2人でわんわん、泣いてしまった。