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7 愛する魔王たち
7-4 森の記憶
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7ー4 森の記憶
俺は、 イェイガーの柄を両手で掴み、ソロリソロリと歩いていった。
「こんなところに、美味しそうな人間がいるぞ!」
どこからか声が聞こえてきた。
「魔王様を討伐しに来たのか?」
「あんな、ヘッピリ腰で?」
俺のことをバカにする笑い声が辺りに響く。
「それより、早く捕まえて、僕たちで食べちゃおうよ!」
はい?
俺は、ぞわりと背筋に冷たいものが流れていた。
こいつら、俺を食う気なのか?
「お、俺は、食べても美味しくないからな!」
俺は、精霊たちに聞こえるように大声を出した。
「肉は、固いし、不味い上に腹を壊すからな!」
「「ええっ?」」
精霊たちの間に動揺が広がっていくのがわかった。
「こいつ、僕たちの声が聞こえてるのか?」
「もしかして、御子なのか?」
「だとしたら、魔王様の言っていた人なのかな?」
はい?
俺は、訊ねた。
「魔王は、俺のことを知ってるのか?」
一瞬、ざわめきが静かになった。
次の瞬間、森の木々がぽぅっと明るい光を放ったかと思うと、俺の目の前に何人もの少年たちが姿を現した。
「「御子様?」」
「魔王様があなたのことをお待ちです」
少年たちは、俺の回りをぐるりと囲んでひざまづいた。
「ご案内します」
少年たちの中の一際美しい暗い灰色の髪を腰まで伸ばしている白い服を着た少年が俺の前に進み出ると俺についてくるように、と手招きした。
「魔王様は、ここでずっとあなたがおいでになるのを待っておられたのです」
「俺が来るのを?」
俺がきくと、少年が応じた。
「そうです。御子よ。いや、セイ様」
「俺の名前を?」
俺は、この世界に来てからまだ誰にもその名を告げてはいなかった。
「なんで?」
「この森の記憶に残っているのです」
少年は、語った。
「あなたがいつか、ここを訪れ、魔王様を殺すであろう記憶が」
マジですか?
俺は、ごくりと息を飲んだ。
俺が本当に魔王を?
俺たちが進むと、森の木々が独りでに開いていき、道ができていった。
木々の作った道を、俺たちは、黙って歩いていった。
俺は、 イェイガーの柄を両手で掴み、ソロリソロリと歩いていった。
「こんなところに、美味しそうな人間がいるぞ!」
どこからか声が聞こえてきた。
「魔王様を討伐しに来たのか?」
「あんな、ヘッピリ腰で?」
俺のことをバカにする笑い声が辺りに響く。
「それより、早く捕まえて、僕たちで食べちゃおうよ!」
はい?
俺は、ぞわりと背筋に冷たいものが流れていた。
こいつら、俺を食う気なのか?
「お、俺は、食べても美味しくないからな!」
俺は、精霊たちに聞こえるように大声を出した。
「肉は、固いし、不味い上に腹を壊すからな!」
「「ええっ?」」
精霊たちの間に動揺が広がっていくのがわかった。
「こいつ、僕たちの声が聞こえてるのか?」
「もしかして、御子なのか?」
「だとしたら、魔王様の言っていた人なのかな?」
はい?
俺は、訊ねた。
「魔王は、俺のことを知ってるのか?」
一瞬、ざわめきが静かになった。
次の瞬間、森の木々がぽぅっと明るい光を放ったかと思うと、俺の目の前に何人もの少年たちが姿を現した。
「「御子様?」」
「魔王様があなたのことをお待ちです」
少年たちは、俺の回りをぐるりと囲んでひざまづいた。
「ご案内します」
少年たちの中の一際美しい暗い灰色の髪を腰まで伸ばしている白い服を着た少年が俺の前に進み出ると俺についてくるように、と手招きした。
「魔王様は、ここでずっとあなたがおいでになるのを待っておられたのです」
「俺が来るのを?」
俺がきくと、少年が応じた。
「そうです。御子よ。いや、セイ様」
「俺の名前を?」
俺は、この世界に来てからまだ誰にもその名を告げてはいなかった。
「なんで?」
「この森の記憶に残っているのです」
少年は、語った。
「あなたがいつか、ここを訪れ、魔王様を殺すであろう記憶が」
マジですか?
俺は、ごくりと息を飲んだ。
俺が本当に魔王を?
俺たちが進むと、森の木々が独りでに開いていき、道ができていった。
木々の作った道を、俺たちは、黙って歩いていった。
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