21 / 182
第1章
第二十一話 宴会とその後に
しおりを挟む
悪魔の塔をぶっ潰したその日の晩は、レイラの屋敷で豪華な食事が用意され宴会となった。宴会場は絨毯の上に低いテーブルをおいてのお座敷スタイルだ。こんな部屋まであるなんて、本当に豪華な屋敷だと感心してしまう。
準備が整い、レイラが立ち上がり、乾杯の挨拶を始める。
「それでは、アキトによる悪魔の塔の攻略成功と私の延命を祝っていただきまして……かんぱーい!!」
面白い挨拶だな。
今回の悪魔の塔攻略は思い付きでやってみたものの、うまくいって、レイラを救うことができて本当によかった。
ルーミエが葡萄酒をグラスに注ぎつつ「今回もお疲れ様、アキト」と、労をねぎらってくれた。
「あんなふうに魔法使う人初めて見たわ。あの青い炎はどうやって会得したの?」
「えーと……エスタの時に魔導士がいたんだけど、そいつの出す炎が俺の炎よりも火力が強くてね。もっともっと強い炎がほしいって思いながら、強い炎をイメージしたら、その思いにこたえてくれて、青い炎が出てきたって感じかな」
「聞いていると簡単にやってのけたように聞こえるのだけれど、怖くないの?」
「恐怖ははいつも感じているよ、でも倒したいって気持ちの方が強いからそれでなんとか戦えているのかもしれないな。もっと修行が必要と思っているよ」
ルーミエと会話をしていたら、突然後ろからユウキ抱きつかれる。
「まあまあ、そんな堅苦しい戦いの話なんかしてないで、ユウキとお話ししようよ~」
「ちょっとユウキ、もうそんなに酔っぱらって……ゴクゴクゴク……」
対抗しているのかルーミエもグラスを一気に飲み干した。
「ルーミエ!そんなに一気に飲まなくても……」
「いいえ、ユウキにもレイラにも負けてられないわ!」
あれ、レイラに対して”様”をつけてないよな?
ユウキは俺にくっついたまま話を続ける。
「お疲れのアキトにね、何ができるかな~って考えたんだけど、肩もみ?全身マッサージ?お風呂でのお背中流し?あたしができるのってそれくらいしかなくてぇ~。だからね、今度全部してあげるけど、今日は何をしてほしい?」
酔っ払っているとはいえ、一緒に風呂に入ってお背中流しだなんて……。若い男女二人が風呂に入って、背中流しだけで済むはずなんてないだろう……。今度全部してくる!?っていつだ?
妄想が止まらない。ってなんだこの唐突な質問は!……ん?他の三人がこちらを見ている。……何か言わなければならないのか?
「……じゃあ、肩もみで」と、紳士的な回答をしたチキンな俺だった。もっと攻め込むべきか、いや、みんなの視線が怖い。
「はい、肩もみ!いただきました~」
それでも、ユウキは嬉しそうに肩もみを始める。もみもみもみもみもみもみもみ……。
「あ、ありがとうユウキ。気持ちいいよ」
「えへへ、褒められた~~」と、喜び俺の首におぶさり、離れないので、背中に押し付けられる柔らかい感触を堪能する。
そこにレイラが料理を持ってきて俺の目の前に座る。さっきまで服を着ていたのにいつの間にか脱いでる。屋敷の中限定のビキニ姿になっている。これはいい目の保養だ。
そして料理をスプーンにすくって、俺の口元まで運んでくれる。
「ふぁい、アキト。あーん、ちてください……」
なぜその口調!?
「あーんでちゅよ、アキトたん」
ちょっと困り顔になったので、慌てて大きく口を開ける。
「あーん……もぐもぐもぐ、ん!?うまい!」
「やった!」
満面の笑みで、別の料理を口に運んでくれる。
「あーん。これもとてもおいしいよ」
「ふふふ、これ私が作ったんだよ。いいお嫁さんになれるかな?」
「な、なれるんじゃないかな。こんなにおいしい料理作ってもらえるなら、結婚相手も嬉しいだろうな~」
「うふふふふ、嬉しい。ありがとう。アキト」
顔を赤らめて喜んでいる。
ルーミエが葡萄酒の瓶をドンと床に置く。
「アキトはどんな女の子が好きなの?例えばこの4人でいえばだれが好みのタイプに近いのかしら?」
ルーミエさん目が座ってますよ。……おこなの?
「えーと、ノイリは素直でいい子だし、ユウキは人懐こくて、妹みたいな感じだな。ルーミエはしっかりしていて頼りがいがあって、レイラは料理上手だよな……」
みんな見た目も性格もかわいくて、スタイルもいい。みんな好みだと言いたいがグッと堪える。
「それはつまり誰が好みなの?」
「言わなきゃダメか?」
「言ってください」
うーん、どうしたらいいのかな?
「はいはい、そこまれれふよ…」
ノイリが横に来てぺたんと座り込んだ。
「アキトしゃんはね。みんなのアキトしゃんなんだから……むにゃむにゃ………」
眠いのかノイリは俺の足を枕に眠ってしまった。
こうやって女の子たちがすり寄ってきて、ちやほやされる宴会は楽しいし嬉しい。
行ったことないけど、ひょっとしてキャバクラってこんな感じなのかな?元の世界の男性たちがハマるのもうなずける。
こうしてボディタッチ多めで俺を取り合うような宴会が夜遅くまで続いた。
□
飲みすぎでいつの間にか誰かの部屋のベッドで寝てしまうのは毎回のこと……。誰かが俺の肩をゆすって起こしている。
レイラだった。
「しぃ~、静かに」
そう言って人差し指を口に当てる。
「アキト、連れて行ってほしいところがあるの」
屋敷の外に出て、まだ日の昇らない真っ暗な闇の中、箱魔法を展開するようにお願いされる。
「わっ、寒いなー」
宴会のときのビキニの格好で出てきてしまったようで、寒いのは当然だ。
「その格好じゃ寒いだろ。ほらこのマント使って」
「わあ、やさしいなアキト。ありがとう……。それじゃあカムラドネ山頂までお願いね」
「いいね、日の出を見に行くんだな、少し飛ばすぞ」
箱魔法に乗り込み飛び立った
「いい能力だね」
「……この箱魔法のことか?」
「うん。箱魔法はとても便利だね、それに炎魔法はすべてを焼き払う力を持っている。アキトは勇者様みたいだね」
「そう言われればそうかもしれない。それで、この世界には勇者は存在するの?」
「いないよ。おとぎ話の中のだけだよ。人々を悪の手から守る、よくある話だよ」
「どこの国でも同じなんだな」
「でも私にとっては勇者様だよ……」と、レイラは呟いた。
空が白んでくる中、頂上に降り立つ。
山頂からカムラドネの街が一望できる。外敵から守るため壁で囲まれた街は発展していてかなり大きい。
冒険者たちが多く滞在していて街は裕福な方なのだろうか、来たばかりだが活気があることは感じられた。しかし悪魔の塔が無くなったら冒険者がいなくなってしまうかな……。
二人で並んで、日が昇る方角を見ている。雲ひとつない空、地平線から大きな太陽が昇ってくる。
とても美しい。そう言えば前世を含めて、今まで日の出を見るために山に登ったことなんてなかったな。
じんわりと日の光の暖かさを感じ始める。
「アキト、本当にありがとう」
日の出の美しさに見とれていたので、その言葉を聞いてレイラが近くにいることを感じ、横を向いた瞬間、唇と唇が重なった。
「……私からのお礼の気持ち」
「……」
レイラと正面に向き合う……。
「悪魔の塔が無くなったことで私は生き延びることができたわ。この命はアキトに救ってもらった命だから、私のすべてはアキトのものだよ……。ずっとずっとアキトと一緒にいたいの。……だからアキト、私と結婚してほしい」
お付き合いする段階をすっ飛ばして結婚というゴールに辿り着いてしまう、思いがけない告白で言葉に詰まるが、素直に思ったことを伝える。
「……ありがとう。その気持ち嬉しいよ」
彼女の腕が俺の首に回されて、もう一度唇を交す。今度は長く……舌を絡める……気持ち良く、夢中になってしまう。
「これからまた旅をつづけるんでしょ?」
しばらくしたあと、これからのことを聞かれる。
「ルーミエとユウキの国に行くことを約束はしたけれど、いつになるかわからないんだ」
レイラとたった一日の間だが、接してみて彼女の性格や見た目は俺のストライクゾーンのど真ん中で、これ以上ない女性だと思っている。
そんな女性から結婚を申し込まれているのに待たせてしまうことに意味はあるのだろうか……。
こっちの世界に来てからまだ二週間ほどしかたってないのに展開が急だ。これまで結婚なんて意識したことないしな。
日本は安全な国で、命の危険にさらされることもあまり無い。しかしこの世界はいつ死んでしまうかわからない危険が一杯だ。
そんな世界だと婚期は早まるのだろうか……。ルーミエとユウキの国の件もいつ解決できるかわからない。そうなるとレイラのことが俺はいつも気になってしまう。それにレイラもいつも俺のことを心配してくれるに違いない。
——考えて答えがはっきりしてきた。お互い心配しあうのであれば結婚という約束で結びつけておいたほうがいいかもな。それに俺はレイラが本当に好きだ。
結婚してもいい。
俺が思案している間「……約束だもんね。ルーちゃんとユウちゃんのことがひと段落したら……ん!」と、ずっとしゃべり続けていたレイラにキスをする。
そして落ち着いて告白する。
「レイラ。結婚しよう。俺は君が好きだ!」
「ぇえええええ~~~。どうして、どうして?」ってすごく驚かれた。
「会って一日しかたってないけど、結婚してもいいくらい好きだから?」
「疑問形?ふふふ。でも嬉しいよ。ぃいやったぁああああ~~~!よろしくね、アキト」
そう言いながら、キスしたり強く抱きしめたりを何度も繰り返すレイラ。
「こちらこそ、よろしく」
「ハイ、これは誓いの証」
そう言ってお揃いの指輪を出してきた。俺がレイラの左薬指につけて、もう片方をレイラにつけてもらった。
少し大きいなと思い、大きさを調整しようと魔力を通す。それと同時に指輪から大声で呼びかけがあった。
「師匠ー!!!どこにいるんですかー!!アキトさんもご一緒ですかー?」
「ええ!?何これ?」
「ふふふ……、遠くにいてもお話ができる指輪だよ。はぐれた時も安心でしょ。地脈を個人的に流用しているから、一般には販売されてない、とても高価な指輪なんだよ」
指輪に聞こえないように、俺は耳元でささやく。
「婚約指輪かと思ったよ」
「もちろん!その意味も込めているよ。ふふふ」
「ノイリ、アキトも一緒だよ。もう少ししたら帰るから朝食の用意をお願いしておいてね」
「はーい、わかりました」
「さあ、任務完了したし帰ろうか、アキト!」
「師匠?任務ってまさか……?」
「ああ~!!何でもないよ、ノイリ!!」と、言って慌てて指輪を外していた。
準備が整い、レイラが立ち上がり、乾杯の挨拶を始める。
「それでは、アキトによる悪魔の塔の攻略成功と私の延命を祝っていただきまして……かんぱーい!!」
面白い挨拶だな。
今回の悪魔の塔攻略は思い付きでやってみたものの、うまくいって、レイラを救うことができて本当によかった。
ルーミエが葡萄酒をグラスに注ぎつつ「今回もお疲れ様、アキト」と、労をねぎらってくれた。
「あんなふうに魔法使う人初めて見たわ。あの青い炎はどうやって会得したの?」
「えーと……エスタの時に魔導士がいたんだけど、そいつの出す炎が俺の炎よりも火力が強くてね。もっともっと強い炎がほしいって思いながら、強い炎をイメージしたら、その思いにこたえてくれて、青い炎が出てきたって感じかな」
「聞いていると簡単にやってのけたように聞こえるのだけれど、怖くないの?」
「恐怖ははいつも感じているよ、でも倒したいって気持ちの方が強いからそれでなんとか戦えているのかもしれないな。もっと修行が必要と思っているよ」
ルーミエと会話をしていたら、突然後ろからユウキ抱きつかれる。
「まあまあ、そんな堅苦しい戦いの話なんかしてないで、ユウキとお話ししようよ~」
「ちょっとユウキ、もうそんなに酔っぱらって……ゴクゴクゴク……」
対抗しているのかルーミエもグラスを一気に飲み干した。
「ルーミエ!そんなに一気に飲まなくても……」
「いいえ、ユウキにもレイラにも負けてられないわ!」
あれ、レイラに対して”様”をつけてないよな?
ユウキは俺にくっついたまま話を続ける。
「お疲れのアキトにね、何ができるかな~って考えたんだけど、肩もみ?全身マッサージ?お風呂でのお背中流し?あたしができるのってそれくらいしかなくてぇ~。だからね、今度全部してあげるけど、今日は何をしてほしい?」
酔っ払っているとはいえ、一緒に風呂に入ってお背中流しだなんて……。若い男女二人が風呂に入って、背中流しだけで済むはずなんてないだろう……。今度全部してくる!?っていつだ?
妄想が止まらない。ってなんだこの唐突な質問は!……ん?他の三人がこちらを見ている。……何か言わなければならないのか?
「……じゃあ、肩もみで」と、紳士的な回答をしたチキンな俺だった。もっと攻め込むべきか、いや、みんなの視線が怖い。
「はい、肩もみ!いただきました~」
それでも、ユウキは嬉しそうに肩もみを始める。もみもみもみもみもみもみもみ……。
「あ、ありがとうユウキ。気持ちいいよ」
「えへへ、褒められた~~」と、喜び俺の首におぶさり、離れないので、背中に押し付けられる柔らかい感触を堪能する。
そこにレイラが料理を持ってきて俺の目の前に座る。さっきまで服を着ていたのにいつの間にか脱いでる。屋敷の中限定のビキニ姿になっている。これはいい目の保養だ。
そして料理をスプーンにすくって、俺の口元まで運んでくれる。
「ふぁい、アキト。あーん、ちてください……」
なぜその口調!?
「あーんでちゅよ、アキトたん」
ちょっと困り顔になったので、慌てて大きく口を開ける。
「あーん……もぐもぐもぐ、ん!?うまい!」
「やった!」
満面の笑みで、別の料理を口に運んでくれる。
「あーん。これもとてもおいしいよ」
「ふふふ、これ私が作ったんだよ。いいお嫁さんになれるかな?」
「な、なれるんじゃないかな。こんなにおいしい料理作ってもらえるなら、結婚相手も嬉しいだろうな~」
「うふふふふ、嬉しい。ありがとう。アキト」
顔を赤らめて喜んでいる。
ルーミエが葡萄酒の瓶をドンと床に置く。
「アキトはどんな女の子が好きなの?例えばこの4人でいえばだれが好みのタイプに近いのかしら?」
ルーミエさん目が座ってますよ。……おこなの?
「えーと、ノイリは素直でいい子だし、ユウキは人懐こくて、妹みたいな感じだな。ルーミエはしっかりしていて頼りがいがあって、レイラは料理上手だよな……」
みんな見た目も性格もかわいくて、スタイルもいい。みんな好みだと言いたいがグッと堪える。
「それはつまり誰が好みなの?」
「言わなきゃダメか?」
「言ってください」
うーん、どうしたらいいのかな?
「はいはい、そこまれれふよ…」
ノイリが横に来てぺたんと座り込んだ。
「アキトしゃんはね。みんなのアキトしゃんなんだから……むにゃむにゃ………」
眠いのかノイリは俺の足を枕に眠ってしまった。
こうやって女の子たちがすり寄ってきて、ちやほやされる宴会は楽しいし嬉しい。
行ったことないけど、ひょっとしてキャバクラってこんな感じなのかな?元の世界の男性たちがハマるのもうなずける。
こうしてボディタッチ多めで俺を取り合うような宴会が夜遅くまで続いた。
□
飲みすぎでいつの間にか誰かの部屋のベッドで寝てしまうのは毎回のこと……。誰かが俺の肩をゆすって起こしている。
レイラだった。
「しぃ~、静かに」
そう言って人差し指を口に当てる。
「アキト、連れて行ってほしいところがあるの」
屋敷の外に出て、まだ日の昇らない真っ暗な闇の中、箱魔法を展開するようにお願いされる。
「わっ、寒いなー」
宴会のときのビキニの格好で出てきてしまったようで、寒いのは当然だ。
「その格好じゃ寒いだろ。ほらこのマント使って」
「わあ、やさしいなアキト。ありがとう……。それじゃあカムラドネ山頂までお願いね」
「いいね、日の出を見に行くんだな、少し飛ばすぞ」
箱魔法に乗り込み飛び立った
「いい能力だね」
「……この箱魔法のことか?」
「うん。箱魔法はとても便利だね、それに炎魔法はすべてを焼き払う力を持っている。アキトは勇者様みたいだね」
「そう言われればそうかもしれない。それで、この世界には勇者は存在するの?」
「いないよ。おとぎ話の中のだけだよ。人々を悪の手から守る、よくある話だよ」
「どこの国でも同じなんだな」
「でも私にとっては勇者様だよ……」と、レイラは呟いた。
空が白んでくる中、頂上に降り立つ。
山頂からカムラドネの街が一望できる。外敵から守るため壁で囲まれた街は発展していてかなり大きい。
冒険者たちが多く滞在していて街は裕福な方なのだろうか、来たばかりだが活気があることは感じられた。しかし悪魔の塔が無くなったら冒険者がいなくなってしまうかな……。
二人で並んで、日が昇る方角を見ている。雲ひとつない空、地平線から大きな太陽が昇ってくる。
とても美しい。そう言えば前世を含めて、今まで日の出を見るために山に登ったことなんてなかったな。
じんわりと日の光の暖かさを感じ始める。
「アキト、本当にありがとう」
日の出の美しさに見とれていたので、その言葉を聞いてレイラが近くにいることを感じ、横を向いた瞬間、唇と唇が重なった。
「……私からのお礼の気持ち」
「……」
レイラと正面に向き合う……。
「悪魔の塔が無くなったことで私は生き延びることができたわ。この命はアキトに救ってもらった命だから、私のすべてはアキトのものだよ……。ずっとずっとアキトと一緒にいたいの。……だからアキト、私と結婚してほしい」
お付き合いする段階をすっ飛ばして結婚というゴールに辿り着いてしまう、思いがけない告白で言葉に詰まるが、素直に思ったことを伝える。
「……ありがとう。その気持ち嬉しいよ」
彼女の腕が俺の首に回されて、もう一度唇を交す。今度は長く……舌を絡める……気持ち良く、夢中になってしまう。
「これからまた旅をつづけるんでしょ?」
しばらくしたあと、これからのことを聞かれる。
「ルーミエとユウキの国に行くことを約束はしたけれど、いつになるかわからないんだ」
レイラとたった一日の間だが、接してみて彼女の性格や見た目は俺のストライクゾーンのど真ん中で、これ以上ない女性だと思っている。
そんな女性から結婚を申し込まれているのに待たせてしまうことに意味はあるのだろうか……。
こっちの世界に来てからまだ二週間ほどしかたってないのに展開が急だ。これまで結婚なんて意識したことないしな。
日本は安全な国で、命の危険にさらされることもあまり無い。しかしこの世界はいつ死んでしまうかわからない危険が一杯だ。
そんな世界だと婚期は早まるのだろうか……。ルーミエとユウキの国の件もいつ解決できるかわからない。そうなるとレイラのことが俺はいつも気になってしまう。それにレイラもいつも俺のことを心配してくれるに違いない。
——考えて答えがはっきりしてきた。お互い心配しあうのであれば結婚という約束で結びつけておいたほうがいいかもな。それに俺はレイラが本当に好きだ。
結婚してもいい。
俺が思案している間「……約束だもんね。ルーちゃんとユウちゃんのことがひと段落したら……ん!」と、ずっとしゃべり続けていたレイラにキスをする。
そして落ち着いて告白する。
「レイラ。結婚しよう。俺は君が好きだ!」
「ぇえええええ~~~。どうして、どうして?」ってすごく驚かれた。
「会って一日しかたってないけど、結婚してもいいくらい好きだから?」
「疑問形?ふふふ。でも嬉しいよ。ぃいやったぁああああ~~~!よろしくね、アキト」
そう言いながら、キスしたり強く抱きしめたりを何度も繰り返すレイラ。
「こちらこそ、よろしく」
「ハイ、これは誓いの証」
そう言ってお揃いの指輪を出してきた。俺がレイラの左薬指につけて、もう片方をレイラにつけてもらった。
少し大きいなと思い、大きさを調整しようと魔力を通す。それと同時に指輪から大声で呼びかけがあった。
「師匠ー!!!どこにいるんですかー!!アキトさんもご一緒ですかー?」
「ええ!?何これ?」
「ふふふ……、遠くにいてもお話ができる指輪だよ。はぐれた時も安心でしょ。地脈を個人的に流用しているから、一般には販売されてない、とても高価な指輪なんだよ」
指輪に聞こえないように、俺は耳元でささやく。
「婚約指輪かと思ったよ」
「もちろん!その意味も込めているよ。ふふふ」
「ノイリ、アキトも一緒だよ。もう少ししたら帰るから朝食の用意をお願いしておいてね」
「はーい、わかりました」
「さあ、任務完了したし帰ろうか、アキト!」
「師匠?任務ってまさか……?」
「ああ~!!何でもないよ、ノイリ!!」と、言って慌てて指輪を外していた。
118
あなたにおすすめの小説
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件
おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。
最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する!
しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる