チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第1章

第九十六話 奪還準備

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 自宅の近所にある宰相ゾンヌフの屋敷の前にきた。

「ゾンヌフくーん、あーそーぼー!」なんてことを屋敷の前で大声出して呼び出すと、警備兵に怒られるのは目に見えているので、極私的絶対王国(マイキングダム)で待っているゾンヌフのいる部屋に俺の声を直接伝える。

「こらこらこらこら……」と、嬉しそうに屋敷から飛び出してきた。

「よう、待たせたな」

 ゾンヌフは既に準備を済ませているようで、屋敷の者に出立を告げる。

「どうやって行くんだ?」

 歩いて三十秒の自宅の庭へ案内する。

「ここからいくんだよ」

「ほぉ?」

 極私的絶対王国(マイキングダム)を展開。ゾンヌフには強制的に目を閉じておいてもらい異世界転移魔法陣は見せない。

 誘導して箱の中に入ってもらう。カラル、ルーミエ、ユウキも続いて中に入る。宰相を拉致しているっぽいが大丈夫だろう。

「お、おいアキト目を開けることができないぞ」

「心配するな、すぐに終わる。そこに座っていてくれ」

 異世界転移魔法陣を展開。異世界を経由してキンガーニ上空に到着する。

「よし、目を開けていいぞ」

「急に目があけられなくなるって、まったくお前の魔法は……わぁぁ!!」

 眼下に広がる広大な景色と上空にいることにとても驚いている。

「ゾンヌフ、ようこそ、エソルタ島へ。ここはイメノア王国キンガーニ上空だ」

「はぁ!?ここがエソルタ島?一瞬でここに来られるのか……だとしたらアキト、お前とんでもないな!」

「ああ、ありがとう。ほめ言葉として受け取っておくよ」

 ルーミエとユウキを見ると立ち尽くし、泣いているのだろうか。しばらく、そっとしておこう。

 俺の手持ちの中のアダマンタイトの剣を四本、オリハルコンの剣四本、ミスリルの剣四本を取り出し、ルーミエとユウキ用に並べる。ついでに槍や斧も並べてみる。

 ルーミエは二刀流で、ユウキは大き目の得物を使いたいって言っていたな。

 ゲームで見たことのあるような大剣を出す。重さはおよそ三十キログラムくらいだろう。俺は軽々と振り回すことができるが、ユウキはどうかな?

 それを眺めていたゾンヌフは呟いた。

「なかなか見事な武器であるな」

「まあな、王女たちが使うものだからな」

「え!?王女が戦うのか?」

「ああ、彼女たちの願いだ」

「そんな……」

 ルーミエが振り返る。

「ありがとう、アキト。ついに帰ってこられたわ」

 ユウキもいつもの笑顔になっている。

「さあいっちょ、やってやりましょうか!」

 キンガーニの町の中を確認すると、先日救出した人々が平穏に過ごしているようだ。あと少しはこのままの状態で頑張ってもらおう。

 地図上で次の攻略ポイントを決める。キンガーニ付近の街ココナルというなんだかかわいらしい名前の街を攻略することにし、箱魔法での移動でココナルに三十分ほどで到着する。

 戦闘準備に入る。ルーミエはロングソードを二本選び、ユウキは大剣と斧を手に取った。そしてカラルは魂宿剣を取り出す。

 領域(テリトリー)を展開して街の中を確認したがここには生き残りの人はいない。

 モンスターの数はおよそ三千体。領域(テリトリー)を解除し、簡単に説明をする。

「五人全員で街に入る。カラル、ルーミエ、ユウキは離れず、グループで行動してモンスターを見つけ次第、殲滅だ。俺はゾンヌフを守りながらバックアップに回るから、三人で思う存分やってくれ」

「「「は~い」」」

 なんだかゆる~い返事だったが、表情は真剣だ。

 全員に継続回復魔法をかける。

「アキト、嫁さんを前に出して、お前は戦わないのか?」

「まあまあ、見ていてくれよ」

 ゾンヌフも緊張感を感じ取ったのか、細かいことを何も言わなくなった。

「カラル、こっちに来て」

「はい」

 カラルを呼び寄せる。手を繋ぎながら極私的絶対王国(マイキングダム)を展開して、街全体を覆う。カラルと接触しながら極私的絶対王国(マイキングダム)を発動すると、その内部はダンジョン化することが可能だ。

 カラルは何も言わなくても意図を理解できていたが、それを見ていたルーミエが眉毛をハの字にした困り顔でずいっと迫ってくる。どうやら嫉妬しているようだ。

「なんですか、それは?」

「攻略前のおまじないみたいなものだ」

 ゾンヌフの前ではダンジョン化のことを明かすのも、時期尚早なのではぐらかす。

「ルーミエ……ご武運を」

 そのまま引き寄せて力強く抱きしめる。ユウキ、カラルの順でそれぞれの無事を祈る。俺は戦術管制画面(タクティクスコンソール)を展開して、三人の様子と街のモンスター一覧、ユニット位置情報を表示させる。

「さあ、いこう」

 街の城壁にある入り口前に着地すると同時に女性陣は駆け出し、付近をうろついているモンスターたちに攻撃を仕掛けていった。
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