チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

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第2章

第百四十八話 ドルトミアの生活風景

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 別の場所に案内され、部屋に入ると直径五十センチはある大きな水晶玉があり、その本体の半分近くは台座の中に埋まっていて転がり落ちないようになっている。

「こちらで魔力を流し込んでもらって、適性を確認します」

「わぁ~随分大きい水晶玉ですね。私はこの方法じゃなかったです」

 水晶玉を見てノイリが驚いている。

「ええ、これだけ大きいものを準備できるところはそうそうありませんよ。これなら微細な魔力も感知するので基礎訓練を省くことができます」

「ということは、ここで検知できなければ、魔法の素質がないということになるのか……」

「完全にと言うことではないですが、訓練して再度チャレンジと言うことになりますね」

 ルーミエもユウキもゴクリと唾をのむ。二人のステータスは……

◇ ◇ ◇
ルーミエ Lv945 HP2870/MP1679
強さ:1745 守り:1240 器用さ:1180 賢さ:1220 ボーナス:160
◇ ◇ ◇

◇ ◇ ◇
ユウキ Lv922 HP3250/MP1356
強さ:1503 守り:1106 器用さ:1050 賢さ:983 ボーナス:222
◇ ◇ ◇

 一般冒険者より随分と強い。ただし気になる点がある。俺には魔法威力、魔法耐性があるが彼女たちにはないということだ。

 まずはルーミエが水晶の前に立った。そして両手で押さえて魔力を流す。なにやら水晶玉の中で反応しているようだ。白いもやもやとしたものが浮かび上がる。

「……回復系の魔法職に向いているようですね」

「ふぅ~、よかった」と、胸をなで下ろしていた。

 続いてユウキが試すと水晶の中には小さく薄黒いものが浮かび上がる。

「うーん、何かしらこれは、何らかの素質はあります。訓練すればもう少しはっきりわかるかと思います」

 ということは属性は不明と言うことか。ひとまず二人とも素質ありということで、訓練を開始することになった。

 その場で申し込みを済ませる。受付してくれたお姉さんとは別れ、少し早いが、昼飯を社内の大きな食堂で食べることにした。おのおの好きなものを注文して、欲しいものがあればシェアしながら食べる。

 昼からはルーミエとユウキは魔法の訓練に入り、俺とノイリはドルトミアの町を散策することにしている。

「いや~、どきどきしたねぇ」

 ユウキはまだ属性が不明だが、魔法の適性があったということでほっとしている。

「回復系かぁ~。攻撃系がよかったなぁ~」と、ルーミエが残念そうに口をとがらせている。



 昼食後はルーミエとユウキとは分かれてノイリと共に商店街を散策する。

 ガラス細工アクセサリーを見たり、売っている珍しい野菜について店のおばさんに話を聞いたり、どこの海で捕れる魚だとかあちらこちらで話しかけている。

 時々スケッチブックと鉛筆を取り出しスケッチをとる。時間にして一、二分と早く特徴を捉えてとてもうまい……いや上手いっていうレベルじゃないぞ。

 街角の風景、お店の人、売り物の野菜などの静物、看板。後ろから見ていてもあっけにとられる。立ったままの状態でここまで描けるなんてもはや人間業じゃない。

 描いた物をお店の人に見せて、欲しいと言われれば、切り取って渡している。

 商店街を一通り見回り、屋台で売っている甘い飲み物を買い少し休むことにした。

「前から絵は上手だなって思ってたけど、あれだけの早さで描いているなんて思わなかったよ」

「前はそんなでもなかったのですが、アキトさんと契りを交わしてから格段に腕が上がりました」

 ”側室の寝具”のおかげか。肉体的な強化以外にも、こういう芸術的な能力にも影響するのか……。さらに彼女のボーナスポイントを器用さに振り分けておく。

「絵の練習は巫女として訓練したの?」

 遠夜見(とおよみ)の巫女は巫女としての修行はしない、最低限読み書きはできるようにならないと聞いたことがあったが、基礎的な能力として読み書きとは文字だけでなく、絵を描くことも含まれていたのか……。

「元々絵を描くことは好きで、訓練は苦ではなかったのですが、巫女になってからは好きな物を書くのではなく、頭の中に浮かび上がった風景を思い起こして正確に再現しないと、場所の特定は難しいですからね……。悲しいイメージが頭に残りますが、冷静にそして客観的に人の服装、背景にある建物、石畳の一つ一つを絵に表現するんです。あとは降りてきた言葉を正確に記録します。私たち巫女は、覚える、再現する訓練を巫女となった今も毎日続けています」

 残虐なシーンもあるだろうから精神的にも強くないとやっていられないだろうな。

「巫女はやっぱり、大切な存在だな……」

「いいえ、私たち巫女だけが大切な存在ではありません。私を支えてくれる屋敷の肩を始め、研究者の方たち、そして厄災に立ち向かう冒険者の皆さんの力が合わさって始めて巫女としての力が発揮されるのだと代々の巫女は伝えています」

 ノイリは飲み物をぐいっと飲んだ。

「……最近、綺麗な景色のイメージが伝わるときがあって、多分アキトさんが異世界転移魔法を使われたときだと思うのですが……」

 遠夜見(とおよみ)巫女はこの世界から出る、または入る時に干渉する”力”を感知することが引き金となって未来を見ているのではないかと推測していたが、俺が何度も異世界を経由して移動するたびに、ノイリに伝わっていたのか……。

「ああ、そうか俺が転移魔法陣を通るたびにイメージが伝わっちゃっているのかな?」

「はい、でも迷惑とかそういうのじゃなくて、逆に嬉しくて、いつかお礼を言わないとって思っていたので……」

「どうして?」

「今日ドルトミアに来たときに見たような街並みがみえたり、そこで暮らす人々の幸せそうな表情が見えたりと、いつも残酷なイメージがみえる私にはとても癒される瞬間なんですよ」

 スケッチブックを何枚かめくり、過去に描いた風景画を見せてくれた。

「そうか……俺の転移魔法はノイリのそんな風に伝わっていたんだね」

「ええ、それでなんだか私も一緒に旅をしている気分になっていました」

 穏やかに笑うノイリ。その後も美術館や劇場などに入って鑑賞し、ドルトミアで発生した文化に触れ楽しんだ。
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