時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

文字の大きさ
35 / 68

アイシス様と戦場に行く

しおりを挟む
アイシス様は、私が気でも触れたのではないかと思ったらしく、すぐにアイシス様のお屋敷に帰る馬車に無理やり一緒に乗せられた。
イワノフ町に行くには転移門無しでは、馬で一週間の距離だ。なので転移門のある騎士団総本部に行きたかったので、馬車の中でアイシス様に必死でお願いした。

能力のことは話せないので、私がどうして大魔獣を倒せるというのか、その根拠を信じてもらうのは絶対不可能だ。
だけど、どうしても譲れない。
頑固として考えを変えない私に、アイシス様が言った。

「いい?転移門は限られた場所にしかない、高位魔術と高位魔法で作られたもので、王都には3箇所あるの。王城と騎士団総本部、そして大神殿。どこも結界で何重にも周りを固められているから、進入するのは不可能なのよ。それにもし仮にできたとしても、あとで死刑になることは間違いないわ。万が一行ったとして、どうやって大魔獣を倒すって言うの。それでも、まだ行くというの?」

そうだ。到底無茶な話だ。仕方がない。アルには悪いけど、一週間・・時間を止めて馬でイワノフ村まで行くしかないのか・・・。すっごく地味な能力だよねえ。テレポート能力とかが良かった。んで、地味に大魔獣を倒して、これまた地味に馬で一週間かけて戻る。
うわっこれ2週間以上かかるよ。ザ・ベスト・オブ・地味作戦だよ。

あれ待てよ?結界は効かないって事が分かっているし、今時間を止めて騎士団総本部に行って転送門だけの時間を戻す。それでもって、イワノフ村に行って大魔獣倒して帰ってくればいいんじゃないの?


おおーーー。そんな簡単なことどうして思いつかなかったんだろう。やっぱり地味な作業だっていうのは、変わらない気がするけど、2週間かけて移動するよりはよっぽどましな作戦だ。

よし、そうと決まれば早速時を止めなきゃなんだけど、アイシス様の前で止めちゃうと、地味に大魔獣を倒した後に、この馬車に戻ってこなければいけない。それに今は道の途中で、ここから騎士団総本部への道順がさっぱりわからない。とにかく一旦アイシス様のお屋敷に戻ろう。

心を決めた途端。アイシス様がにたりと・・・あまりにも妖艶な笑みがいき過ぎて、メデューサにでも見いられたかのように、背中がぞくりとするような笑みを浮かべて、おっしゃった。

「わたくしなら、転移魔法を使うことができますわ」

えーーーーーー!!!!もういいのに!!!

それに転移魔法って、上級魔法だよ?ほんと一握りの人しか使えないって聞いたけど、なんで医療班のアイシス様がーーー!!!?

「あ・・私。やっぱり気が変わったんでいいです。結構です。いや、ほんと・・・」

「わたくし、魔法は本来なら学校でもトップの成績でしたの。でもそのままだと、根暗なおじ様しかいない魔法庁で働くことになるでしょう?わたくしの夢は、騎士様の玉の輿でしたので、ちょーっと成績は手を抜いて、医療班をめざしたのですわ。ですから転移魔法。わたくしならできましてよ。さあ、さっそく屋敷に帰って支度を急ぎましょう。キアヌス様たちに遅れをとってしまいますわ」

「いや、だからもう、いいですって」

いやーー。あいかわらず人の話を聞かない女王様だよね。
かなり抵抗して固辞したけど、無理やり屋敷に連れ込まれて、動きやすい服装に二人して着替えさせられる。

ん?どうしてアイシス様も???

「わたくしが行かないと、帰ろうと思っても帰れませんことよ。大丈夫、イワノフ町の住民だって思ってくれるわ。思ってくれなくても。思わせるのよ!!!」

あいもかわらず女王様発言です。
私たちは侍女から借りた、普通の庶民風の女性の格好に着替えた。あれれ?私また女装中?
やる気満々の女王様に異議を唱えることは不可能だと知っている私は、沈黙することに徹した。

マントを羽織り、顔を隠す。
計画とは少し違うけど、イワノフ町に行くことができればそれでいい。そこで大魔獣を倒そう。

アイシス様が私に武器は要らないのかと聞いてきたので、武器庫に保管されていた剣の中から、日本の刀に似た細身の剣を貰った。

アイシス様は鞭を・・・といいたいところだったが、細身の短剣を服の下にしのばせる。
その後、お屋敷の地下のほうに連れて行かれた。そこには地下にしては広い空間広がっていて、地面には魔方陣が展開してある。
魔方陣の真ん中に二人で立った時、アイシス様が呪文を唱える。
女王様に、魔方陣、呪文って似合いすぎる!!
なんて思っている間に、転移が完了したらしい。


そこは戦場だった。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...