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オレとほっくん
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佐々木敦也4歳
進級式が終わり、自分よりも下の子達が入園して来たのを見て末っ子の敦也は少しお兄さんになった気分で嬉しくなった。
ところが、去年までは同じ組の中の誰よりも足が速かったのに、今年はどうしても勝てない子がいた。
運動に自信があった敦也はそれがすごく不満だった。
そのうえ、自分を負かした相手は女の子の様な見た目の北斗だ。
去年の入園式の時に母が北斗を見て
「あら!あの子可愛いー!男の子に見えない~」
と、騒いでいたので同じ組になる前から北斗のことは知っていた。
男兄弟しかいない敦也は女の子があまり得意では無かったので、北斗に対しても苦手意識があり、同じ組になってからも自分からは近付かないようにしていた。
そんな相手に負けたのだ。4歳とはいえ男のプライドを傷つけられた敦也は密かに練習に励んだ。
もっと速くなって北斗に勝ってやるんだと
しかし、満を持して挑んだ勝負でもあっさり北斗に敗れてしまった。
あんなにいっぱい走って練習したのに…
「わーい!ほっくんのかち~!」
そう言って嬉しそうに笑う北斗は女の子よりもずっと可愛くて、余計に悔しさが膨れ上がった。
「あつやくん!たのしかったね!またあそんでね!」
「……」
敦也は悔しくて泣きそうなのを見られたくなくて俯いたまま
「つ、つぎは…ぜったい…まけない!!」
そう叫んで逃げるので精一杯だった。
次は負けない。あんな弱そうなんだから、きっともっと頑張れば勝てる。
それからは何度も何度も勝負をしかけた。
何度走っても勝てないので、他の運動に種目を変えて練習して勝負を挑んでみたりもした。
けれど一度も勝てず、何度目かの勝負に敗れたあと、敦也はすっかり拗ねて頑張るのが嫌になってしまった。
「もうしょうぶするの…やめる」
悔しい悔しい悔しい…
もう北斗の見た目が女の子みたいだからとか関係なく、ただ出来ない自分が悔しくていじけていた。
でも、北斗はそんな敦也にニコニコといつもの笑顔を向けて手を差し伸べた
「じゃあ、しょうぶやめて、いっしょにあそぼ!」
「…え?」
何を言われたのか理解する前に手が繋がれてグングン引っ張られていく
北斗と手を繋いで走ると、なんだか体が軽くなったような気がした。
雲梯も登り棒も北斗は「がんばれー!がんばれー!」と一生懸命応援してくれて、前より出来るようになると自分のことのように嬉しそうに喜んでくれた。
そして、敦也はその調子でずっと出来なかった逆上がりまで出来るようになってしまった。
まさかこんなに簡単に出来るようになるとは思わず、自分のことなのにビックリしてた淳也に北斗は力一杯拍手をしていた。
「すごいね!できるようになったね!あっくん!」
興奮気味にそう言いながら頬を赤くして笑う北斗があんまりにも可愛くて
あっくんと呼ばれたのが照れくさいけど嬉しくて
胸はきゅーっとするし、顔は熱くなるし、恥ずかしくて北斗の顔が見られなくなって俯いた。
「ありがとう…ほっくん」
これが敦也が恋に落ちた瞬間
敦也はまだ幼くて恋という自覚なんて無かったけれど、それからはいつだって北斗と一緒にいたくて、くっついてまわった。
幼稚園以外でも一緒にいたくてお互いの家に行き来するようになると北斗の家のスポーツジムで一緒にトレーニングもするようになった。
ジムで子供教室が始まると早速通って北斗に良いところを見せようと張り切るうちにグングン成長していき、北斗に追いつくほどになった。
「あっくんはすごいね!カッコイイね!」
そんな敦也を北斗はいつだって嬉しそうに褒めてくれた。
敦也は北斗に褒められるのが嬉しくて嬉しくて
その度にあの時のように胸がきゅーっとして顔が熱くなって北斗の顔が見られなくて俯いた。
「ほっくんがいっしょだからだよ」
~おまけ~
何も知らない子供時代だからこそプロポーズの言葉も簡単に口にする。
「ほっくん!おおきくなったらオレとけっこんして!」
顔を真っ赤にしてこちらを見ている敦也に北斗は予想外の返事をした。
「んぅ?おおきくなったら、ほっくんゴリラになるからなぁ…」
「…!??」
こんなに可愛い北斗が成長するとゴリラに変わるという衝撃が敦也を貫いた。
「ほっくんのとうちゃんゴリラでしょ?で、ねーちゃんもちょっとゴリラになってきてるとおもうんだ。だから、ほっくんもゴリラになるの」
「……?…???」
すっかり硬直した敦也の頭の中は北斗の父はゴリラだったか?という疑問をすっ飛ばしてゴリラに成長した北斗の姿を描いていく…
「ほっくんがゴリラになっても、あっくんはなかよしでいてくれる?」
「あたりまえだろ!!!」
即答だ。
だって北斗はゴリラになってもきっと可愛い。
いっそ自分もゴリラになってずっと一緒にいたいと思った。
「ほっくんがゴリラになるなら、オレもゴリラになってずっとなかよしでいる!」
「ほんと?!わーい!あっくんとずっとなかよしだ!」
そう言って手を繋いで歩く2人の後をお互いの母が涙目で歩いて行く。
「あははは!!やだ可愛い~!!」
「今の録画してたら良かったぁー!」
大爆笑である。
ある日の幼稚園の帰り道でした。
進級式が終わり、自分よりも下の子達が入園して来たのを見て末っ子の敦也は少しお兄さんになった気分で嬉しくなった。
ところが、去年までは同じ組の中の誰よりも足が速かったのに、今年はどうしても勝てない子がいた。
運動に自信があった敦也はそれがすごく不満だった。
そのうえ、自分を負かした相手は女の子の様な見た目の北斗だ。
去年の入園式の時に母が北斗を見て
「あら!あの子可愛いー!男の子に見えない~」
と、騒いでいたので同じ組になる前から北斗のことは知っていた。
男兄弟しかいない敦也は女の子があまり得意では無かったので、北斗に対しても苦手意識があり、同じ組になってからも自分からは近付かないようにしていた。
そんな相手に負けたのだ。4歳とはいえ男のプライドを傷つけられた敦也は密かに練習に励んだ。
もっと速くなって北斗に勝ってやるんだと
しかし、満を持して挑んだ勝負でもあっさり北斗に敗れてしまった。
あんなにいっぱい走って練習したのに…
「わーい!ほっくんのかち~!」
そう言って嬉しそうに笑う北斗は女の子よりもずっと可愛くて、余計に悔しさが膨れ上がった。
「あつやくん!たのしかったね!またあそんでね!」
「……」
敦也は悔しくて泣きそうなのを見られたくなくて俯いたまま
「つ、つぎは…ぜったい…まけない!!」
そう叫んで逃げるので精一杯だった。
次は負けない。あんな弱そうなんだから、きっともっと頑張れば勝てる。
それからは何度も何度も勝負をしかけた。
何度走っても勝てないので、他の運動に種目を変えて練習して勝負を挑んでみたりもした。
けれど一度も勝てず、何度目かの勝負に敗れたあと、敦也はすっかり拗ねて頑張るのが嫌になってしまった。
「もうしょうぶするの…やめる」
悔しい悔しい悔しい…
もう北斗の見た目が女の子みたいだからとか関係なく、ただ出来ない自分が悔しくていじけていた。
でも、北斗はそんな敦也にニコニコといつもの笑顔を向けて手を差し伸べた
「じゃあ、しょうぶやめて、いっしょにあそぼ!」
「…え?」
何を言われたのか理解する前に手が繋がれてグングン引っ張られていく
北斗と手を繋いで走ると、なんだか体が軽くなったような気がした。
雲梯も登り棒も北斗は「がんばれー!がんばれー!」と一生懸命応援してくれて、前より出来るようになると自分のことのように嬉しそうに喜んでくれた。
そして、敦也はその調子でずっと出来なかった逆上がりまで出来るようになってしまった。
まさかこんなに簡単に出来るようになるとは思わず、自分のことなのにビックリしてた淳也に北斗は力一杯拍手をしていた。
「すごいね!できるようになったね!あっくん!」
興奮気味にそう言いながら頬を赤くして笑う北斗があんまりにも可愛くて
あっくんと呼ばれたのが照れくさいけど嬉しくて
胸はきゅーっとするし、顔は熱くなるし、恥ずかしくて北斗の顔が見られなくなって俯いた。
「ありがとう…ほっくん」
これが敦也が恋に落ちた瞬間
敦也はまだ幼くて恋という自覚なんて無かったけれど、それからはいつだって北斗と一緒にいたくて、くっついてまわった。
幼稚園以外でも一緒にいたくてお互いの家に行き来するようになると北斗の家のスポーツジムで一緒にトレーニングもするようになった。
ジムで子供教室が始まると早速通って北斗に良いところを見せようと張り切るうちにグングン成長していき、北斗に追いつくほどになった。
「あっくんはすごいね!カッコイイね!」
そんな敦也を北斗はいつだって嬉しそうに褒めてくれた。
敦也は北斗に褒められるのが嬉しくて嬉しくて
その度にあの時のように胸がきゅーっとして顔が熱くなって北斗の顔が見られなくて俯いた。
「ほっくんがいっしょだからだよ」
~おまけ~
何も知らない子供時代だからこそプロポーズの言葉も簡単に口にする。
「ほっくん!おおきくなったらオレとけっこんして!」
顔を真っ赤にしてこちらを見ている敦也に北斗は予想外の返事をした。
「んぅ?おおきくなったら、ほっくんゴリラになるからなぁ…」
「…!??」
こんなに可愛い北斗が成長するとゴリラに変わるという衝撃が敦也を貫いた。
「ほっくんのとうちゃんゴリラでしょ?で、ねーちゃんもちょっとゴリラになってきてるとおもうんだ。だから、ほっくんもゴリラになるの」
「……?…???」
すっかり硬直した敦也の頭の中は北斗の父はゴリラだったか?という疑問をすっ飛ばしてゴリラに成長した北斗の姿を描いていく…
「ほっくんがゴリラになっても、あっくんはなかよしでいてくれる?」
「あたりまえだろ!!!」
即答だ。
だって北斗はゴリラになってもきっと可愛い。
いっそ自分もゴリラになってずっと一緒にいたいと思った。
「ほっくんがゴリラになるなら、オレもゴリラになってずっとなかよしでいる!」
「ほんと?!わーい!あっくんとずっとなかよしだ!」
そう言って手を繋いで歩く2人の後をお互いの母が涙目で歩いて行く。
「あははは!!やだ可愛い~!!」
「今の録画してたら良かったぁー!」
大爆笑である。
ある日の幼稚園の帰り道でした。
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