あっくんって俺のこと好きなの?

あんこ食パン

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夏の大会

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夏休みに入った
次の大会は夏休みの前半にある
次も北斗に良いところを見せられるように練習に集中しようと頑張る敦也
北斗の体操部も夏に大会があり、北斗も一種目出場予定らしい
もちろん敦也は応援に行く予定だ
なにせ北斗本人から誘ってもらっている

(あの時の北斗も可愛かった…)

敦也は大会の応援に来て欲しいと言って来た北斗を思い出していた
夏休み前の帰り道、少し緊張した様子で
「あのね、俺、体操部の大会に出られることになって…あっくん応援に来てくれる?」
なんて不安気な顔で首を傾げるものだから、可愛くてその場で抱きしめたくなった
もちろんそんなことは出来ないが、代わりに絶対に行くと返事をしたら、北斗は嬉しそうに笑ってくれて、その顔がまたとても可愛かった

…ヒュッ………タンッ

そんな事を考えながら放った矢が見事的に命中する
側からみたら練習に集中する真剣な眼差しの敦也だが、頭の中は常に北斗でいっぱいだった。
だから、例の噂が収束した後も小森からアプローチらしきものを受けていたが、何も気にしていなかった
敦也にとって、それは終わったこととして処理されていたのだ
必要以上に関わらないようにすれば小森の気持ちも落ち着くだろうと適当に流していた

そして待ちに待った北斗の大会の日
敦也は一人で会場に向かったが、途中で北斗の両親と会って共に応援することになった

「あら!あっくん応援に来てくれたのね!」

「おぉ!せっかくだから敦也もこっちで一緒に観よう」

ちょくちょく北斗の家にも遊びに行っていた為、北斗の両親に会うのは久しぶりでも何でも無かったが、なんだか普段と少し様子が違うように感じた
因みに敦也は北斗の両親を父、母と呼んでいる
これもまた敦也の両親と同じで本人達からの希望で子供の頃からそう呼ばされている
まあ、北斗の様にパパママ呼びを強制されるよりは良いので敦也はあまり抵抗無く父、母と呼んでいる

「んん!!敦也は、最近も北斗と仲良くやってるか?」

「?…うん。いつも通りだけど」

「あっくん、北斗ったら今日の大会はあっくんが観てくれるから頑張らないとって張り切ってたのよ~」

「……そっか」

北斗の母の言葉に顔が赤くなる敦也
その様子を微笑ましそうにニヤニヤしながら見る北斗の両親
よく分からないが敦也は落ち着かない気分で大会が始まるのを待った

例のユニフォームで床の団体競技に出場した北斗は輝いていた
あまりに魅力的な北斗の姿にハラハラしたものの、競技自体は危なげなく完璧に終わった
結果は他の個人種目に出ていた先輩達の何人かは次の大会へ進むことが決まったが、残念ながら北斗達の団体競技は一歩及ばずで先に進むことができなかった

北斗の両親と北斗が出てくるのを待っていると、片付けと挨拶を終えて北斗が出てきた
北斗達の体操部は現地解散になっていた為四人で一緒に帰宅する
北斗の父が運転する車の後部座席に北斗と並んで座っていると、北斗は少し残念そうに笑った

「せっかく応援に来てもらったのに、次に進めなかったや」

「それは残念だったけど、今日の北斗はすごく良かった」

「……えへへ。ありがと」

少し落ち込んでいる北斗を励ましたいのと、今日のキラキラした北斗を見た感想を伝えたいと思ったので言葉にしたが、伝えるのが下手な敦也の言葉はただの慰めに聞こえてしまったようだ
北斗は困った様に笑って、そのまま会話を終えてしまった

「いや、北斗。本当に、今日の北斗はキラキラしてて…その…北斗以外見えなくなるくらい…綺麗だった…っていうか」

「っ本当に?」

「本当」

「そっか~!」

結局しどろもどろになってしまったが、必死に気持ちを伝えると、北斗は先程とは違った晴れやかな笑顔になってくれた
その笑顔が愛おしくて敦也は目を細めながら嬉しそうな北斗を見つめた
が、ふっと前を見るとバックミラーに生暖かい眼差しの二人が見えた

「っな!!!!」

「??…あっくんどうしたの?」

「いや…何でも無い」

「そう?」

北斗の両親がどう思ってこの会話を聞いていたのかは知らないが、何とも居心地が悪い
自分の気のせいかもしれないが、何か北斗の両親の態度が以前と少し違う気がするのだ
嫌な態度という訳では無いが、何か、全体的に生暖かい感じ
結局家に着くまで違和感の正体は分からないままだったが、それよりも北斗の大会が終わったら次は敦也の大会だ
また北斗にかっこよかったと言われる為にも気合いを入れる

そして大会当日
北斗は北斗の両親と敦也の両親の四人と共に来ていた
まさか北斗の両親まで来るとは思っていなかった為驚いたが、両親同士も仲が良いから不思議でも無い
遠目から見た北斗は今日も可愛い
髪も整えているようだし、服装も似合ってる
自分を見に来る為にしてくれている服装と髪型なのだと思うと更に可愛く見える

(格好悪いところは見せられないな)

気合いを入れ直して試合に臨む
しかし、休憩の度に小森が近付いて来る
敦也は軽く無視していたが、無事に試合が終わり控え室に戻る廊下で小森に引き留められた

「敦也先輩!!!お話したいことがあるんです」

「……なんだ」

「あ、いえ…今ここではちょっと…大会が終わったあと、ちょっとだけ時間を下さい」

「………はぁ…わかった」

内容は聞かなくても分かる気がする
小森の表情や態度が物語っている
以前にも同じような表情の女子から話があると言われて行った先では大体同じ事を言われていたからだ
しかし、曖昧に放っておいたことをハッキリさせる為にも先ずは話を聞かなくてはならない
今回の大会は現地解散の予定なので、大会が終わったら北斗と共に帰ろうと思っていたが、その前に小森と話をすることになった

(はぁ…本当は一刻も早く北斗に会いたいんだけど、仕方ないか…)

大会の結果は僅差で全国大会出場を逃した
残念ではあったが、敦也はそこまで落ち込みはしなかった
片付けをしながら北斗にメッセージを送る

"少し時間が掛かるけど、待っててって伝えといて"

本当は自分で母か父にメッセージを送れば良いのだが、北斗とやり取りをしたくて敢えて北斗経由で連絡をする
そして片付けが終わり、解散の挨拶が終わった後、小森に呼び出されて人気の少ない裏手へと向かった








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