あっくんって俺のこと好きなの?

あんこ食パン

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悩める敦也

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ショックのあまり遅刻ギリギリで登校した敦也は、そのせいで北斗に話し掛ける時間が無くなってしまった。
一限目の授業の間中、敦也は授業そっちのけで北斗のことを考えていた。
北斗と友達になって約12年。喧嘩など一度もしたことは無かった。
いつも楽しそうに思うまま行動する北斗を支えたくて隣にいた。
北斗のする事は突飛な物も多かったが、危険そうだったりした時は止めたりアドバイスしたりすれば北斗は必ず耳を傾けてくれたし、自分に全幅の信頼を置いてくれている態度が堪らなく嬉しかった。
敦也の行動指針はいつだって北斗中心で、北斗に好かれたくて、北斗の笑顔が見たくて、その為ならなんだって出来ると思っていた。
敦也にとって北斗は唯一無二
自分が北斗以外の人間を好きになるのなんて想像もつかない。

しかし今思えば、夏休み前からの自分の行動は最悪だった。
あの時は自分の気持ちが北斗に知られてしまったかもしれないという動揺で、あんな風に避けられた北斗の気持ちを全然考えられていなかった。
北斗と二人一緒ならいつだって楽しくて満たされるのに。
北斗と一緒にいる為なら何だってするつもりでいたのに、自分から遠ざけるなんて…

(俺はなんて馬鹿なことをしたんだ…)

敦也が北斗のことを恋愛的な意味で好きかもしれないと思って、直球の質問をしてきたあの時だって、北斗は嫌悪感のようなものを抱いている雰囲気は一切無かった。
同性でずっと友達だと思っていた幼馴染から好意を向けられれば、抵抗があるのが普通だろうと思うのに、北斗の態度からはそういったものは感じられなかった。
次の日だって敦也を避けたり、変な態度を取ることも無かった。
寧ろ避けたのは敦也の方だった
きっと北斗はあの時敦也が肯定する返事をしても、敦也が好意を向けることを許してくれただろう。

それはずっと側で北斗を見てきた敦也なら、簡単に分かることの筈だった。
北斗が敦也の恋人になってくれるかどうかは分からないが、北斗なら敦也の気持ちを知ったからと言って軽蔑したりする筈なかったのに
どうしてバレたら終わりだと思っていたのか
北斗の気持ちを全然考えられていなかった自分に自己嫌悪する敦也

元々何でも重く捉えがちな敦也の思考はどんどん沈んで行く。
それも他でも無い北斗のこととなれば、際限無く沈むのは止められない。

兎に角一刻も早く謝りたい
そして許してもらえたら、自分の気持ちをしっかりと自分の言葉で北斗に伝えなくては!
敦也にしては珍しく前向きな決意をすると、一限目の授業は終了時間となった。

(休み時間だ…すぐ北斗に謝りに行こう)

敦也の決断は決して間違っていなかった。
行動も遅くは無かった。
しかし、幼馴染の敦也にも予測不能なほどに北斗の行動は突飛だということを計算に入れていなかったのが問題だったのだろう…


その日から北斗が露骨に敦也を避けるようになったのだ。
休み時間に話し掛けようとしているのに気付かれると全力で逃げられる。
メッセージを送っても全てスルーされる。
この時点で敦也のメンタルはズタボロだ。

今まで一度だって北斗にそんな態度をとられた事は無かった。
そもそも、北斗が誰かをここまで徹底的に避けているところなんて見たことが無い。
誰かと喧嘩しても、落ち込むようなことがあっても、少しすればいつもの可愛い笑顔の北斗に戻っていた。

(まさか…本気で嫌われ……)

正直、気絶しそうなくらいショックだった敦也だが、例え嫌われてしまったとしても、北斗の事だけは諦められない。
その気持ちだけは変わらなかった。

そんなある日、家に帰ると母からプロテインを渡された。
訳がわからず、どういうことか聞くと北斗からだと言われて、驚き過ぎて何度も母に聞き返して怒られた敦也。
何故突然プロテインなのか分からなかったが、よく見ると付箋が貼ってあり、北斗の癖字でメッセージが書かれていた。

"あっくんファイトー!"

(北斗…もしかして、俺を許す気になってくれたのか?)

次の日敦也は軽い足取りで北斗の元へ向かい、プロテインのお礼を伝えようとした。が、
その瞬間ダッシュで逃げる北斗。
つまり、昨日までと同じのように全力で避けられたのだ。
敦也の心境は天国から地獄だった。

(ど、どういう事なんだ?!…北斗の行動が全然分からん)

その後も定期的にメッセージ付きのプロテインが家に届けられ、しかし学校では完璧に避けられる。
そもそもプロテインだって敦也のいない時間を狙って家に届けられている様で、一度も会えた事が無い。
この行動の意味が全く分からず、ただ避けられていてもプロテインを見るに嫌われているという訳では無いのかもしれないと思えてきた。

しかし、更に北斗は敦也の心を抉る行動を取りはじめた。
同じクラスの体操部のメンバーに、ベタベタと馴れ馴れしく近付いては

「どう?コレされたら嫌になる??」

などと可愛い顔で小首を傾げる小悪魔ムーブをするのだ。
それをされた男は大概ドギマギしながら首を横に振り、その後北斗のことを意識するようになっていく。
これは絶対部活でも同じ事をやっていそうだと気が気じゃ無い敦也

(俺は北斗に近付く事すら出来ないのに…あの野郎…)

密かに殺意を募らせる。
しかし、ここに来てだんだん敦也には北斗の行動が分かり始めた。
流石は幼馴染
ずっと好きだった北斗のことなので、誰よりも理解しているのだ。

そして敦也が出した結論は、
北斗の思考はいつだって突飛なのだから、今北斗がとっている行動には北斗なりに考えがあってやっているのだろうという事
そして、敦也に対して怒っていたり、嫌っているが故の行動では無いだろうという事
あの一生懸命な雰囲気からして、何らかの特訓のようなつもりでやっているのだろうという事

前までならいつものメンバーが確実に止めていただろう何かが止まる事なく進んでしまったに違い無い
つまりは…
面倒なことになってしまったようだと悟った敦也だった。







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