【完結】ネコミミ賢者は召喚獣と恋をする

紗雪あや

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賢者と召喚獣と冒険者ギルド(4)

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怒ったらいいのかへこんだらいいのか微妙な顔になっていると、測定の準備ができたとシャミアちゃんから呼び出しがかかった。
案内されるままに別室に移動して、いくつかの測定をノルが受ける。
もちろん僕は見学するだけだ。
なんか学校の体力テストみたいだな、とノルは比較的楽しそうに受けてるけど、僕はこれが苦手だった。
魔力全般の測定だけは好成績だけど、このひよわな体格のせいか柔軟や瞬発力以外の運動能力は壊滅的なのだ。
一度受けた時に、その後二日間も疲労と筋肉痛に襲われた僕は、二度とこの測定は受けないと心に決めた。
別に肉体労働ができなくても、僕にはそれを補助してくれる紋様術があるもんね。
しかし、そんな僕とは対照的にノルはサクサクと測定をクリアしていく。
まるでボルダリングみたいな崖上りを難なくこなしていく体力は、僕から見たらバケモノだ。

「そう言えばノルは登山キャンプするような子だった」

召喚時の装備を思い出して納得する。
あの時のノルは一見して体格が良い方とまでは感じなかったのに、重そうな登山用の装備を軽々と背負っていた。
あの様子なら測定にも余裕で耐えられるわけだ。

「お疲れ様でした、測定終了です」

シャミアちゃんの掛け声でノルがこっちへ走って戻ってくる。まだテンションが高いままだからか、元気があり余った犬みたいだ。

「ノルって体力あったんだねえ。学校ではスポーツとかやってたの?」
「学校ではやってないけど、体を動かす習い事とか趣味の山登りとかしてたから体力だけは自信あるんだ」
「すごいねえ」

そんな雑談をしていると、一度奥に引っ込んでいたシャミアちゃんが測定結果を持って戻ってきた。相変わらず仕事が早い。

「こちらの結果は確認後、本人のみ閲覧できる加工をしてお渡ししますね」
「ありがとうございます」

ぺこりとお辞儀をしながらノルは紙を受け取る。
どれどれ、と僕も横からのぞき込んで……そして意外な測定結果に感嘆の息を漏らした。

「へぇ……ノルってば才能の塊じゃん」
「そうなのか?」
「体力全般の数値も平均よりかなり高めだし、普通は魔術適性ってひとつ……多くてもふたつ程度なんだよ。割とチートに片足突っ込んでるね」

ノルの魔術適性は三属性、風と光と闇。魔力値も平均値よりかなり高めに出ている。
潜在能力も判定が出ていて、測定だけではハッキリとはわからなかったが、どうやら家系能力の類みたいだった。

「ノルってもしかして特殊な家の出身?」
「特殊……?」
「えーと、もし嫌だったら言わなくていいけど。家系能力っていうのは日本で言うお寺とか神社とか、宗教関連の家や血筋の子に出やすい能力なんだ……あとは憑き物筋とかね」

それと、単に血筋だけじゃない。
寺や神社の建っている土地、いわゆるパワースポット的な場所に長く留まっている一族ほど、潜在能力は発現しやすい傾向にある。と言うのが僕個人の印象だ。

「あー。俺の実家が寺だから多分それだな」
「それだ。家系能力は地域ごとに特色があるから、効果は使ってみないとわからないなぁ……多分だけど、開花すれば元の世界でも継続して使えるようになるよ」
「……マジで?」
「マジマジ。家系能力じゃないけど、僕の紋様術も同じでどこでも使える奴だし」

元の世界にお持ち帰りオーケーな能力とか、そこまでチートじゃなくてもちょっとお得感があって嬉しいよね。
もっとも、開花すればの話ではあるけど。
視線を結果に戻す。

「すごいね、ノルは剣術適性も高いんだ」
「あぁ、それは多分、家の方針で剣と弓を小さい頃からやってたからかな? その成果を毎年夏祭りでも余興として地元の人に見せる事になってたんだ」
「もしかして奉納剣舞みたいな感じ? そんなの開催するなんて、ノルの家って結構大きなお寺だったんだね」
「そこそこだな。余興には題材があるのもあって、妖物退治の演目とかもあったよ」
「うぇ……それあえて僕に言うのぉ」
「別にリューエは妖物じゃないだろ」
「猫又は立派な妖怪ですぅ」

そう言い返してはみたものの、もしかしてノルの家系能力って退魔関連なのではなかろうか。しかも割と発現しやすい類のもの……
剣や弓の腕を鍛え、妖物退治を演目として代々伝えるような寺なら、それを退魔の手法として後世に残しているというのもあり得る話だ。
案外、ノルってば僕の天敵なのかも知れない。
何にせよ、ノルの冒険者としての適性は意外なほどに高かった。鍛えればきっとこの街の冒険者でも上位に入れるくらい。

「これは、将来が楽しみだね」

まぁ、帰っちゃうから将来ノルはこの世界にいないんだけどね。

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