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好きにやっていいって事だよね
しおりを挟む待って待って。攻略本が欲しい。
「ただし貴様はモブ。思いのままとは行くまい。非常~に遺憾ながらチートは与えられている……世界の意思が貴様に全て投げたいあまりに」
「…………」
「うまくやらんと貴様もフェリシアも終わりだ、せいぜい励め」
言い逃げして消えたオコジョ。困惑した私はとりあえず寝た。すやぁ……。
「本当に図太くがさつで無神経だな……」
経験値なし魔物が遠くでなんか言ってる。寝なさい。
翌朝スッキリ目覚めた私は庭師に貰った作業着に着替え、走り込みをした。運動着欲しい。体も鍛えお嬢様を守るのだ。
まあ確認した能力を思えば必要なさそうだけど、努力は嘘をつくが無駄にはならないと誰かが言ってた。
努力で全てがうまくはいかないよね。ダメなものダメな時はダメなのだ。
つまり筋肉は裏切らない。ん? 何か違う?
始末かあ。モブにどうしろと。
能力だけならチート主人公だが……、待てよ、私原作なら好きにしていいんだよね。フェリシア様の大ハッピーエンドにすればいいんだよね?
タイトルすら忘れた私が作者って信じがたいなあ。わりと雑な性格だったのは間違いないけど。原作者って記憶はないが前世思い出した今、私はとーってもテキトーだから。いじめ? 面倒くさいし意味が分からない。
爆速走り込みに早起きな庭師が驚愕していたが無問題。毎日やるから慣れてね。
今日はやりたい事が盛りだくさんだ。第一目標、お嬢様の入浴!
性悪厨房女に笑顔で山盛り朝食を渡され、お嬢様と美味しくいただきました。堅いパンと水のようなスープもあったがいらないよ。
堅パンをふんぬ! と握り潰したらお嬢様がちょっと引いてた。小鳥にあげましょうね。フェリシア様と小鳥、天国の風景だ。
「お嬢様! 私、汗をかいてしまいました。入浴を手伝ってくださるかしら」
廊下を歩きながら聞こえよがしに言い放つ。
「私にできるかしら。教えてね」
ああ、お可愛らしい。好き。
(もちろん私がお世話しますから)
(でも一人でできるようにしないと。リリスがいなくなったら困るもの……お風呂に入れて貰えるか分からないけれど)
(ご安心を。これからはお嬢様のターンです。全部取り戻して汚物は消毒ですわ)
(……? よく分からないけど、リリスを信じるわ)
自室でお嬢様に食休みしていただき、浴槽に水を張る。上下水道完備、だよねえ。私の考えた世界なら。
中世テイストでも衛生状態は現代じゃないと。恋愛ファンタジーに不潔さは不要。汚い大人も消毒だ! ヒャッハー!!
湯沸かしは魔石で解決だけど、自室だけ給湯できる仕組みにしたいな。シャワー付けたい。今のリリスなら可能だろう。
ところで私のステータス、オコジョ野郎が苦悩に満ちた感じで「チートがある」と言ってたので確認した。
そりゃもうすごかった。
前世を思い出した時点で目覚める仕掛けだったようで、平凡リリスがスーパー令嬢へと変身していたのだ。
魔法五属性、治癒魔法に空間魔法、生活魔法など各種取り揃えております。身体強化あるし戦闘力も高いよ。鍛錬は必要だけど。
チート過ぎて胸焼けするでしょ。
でもね、ある発動条件がついてるの。前世覚醒ではない。それは能力の存在が判るというだけ。条件が満たされない場合の私は生活魔法のみ使用可能。
覚醒以前のリリスにも使えたが、これが周囲に見下されてた原因だ。
あのかた貴族なのに属性魔法の一つも使えないんですって! プークスクス! 生活魔法、下女には便利ですわよ~。
拗くれるのも仕方ないか。貴族こわぁ。
だが今は全く気にならない。生活魔法すごいよ。
点火できるし水で洗濯、風で乾燥、光を灯すは光魔法、浄化は聖魔法かな。
どれもすごく下位なだけで網羅してる。侍女だから料理も洗濯も必要ないけど。
生活魔法とひと口に言ってもランクがあって、使える種類に限りがある。リリスはかなり優秀なのを持ってるの。
いじけて鍛えないから全然だけどね。
今の私? 転生チートで極めてるよ。
さあキャッキャウフフのお嬢様とのバスタイムだ。痩せた身体が労しいわ。
……お背中のこれは豚の鞭跡? 国宝級の玉肌に?
父親は根性ないしあの母娘だな。よし屠殺一択。
治癒をパパっとかけるが治りが悪い部分がある。何年も前のやつだ。
でも大丈夫。傷痕だけ限定で時間巻き戻して消えたら時間を進める。身体の成長分、ここだけ肌が引きつれちゃうのもこれでよし。
驚きの滑らかさに!
鏡と手鏡で合わせ鏡にしてご覧いただけば、涙を堪えるお嬢様。辛かったですよね、もう少し待ってください。
奴らは屠殺場行きですからね。比喩じゃないよ、平民によるお家乗っ取りは死刑しかないもん。父親にしろ、侯爵代理の肩書き外れたら平民でしかない。家を出た嫡男以外の貴族子息だし当然です。
虐待を帝国に知らせるよりは楽な結末だと思うよ。
豚はさておきお嬢様のお世話だ。漏れる殺意で怯えさせてはならない。
シンプルな肌触り良いペールブルーのワンピースはリリスのを作り直した。
リリスには似合わない。リリスってば自分が好き系統が似合わず、お嬢様にこそ合うから八つ当たりしたかったのもある? 愚かなり。
「……かわいい。とっても素敵」
「幻覚魔法で他人には汚れて見えますよ」
「なんでリリスはここまでしてくれるの? 私には何も返せないのに」
「正統な後継者はお嬢様です。私の給金もお嬢様に頂いているのですよ。侍女なら普通にすること、気になさる必要はありません」
「……お仕事だから、なのね」
うっ、しまった!
「一番は、私がフェリシア様大好きだからです!!」
「!」
「ほ、ほら如何ですこの編み込み! 今は私の髪飾りしかありませんが」
うー照れる! けどお嬢様に誤解されたくないの!
やっぱ銀髪に合う髪飾り。つまりリリスが成りたい理想としてフェリシア様がいたのだね。嫉妬に走ったけれど好きは好きだったんだ、外見だけとは言え。
少しだけ判る。癖のある赤髪ウェーブに緑眼よりプラチナブロンドのアースアイ、選ぶならこっちだ。
けどリリス改の私は「赤髪! キャー、シャン○スじゃん推しだ推し! エメラルドの瞳カッケー! キツめ美人憧れしかない!」だよ。
でもリリスは違った。妖精みたいな可憐で儚げ美少女に焦がれて仕方なかった。
なんか彼女の気持ちを推し量ろうとしたら、転生だけじゃ分からなかった心情がバーって流れ込んできたよ。
馬鹿だねリリス。憧れて仕方ないそういう時は虐めでなく友達になりたい、だよ。雇用主だから難しいけどね!
「しばらくお傍を離れます。今日から私の部屋にいてくださいね。時々戻っていただきますが、物置部屋も改装し快適空間にしておきますので」
四六時中私の部屋にいていただくのは難しい。偽お嬢様を設置しているが、簡単な受け答えしかしないしね。来るのがアホ一家ならいいんだ。お嬢様の様子が変でも気づきはしない。もし第三者が訪れたらちょい厄介。
お嬢様がいる時はあっちを結界と防御で固めて二重生活で凌ぐしかない。
お好きな本を持ち込もうとしたが、思い直して図書室と繋げた。お嬢様の出入りする時のみ他人は入室不可だ。
「リリス……! すごいわ、こんな事までできるなんて。宮廷魔術師になれるわ」
「私の魔法はフェリシア様専用です!」
テンション上がりまくりお嬢様に軽食の支度もして。
それではざまあ第一段階、開幕です。
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