転生したら不遇令嬢の侍女でした~大事なお嬢様の為にフェイクモブ悪役に徹します!

とうこ

文字の大きさ
4 / 10

好きにやっていいって事だよね

しおりを挟む


 待って待って。攻略本が欲しい。

「ただし貴様はモブ。思いのままとは行くまい。非常~に遺憾ながらチートは与えられている……世界の意思が貴様に全て投げたいあまりに」 

「…………」

「うまくやらんと貴様もフェリシアも終わりだ、せいぜい励め」


 言い逃げして消えたオコジョ。困惑した私はとりあえず寝た。すやぁ……。

「本当に図太くがさつで無神経だな……」

 経験値なし魔物が遠くでなんか言ってる。寝なさい。



 翌朝スッキリ目覚めた私は庭師に貰った作業着に着替え、走り込みをした。運動着欲しい。体も鍛えお嬢様を守るのだ。
 まあ確認した能力を思えば必要なさそうだけど、努力は嘘をつくが無駄にはならないと誰かが言ってた。
 努力で全てがうまくはいかないよね。ダメなものダメな時はダメなのだ。
 つまり筋肉は裏切らない。ん? 何か違う?


 始末かあ。モブにどうしろと。
 能力だけならチート主人公だが……、待てよ、私原作なら好きにしていいんだよね。フェリシア様の大ハッピーエンドにすればいいんだよね?
 タイトルすら忘れた私が作者って信じがたいなあ。わりと雑な性格だったのは間違いないけど。原作者って記憶はないが前世思い出した今、私はとーってもテキトーだから。いじめ? 面倒くさいし意味が分からない。

 爆速走り込みに早起きな庭師が驚愕していたが無問題。毎日やるから慣れてね。


 今日はやりたい事が盛りだくさんだ。第一目標、お嬢様の入浴!
 性悪厨房女に笑顔で山盛り朝食を渡され、お嬢様と美味しくいただきました。堅いパンと水のようなスープもあったがいらないよ。
 堅パンをふんぬ! と握り潰したらお嬢様がちょっと引いてた。小鳥にあげましょうね。フェリシア様と小鳥、天国の風景だ。

「お嬢様! 私、汗をかいてしまいました。入浴を手伝ってくださるかしら」
 廊下を歩きながら聞こえよがしに言い放つ。
「私にできるかしら。教えてね」
 ああ、お可愛らしい。好き。

(もちろん私がお世話しますから)
(でも一人でできるようにしないと。リリスがいなくなったら困るもの……お風呂に入れて貰えるか分からないけれど)
(ご安心を。これからはお嬢様のターンです。全部取り戻して汚物は消毒ですわ)
(……? よく分からないけど、リリスを信じるわ)

 自室でお嬢様に食休みしていただき、浴槽に水を張る。上下水道完備、だよねえ。私の考えた世界なら。
 中世テイストでも衛生状態は現代じゃないと。恋愛ファンタジーに不潔さは不要。汚い大人も消毒だ! ヒャッハー!!


 湯沸かしは魔石で解決だけど、自室だけ給湯できる仕組みにしたいな。シャワー付けたい。今のリリスなら可能だろう。
 ところで私のステータス、オコジョ野郎が苦悩に満ちた感じで「チートがある」と言ってたので確認した。
 そりゃもうすごかった。


 前世を思い出した時点で目覚める仕掛けだったようで、平凡リリスがスーパー令嬢へと変身していたのだ。
 魔法五属性、治癒魔法に空間魔法、生活魔法など各種取り揃えております。身体強化あるし戦闘力も高いよ。鍛錬は必要だけど。


 チート過ぎて胸焼けするでしょ。
 でもね、ある発動条件がついてるの。前世覚醒ではない。それは能力の存在が判るというだけ。条件が満たされない場合の私は生活魔法のみ使用可能。
 覚醒以前のリリスにも使えたが、これが周囲に見下されてた原因だ。

 あのかた貴族なのに属性魔法の一つも使えないんですって! プークスクス! 生活魔法、下女には便利ですわよ~。

 拗くれるのも仕方ないか。貴族こわぁ。
 だが今は全く気にならない。生活魔法すごいよ。
 点火できるし水で洗濯、風で乾燥、光を灯すは光魔法、浄化は聖魔法かな。
 どれもすごく下位なだけで網羅してる。侍女だから料理も洗濯も必要ないけど。

 生活魔法とひと口に言ってもランクがあって、使える種類に限りがある。リリスはかなり優秀なのを持ってるの。
 いじけて鍛えないから全然だけどね。
 今の私? 転生チートで極めてるよ。


 さあキャッキャウフフのお嬢様とのバスタイムだ。痩せた身体が労しいわ。
 ……お背中のこれは豚の鞭跡? 国宝級の玉肌に?
 父親は根性ないしあの母娘だな。よし屠殺一択。
 治癒をパパっとかけるが治りが悪い部分がある。何年も前のやつだ。
 でも大丈夫。傷痕だけ限定で時間巻き戻して消えたら時間を進める。身体の成長分、ここだけ肌が引きつれちゃうのもこれでよし。
 驚きの滑らかさに!

 鏡と手鏡で合わせ鏡にしてご覧いただけば、涙を堪えるお嬢様。辛かったですよね、もう少し待ってください。
 奴らは屠殺場行きですからね。比喩じゃないよ、平民によるお家乗っ取りは死刑しかないもん。父親にしろ、侯爵代理の肩書き外れたら平民でしかない。家を出た嫡男以外の貴族子息だし当然です。
 虐待を帝国に知らせるよりは楽な結末だと思うよ。


 豚はさておきお嬢様のお世話だ。漏れる殺意で怯えさせてはならない。
 シンプルな肌触り良いペールブルーのワンピースはリリスのを作り直した。
 リリスには似合わない。リリス覚醒前ってば自分が好き系統が似合わず、お嬢様にこそ合うから八つ当たりしたかったのもある? 愚かなり。


「……かわいい。とっても素敵」
「幻覚魔法で他人には汚れて見えますよ」
「なんでリリスはここまでしてくれるの? 私には何も返せないのに」
「正統な後継者はお嬢様です。私の給金もお嬢様に頂いているのですよ。侍女なら普通にすること、気になさる必要はありません」
「……お仕事だから、なのね」
 うっ、しまった!


「一番は、私がフェリシア様大好きだからです!!」
「!」
「ほ、ほら如何ですこの編み込み! 今は私の髪飾りしかありませんが」
 うー照れる! けどお嬢様に誤解されたくないの!
 やっぱ銀髪に合う髪飾り。つまりリリスが成りたい理想としてフェリシア様がいたのだね。嫉妬に走ったけれど好きは好きだったんだ、外見だけとは言え。
 少しだけ判る。癖のある赤髪ウェーブに緑眼よりプラチナブロンドのアースアイ、選ぶならこっちだ。
 けどリリス改の私は「赤髪! キャー、シャン○スじゃん推しだ推し! エメラルドの瞳カッケー! キツめ美人憧れしかない!」だよ。
 でもリリスは違った。妖精みたいな可憐で儚げ美少女に焦がれて仕方なかった。
 なんか彼女の気持ちを推し量ろうとしたら、転生だけじゃ分からなかった心情がバーって流れ込んできたよ。
 馬鹿だねリリス。憧れて仕方ないそういう時は虐めでなく友達になりたい、だよ。雇用主だから難しいけどね!



「しばらくお傍を離れます。今日から私の部屋にいてくださいね。時々戻っていただきますが、物置部屋も改装し快適空間にしておきますので」
 四六時中私の部屋にいていただくのは難しい。偽お嬢様を設置しているが、簡単な受け答えしかしないしね。来るのがアホ一家ならいいんだ。お嬢様の様子が変でも気づきはしない。もし第三者が訪れたらちょい厄介。

 お嬢様がいる時はあっちを結界と防御で固めて二重生活で凌ぐしかない。


 お好きな本を持ち込もうとしたが、思い直して図書室と繋げた。お嬢様の出入りする時のみ他人は入室不可だ。
「リリス……! すごいわ、こんな事までできるなんて。宮廷魔術師になれるわ」
「私の魔法はフェリシア様専用です!」
 

 テンション上がりまくりお嬢様に軽食の支度もして。
 それではざまあ第一段階、開幕です。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・ OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。 しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。 モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!? そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・ 王子!その愛情はヒロインに向けてっ! 私、モブですから! 果たしてヒロインは、どこに行ったのか!? そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!? イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。

【完結】王城文官は恋に疎い

ふじの
恋愛
「かしこまりました。殿下の名誉を守ることも、文官の務めにございます!」 「「「……(違う。そうじゃない)」」」  日々流れ込む膨大な書類の間で、真面目すぎる文官・セリーヌ・アシュレイ。業務最優先の彼女の前に、学院時代の同級生である第三王子カインが恋を成就させるために頻繁に関わってくる。様々な誘いは、セリーヌにとっては当然業務上の要件。  カインの家族も黙っていない。王家一丸となり、カインとセリーヌをくっつけるための“大作戦”を展開。二人の距離はぐっと縮まり、カインの想いは、セリーヌに届いていく…のか? 【全20話+番外編4話】 ※他サイト様でも掲載しています。

【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。 その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。 一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。 断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。 全4話です。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

処理中です...