【完結】私の可愛いヘタレ魔王さま

鏑木 うりこ

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そう、言い伝えられたのです

23 魔王様

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「あのね、アーサー知ってる?物すごく大きなケーキがあるんだって」

「どんなケーキです、レディアル様」

「これなんだけど……」

 レディアル様は雑誌を広げてアーサーに見せた。計画通り、ニヤリと悪い顔は見せずにアーサーは笑う。
 もちろんその雑誌のケーキが載ったページをわざと見えるように開いて置いておいたのはアーサー本人である。

「あー、コレですか。コレは特別なケーキですからね、特別な時にしか食べられませんよ」

「アーサーはこのケーキを作れるのですか?」

 ワクワクとドキドキが入り混じった期待を込めた眼差しを向けられて、何度目か忘れたけれど、アーサーのハートにどきゅーん!と矢が刺さった。

 か!わ!い!い!!

「もちろん作れますよ。なんなら10段でも積み上げられますよ?」

「わ、私、コレを食べてみたいです!」

 そうですね、貴方からそういうと思ってましたよ。アーサーはにっこり笑う。

「では結婚しなくてはなりませんね?ウェディングケーキを食べたいなら花嫁さんにならないと」

「えっ」

 レディアル様は暫く考え込んでいた。

『流石にこんな間抜けな嘘で結婚までして、挙句お嫁さんになどと断られるでしょうが、私には第二、第三の策が……』

 アーサーはにこにこと悩んでいるレディアル様の真剣な横顔を眺めていた。

「分かりました。アーサー。結婚しましょう。私が食べたいので、私がお嫁さんでしょうか?」

「ええ、そうですね」

 レディアル様は可愛すぎると、アーサーは鼻血がでそうな鼻をそっと押さえた。

「なるほど。わかりました」

 レディアル様はウェディング特集と書かれた雑誌を真面目に読んで、時折大きなケーキに目を奪われにへらっと笑う。
 多分、色々な事を勘違いしながら計画しているんだとアーサーは確信しているが、多分何をやっても可愛いので楽しみにしている。

 レディアル様が物凄く踵の高い靴を履いて、ウェディングドレスで現れても、釣り合いが取れる自信もある。
 むしろ願ってもない。

「私たちの背よりも高いからケーキを作らないといけませんね」

「!?アーサー……!嬉しいです!」


 何か勘違いの末に、盛大な結婚式が催され、巨大なウェディングケーキは花嫁が丸ごと食ったとか食わないとか。
 そんな色々な逸話を残して、最後にはこう人々に伝えられる。


 「黒」の魔王城「墨炎の城」は勇者の手によって、攻め滅ぼされました、と。


「我らが闇の女神様、こちらがその様子です」

「我に仕える巫女よ、ご苦労であった」

 腐っている闇の女神は、記録媒体をニコニコと受け取り宣言する。

「しばし、墨炎は休業とする。勇者を迎える必要はなし」

「畏まりました」

 我らが魔王様は、お仕事をやり遂げたのでした。


 女神様が完全に帰ってから、巫女であるお姉様はため息をつく。

「はぁ、うちの兄弟は魔王様なんて出来る性格じゃないのよねぇ……ほんと、良く頑張りました!」




 


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感想 4

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みんなの感想(4件)

DiaboloXxX
2021.11.02 DiaboloXxX
ネタバレ含む
2021.11.05 鏑木 うりこ

きっとめちゃくちゃしてますよ(*≧∀≦*)これくらい皆してますけど?シレッて言われてそうです!

解除
もちもち
2020.12.26 もちもち

お疲れ様でした😊

2020.12.26 鏑木 うりこ

こんばんは!

 やっと( ´ ▽ ` )ですが、まとまりました!

解除
ぎょらんかんのん

兄ーズがチョコまみれに······
しっかり覗き見したい。

2020.09.15 鏑木 うりこ

こんばんは!私もみたいです(*゚∀゚*)ドキドキ!

解除

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