マイアバターに異世界転生したら宰相だった私に救いの手を!

鏑木 うりこ

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バトル★ジャンキーズ

25 英雄の帰還

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 結局は南向きのサロンが1番昼寝に最適と判明した。

「ベーコンさん、誰かが帰ってきたら起こしてね」

「あの!一つだけ聞いていただきたいことがございます!」

 なんでしょうか?ベーコンさん。

「わ、わたくしの名前はクラウスと申します。よろしければそう呼んでいただけると嬉しいのですが」

「…わかりました、クラウスさん…」

「ありがとうございます。あと一つお願いがあるのですが…」

「どうぞ」

「貴方様のお名前を教えていただけますか?」

「…リィンと言います」

 我々はやっとお互いの名前を知った。



 日が傾きかけ、空に茜がさし始めても、ジャンキーズは帰ってこなかった。

「…ベーコン…クラウスさん」

「なんでしょうか、リィンさま」

「実は私はただの冒険者でして」

「なるほど」

「なんの権限もないのですが」

「食事の方でしたら手配は終わっております」

「厩舎に馬丁たちを集めて下さい。キューブワースでは、人の命より馬の命の方が大切な将軍がたくさんいる。心するようにと」

「すぐに」

「あと風呂の用意と。足りないでしょうから、お湯を沸かして下さい」

「かしこまりました」

「城内に女性がいたら、早めに部屋に隠れるように。兵士と遊びたいなら大歓迎ですが。その手の女性の手配は無理ですか?」

「その筋に当たってみます」

「ファディアン側に多く入れて下さい。」

「かしこまりました」

「あと、牢の掃除を」

 ベーコン…クラウスさんは形の良いお辞儀をする。私はサロンの椅子から立ち上がった。

「どちらへ?」

「屋上に」

 もう一度、礼をしてクラウスさんは手配に周る。私は階段で平原が見える屋上に足を運んだ。

 風が匂いを運んでくる。傾きかけた太陽はまだ沈んでおらず、辺りを見渡すことが出来た。

 ただ、見ている。私が作ったこの地獄を。鈴子だった部分が抗議して泣き叫ぶと思ったが、そうでもなかった。
 それでも救いが欲しかったから、エルナたちを逃したのだろう。戦いに酔った男たちが帰ってきて、見つかったらそれは酷い目に合う。

 たった6人とでは釣り合いが合わぬほど、私は罪を重ねたのだけれども。

 日は沈む。闇が辺りを包み始めた頃、英雄達の凱旋が始まった。


 城の大門を開け、王の帰還を迎える。

 アルトが先頭で門を潜ると、ずらりと使用人が並んでいた。

「お帰りなさいませ、王よ」

「リィン」

 アルトが愛馬から降りると、すぐに馬丁が連れて行く。

「お疲れでしょう、湯あみを」

「リィン、最高のお出迎えだ!」

「部下を鍛えて下さいよ」

 アルトを見送った後、私は最大の仕事にかかる。さて、どんな顔で帰ってくるでしょうか。

 帰還してくる兵士達が静まる。後ろから異常な圧を感じたからだ。帰還だというのに、まだ戦場の熱と狂気をはらんだ風を纏ったまま、真っ直ぐ歩いてくる。

 青い狂気の塊に私は声をかける。

「お帰りなさい、殿下」

「あ!リィンくーん!」

 走り出した!本当に速い、早い!コーディの突進!リィンは身構えた!ふぁいとー!いっぱーつ!ふぅん!

 耐えた!私、耐えたよ!

「ただいまただいま!僕いっぱいがんばったよー!ほらみてほらみて!」

 聖女が狂狼をなだめたぞ!

 もういいや、放って置こう。

「手がね、真っ赤っかで汚れちゃったし、タコが剥けちゃって痛いのー!」

 痛いといいながら、にこにこと殿下は両手を見せてきた。

「はい、良く頑張りましたね」

 にこっと笑い返し、ワンコの今日の報告を聞いてやる。

「それで、たくさん頑張ったんだけど、1番偉いやつがアルトの所に行っちゃって…今日の1番は僕じゃなかった……」

「なるほど、今日は戦場が広い。騎兵の方が活躍できたでしょう。殿下は騎兵ではないですからね」

 よしよし、頭を撫でてやると、尻尾を振らんばかりだ。ああ、髪の毛までどっぷり返り血で濡れている。

「リィン君、僕 お腹が空きました!」

「そうですね、でもきれいにしてからの方がいいでしょう」

 私の手も服も汚れてしまった。何も厭うことなどないのだが、殿下はすまなそうにしょんぼりした。

「ご、ごめんね!僕が抱きついたから」

「殿下に御怪我がなくて良かったです」

 半日以上戦って怪我してないとか、化け物め。可愛いな!

「じゃあ、一緒にお風呂入ろうよー」

「はいはい 行きますよ」

 わんわん!わふわふ!威厳が家出して久しいな!

「一緒に入るのかよ…!くそッ」

 ライオン皇帝が羨ましそうに吐き捨てたとか?



 

 






 



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