25 / 49
バトル★ジャンキーズ
25 英雄の帰還
しおりを挟む
結局は南向きのサロンが1番昼寝に最適と判明した。
「ベーコンさん、誰かが帰ってきたら起こしてね」
「あの!一つだけ聞いていただきたいことがございます!」
なんでしょうか?ベーコンさん。
「わ、わたくしの名前はクラウスと申します。よろしければそう呼んでいただけると嬉しいのですが」
「…わかりました、クラウスさん…」
「ありがとうございます。あと一つお願いがあるのですが…」
「どうぞ」
「貴方様のお名前を教えていただけますか?」
「…リィンと言います」
我々はやっとお互いの名前を知った。
日が傾きかけ、空に茜がさし始めても、ジャンキーズは帰ってこなかった。
「…ベーコン…クラウスさん」
「なんでしょうか、リィンさま」
「実は私はただの冒険者でして」
「なるほど」
「なんの権限もないのですが」
「食事の方でしたら手配は終わっております」
「厩舎に馬丁たちを集めて下さい。キューブワースでは、人の命より馬の命の方が大切な将軍がたくさんいる。心するようにと」
「すぐに」
「あと風呂の用意と。足りないでしょうから、お湯を沸かして下さい」
「かしこまりました」
「城内に女性がいたら、早めに部屋に隠れるように。兵士と遊びたいなら大歓迎ですが。その手の女性の手配は無理ですか?」
「その筋に当たってみます」
「ファディアン側に多く入れて下さい。」
「かしこまりました」
「あと、牢の掃除を」
ベーコン…クラウスさんは形の良いお辞儀をする。私はサロンの椅子から立ち上がった。
「どちらへ?」
「屋上に」
もう一度、礼をしてクラウスさんは手配に周る。私は階段で平原が見える屋上に足を運んだ。
風が匂いを運んでくる。傾きかけた太陽はまだ沈んでおらず、辺りを見渡すことが出来た。
ただ、見ている。私が作ったこの地獄を。鈴子だった部分が抗議して泣き叫ぶと思ったが、そうでもなかった。
それでも救いが欲しかったから、エルナたちを逃したのだろう。戦いに酔った男たちが帰ってきて、見つかったらそれは酷い目に合う。
たった6人とでは釣り合いが合わぬほど、私は罪を重ねたのだけれども。
日は沈む。闇が辺りを包み始めた頃、英雄達の凱旋が始まった。
城の大門を開け、王の帰還を迎える。
アルトが先頭で門を潜ると、ずらりと使用人が並んでいた。
「お帰りなさいませ、王よ」
「リィン」
アルトが愛馬から降りると、すぐに馬丁が連れて行く。
「お疲れでしょう、湯あみを」
「リィン、最高のお出迎えだ!」
「部下を鍛えて下さいよ」
アルトを見送った後、私は最大の仕事にかかる。さて、どんな顔で帰ってくるでしょうか。
帰還してくる兵士達が静まる。後ろから異常な圧を感じたからだ。帰還だというのに、まだ戦場の熱と狂気をはらんだ風を纏ったまま、真っ直ぐ歩いてくる。
青い狂気の塊に私は声をかける。
「お帰りなさい、殿下」
「あ!リィンくーん!」
走り出した!本当に速い、早い!コーディの突進!リィンは身構えた!ふぁいとー!いっぱーつ!ふぅん!
耐えた!私、耐えたよ!
「ただいまただいま!僕いっぱいがんばったよー!ほらみてほらみて!」
聖女が狂狼をなだめたぞ!
もういいや、放って置こう。
「手がね、真っ赤っかで汚れちゃったし、タコが剥けちゃって痛いのー!」
痛いといいながら、にこにこと殿下は両手を見せてきた。
「はい、良く頑張りましたね」
にこっと笑い返し、ワンコの今日の報告を聞いてやる。
「それで、たくさん頑張ったんだけど、1番偉いやつがアルトの所に行っちゃって…今日の1番は僕じゃなかった……」
「なるほど、今日は戦場が広い。騎兵の方が活躍できたでしょう。殿下は騎兵ではないですからね」
よしよし、頭を撫でてやると、尻尾を振らんばかりだ。ああ、髪の毛までどっぷり返り血で濡れている。
「リィン君、僕 お腹が空きました!」
「そうですね、でもきれいにしてからの方がいいでしょう」
私の手も服も汚れてしまった。何も厭うことなどないのだが、殿下はすまなそうにしょんぼりした。
「ご、ごめんね!僕が抱きついたから」
「殿下に御怪我がなくて良かったです」
半日以上戦って怪我してないとか、化け物め。可愛いな!
「じゃあ、一緒にお風呂入ろうよー」
「はいはい 行きますよ」
わんわん!わふわふ!威厳が家出して久しいな!
「一緒に入るのかよ…!くそッ」
ライオン皇帝が羨ましそうに吐き捨てたとか?
「ベーコンさん、誰かが帰ってきたら起こしてね」
「あの!一つだけ聞いていただきたいことがございます!」
なんでしょうか?ベーコンさん。
「わ、わたくしの名前はクラウスと申します。よろしければそう呼んでいただけると嬉しいのですが」
「…わかりました、クラウスさん…」
「ありがとうございます。あと一つお願いがあるのですが…」
「どうぞ」
「貴方様のお名前を教えていただけますか?」
「…リィンと言います」
我々はやっとお互いの名前を知った。
日が傾きかけ、空に茜がさし始めても、ジャンキーズは帰ってこなかった。
「…ベーコン…クラウスさん」
「なんでしょうか、リィンさま」
「実は私はただの冒険者でして」
「なるほど」
「なんの権限もないのですが」
「食事の方でしたら手配は終わっております」
「厩舎に馬丁たちを集めて下さい。キューブワースでは、人の命より馬の命の方が大切な将軍がたくさんいる。心するようにと」
「すぐに」
「あと風呂の用意と。足りないでしょうから、お湯を沸かして下さい」
「かしこまりました」
「城内に女性がいたら、早めに部屋に隠れるように。兵士と遊びたいなら大歓迎ですが。その手の女性の手配は無理ですか?」
「その筋に当たってみます」
「ファディアン側に多く入れて下さい。」
「かしこまりました」
「あと、牢の掃除を」
ベーコン…クラウスさんは形の良いお辞儀をする。私はサロンの椅子から立ち上がった。
「どちらへ?」
「屋上に」
もう一度、礼をしてクラウスさんは手配に周る。私は階段で平原が見える屋上に足を運んだ。
風が匂いを運んでくる。傾きかけた太陽はまだ沈んでおらず、辺りを見渡すことが出来た。
ただ、見ている。私が作ったこの地獄を。鈴子だった部分が抗議して泣き叫ぶと思ったが、そうでもなかった。
それでも救いが欲しかったから、エルナたちを逃したのだろう。戦いに酔った男たちが帰ってきて、見つかったらそれは酷い目に合う。
たった6人とでは釣り合いが合わぬほど、私は罪を重ねたのだけれども。
日は沈む。闇が辺りを包み始めた頃、英雄達の凱旋が始まった。
城の大門を開け、王の帰還を迎える。
アルトが先頭で門を潜ると、ずらりと使用人が並んでいた。
「お帰りなさいませ、王よ」
「リィン」
アルトが愛馬から降りると、すぐに馬丁が連れて行く。
「お疲れでしょう、湯あみを」
「リィン、最高のお出迎えだ!」
「部下を鍛えて下さいよ」
アルトを見送った後、私は最大の仕事にかかる。さて、どんな顔で帰ってくるでしょうか。
帰還してくる兵士達が静まる。後ろから異常な圧を感じたからだ。帰還だというのに、まだ戦場の熱と狂気をはらんだ風を纏ったまま、真っ直ぐ歩いてくる。
青い狂気の塊に私は声をかける。
「お帰りなさい、殿下」
「あ!リィンくーん!」
走り出した!本当に速い、早い!コーディの突進!リィンは身構えた!ふぁいとー!いっぱーつ!ふぅん!
耐えた!私、耐えたよ!
「ただいまただいま!僕いっぱいがんばったよー!ほらみてほらみて!」
聖女が狂狼をなだめたぞ!
もういいや、放って置こう。
「手がね、真っ赤っかで汚れちゃったし、タコが剥けちゃって痛いのー!」
痛いといいながら、にこにこと殿下は両手を見せてきた。
「はい、良く頑張りましたね」
にこっと笑い返し、ワンコの今日の報告を聞いてやる。
「それで、たくさん頑張ったんだけど、1番偉いやつがアルトの所に行っちゃって…今日の1番は僕じゃなかった……」
「なるほど、今日は戦場が広い。騎兵の方が活躍できたでしょう。殿下は騎兵ではないですからね」
よしよし、頭を撫でてやると、尻尾を振らんばかりだ。ああ、髪の毛までどっぷり返り血で濡れている。
「リィン君、僕 お腹が空きました!」
「そうですね、でもきれいにしてからの方がいいでしょう」
私の手も服も汚れてしまった。何も厭うことなどないのだが、殿下はすまなそうにしょんぼりした。
「ご、ごめんね!僕が抱きついたから」
「殿下に御怪我がなくて良かったです」
半日以上戦って怪我してないとか、化け物め。可愛いな!
「じゃあ、一緒にお風呂入ろうよー」
「はいはい 行きますよ」
わんわん!わふわふ!威厳が家出して久しいな!
「一緒に入るのかよ…!くそッ」
ライオン皇帝が羨ましそうに吐き捨てたとか?
22
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる