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護るべきもの
34 戦後処理
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第一王子は有言実行なタイプで、食事を提供してくれた。持ってきてくれたのは、この部屋付きだろう侍女で、スープのような体に優しいものだ。
私は彼女から、情報を得なければならない。
何の非もない彼女をたぶらかすのは、多少罪悪感があるが、ここには居たくない…。
私は女優!いや、俳優!背後にバラを背負ってみせる!マヤン!
「ありがとう…ございます」
控えめに笑う。見た目が冷たいから、ちょっと笑うとギャップでコロっと騙せると評判だった。(シターン内)行けるか?
侍女の頬がぽう、と赤くなる。良し、好感触!いける!
彼女の名前はマリーと言うらしい。ふふふ、よろしくお願いします。
「すみませんが、これを外していただけますか?」
手枷が見えるように持ち上げる。これではスープが飲みづらい。マリーは少し悩んだようだが、ポケットから鍵束を取り出し、外してくれた。
「お食事が終わったら、申し訳ありませんが、もう一度はめさせていただきます」
「ええ、構いません」
ゆっくりと食事をする間、マリーは色々喋ってくれた。
私はどうやら7日ほど眠っていたらしい。そしてほぼ毎日、第一王子はやってきて…彼いわく、確かめていたようだ。
まったく、勘弁して欲しい。
「は、はは……」
乾いた笑いしか出なかった。何も覚えていないのが救いかも知れない。
「よほどお気に召したご様子で……」
「わ、私にも好みというものがあるのですけれどもね……」
食事はすっかり空にして、素直に両手を差し出す。マリーはごめんなさいと言いながら、手枷を元のようにはめ直した。
「痛くないでしょうか?」
「大丈夫ですよ。所で私はこの部屋の中くらいなら歩いても平気ですか?」
窓を見る。鉄格子ははまっているが、外は見える。出しては貰えないが、見るくらいは許して欲しいな。
「大丈夫だと思います…あ、靴を用意して参りますね」
「ありがとう」
マリーが食器を下げ、一度退出をしてから戻ってくる。手には靴と言うよりスリッパをたずさえていた。
「こちらでよろしいですか?」
ベッドの横に履きやすいように置いてくれる。
「ありがとう」
足を滑らせて、つま先がスリッパの位置を知る。じゃらり、じゃらり、繋がれた鎖がうるさい。立てないだろうなぁ。
なるべく力を入れてみるも、カクンと膝から落ちた。
「危ない!」
慌てて、マリーが体を支えてくれる。
はぁ、とため息をしてから
「ありがとう、やっぱり無理でした……」
彼女の手を借りてベッドの上に座り直す。
「7日も意識が戻らなかったのですから…足がなえておられるのです」
「そう…ですね」
辛い、切ない、悲しくて情けないと言う感情をいっぺんに混ぜ込んだような顔を一瞬だけ作り、笑う。
「……王子は今宵も見えられるのでしょうか……」
呟いてうつむけば
「いらっしゃるご予定です……」
辛そうに顔を背けながら、マリーは教えてくれた。 そう…
聞き取れるかどうか、分からないくらい小さく呟く。悲壮感マシマシで。いや本当に嫌なんだけどね!
カティスのところには自分から覚悟を持って飛び込んだし、コーディは、まあ、ほだされた。ここまではしょうがない。が、マグロ大好き王子はちょっとな…しかも毎日マグロ三昧だったらしいじゃないですか!
水揚げ食らった身でも、それはちょっとと思いますよ!
なので
「もう少し空でも見られればと思ったのですが……」
今にも儚みそうな声で呟いても許されるでしょう。マッヤーン!
マリーは外の兵士と掛け合ってくれた。
「あの人が衰弱して死んでしまってもいいの⁈」
「しかし、侍女殿」
「1人で上手に歩けもしないのよ!」
「そのようですが…」
「それに歩いてたら鎖の音がここまで聞こえるでしょう?」
「確かにすぐ分かりますが……」
扉の向こう側のやりとりを聞く。しばらくしてマリーは小さな椅子をひとつ確保してくれた。それを窓辺に置き、
「私におつかまり下さい!」
ゆっくりと、一歩一歩進み窓際まで連れてきてくれた。途中、鎖がうるさいし重いしで大変だったが、長さは長く窓辺まで行って用意された椅子に坐る事ができた。
「ありがとう」
型通りの籠絡スマイルを浮かべ、
「もうすぐ、夕暮れなんだね」
と、窓の外を見る。夜になって欲しくないと滲ませて。
「扉の外に控えておりますので、お声かけ下さいませ」
マリーは気がきく良い侍女だった。
さて、外をみる。一体ここは城のどの辺りなのか知らなければならない。どうやらここは地上3階と行ったところか。結構、いやかなり高い。
見えるのは中庭、大門が目に映る。あれは見たことがある。
つい、と鉄格子を撫でる。堅牢な柵だ。窓は小さいが人が通るだけの大きさはある。
目を閉じて、音を拾う。階下から下らない貴族のやり取りが聞こえた。王は退き、責任を……なるほど、アークライトが王座につくのは本当の事らしい。
「失礼します」
マリーが扉を開けた。いつになっても、私が声をかけないから、しびれを切らしたのだろう。もう空は暗くなっている。
「そろそろベッドにお戻り下さい。あまり起きていらっしゃると、疲れてしまいますよ」
私の手を取る。ゆっくりと立ち上がって、来た時と同じくらいの速度で戻る。そんなに距離があるわけではないのだが、遠く感じる。
ベッドまで辿りつくと、疲れを感じる。酷いものだ。
「少しお眠りになられてはいかがでしょうか?」
「そう、だね。そうさせてもらおうかな?」
ベッドに身を横たえると、マリーはふわりと上掛けをかけてくれる。
「ありがとう、おやすみなさい」
マリーはお休みなさいませ、と言って扉をしめた。がちゃり、と鍵がかかる音がする。扉の外の兵士に鍵を渡したようだ。
コツコツとマリーの足音が遠ざかるのを聞きながら、眠りに落ちた。
私は彼女から、情報を得なければならない。
何の非もない彼女をたぶらかすのは、多少罪悪感があるが、ここには居たくない…。
私は女優!いや、俳優!背後にバラを背負ってみせる!マヤン!
「ありがとう…ございます」
控えめに笑う。見た目が冷たいから、ちょっと笑うとギャップでコロっと騙せると評判だった。(シターン内)行けるか?
侍女の頬がぽう、と赤くなる。良し、好感触!いける!
彼女の名前はマリーと言うらしい。ふふふ、よろしくお願いします。
「すみませんが、これを外していただけますか?」
手枷が見えるように持ち上げる。これではスープが飲みづらい。マリーは少し悩んだようだが、ポケットから鍵束を取り出し、外してくれた。
「お食事が終わったら、申し訳ありませんが、もう一度はめさせていただきます」
「ええ、構いません」
ゆっくりと食事をする間、マリーは色々喋ってくれた。
私はどうやら7日ほど眠っていたらしい。そしてほぼ毎日、第一王子はやってきて…彼いわく、確かめていたようだ。
まったく、勘弁して欲しい。
「は、はは……」
乾いた笑いしか出なかった。何も覚えていないのが救いかも知れない。
「よほどお気に召したご様子で……」
「わ、私にも好みというものがあるのですけれどもね……」
食事はすっかり空にして、素直に両手を差し出す。マリーはごめんなさいと言いながら、手枷を元のようにはめ直した。
「痛くないでしょうか?」
「大丈夫ですよ。所で私はこの部屋の中くらいなら歩いても平気ですか?」
窓を見る。鉄格子ははまっているが、外は見える。出しては貰えないが、見るくらいは許して欲しいな。
「大丈夫だと思います…あ、靴を用意して参りますね」
「ありがとう」
マリーが食器を下げ、一度退出をしてから戻ってくる。手には靴と言うよりスリッパをたずさえていた。
「こちらでよろしいですか?」
ベッドの横に履きやすいように置いてくれる。
「ありがとう」
足を滑らせて、つま先がスリッパの位置を知る。じゃらり、じゃらり、繋がれた鎖がうるさい。立てないだろうなぁ。
なるべく力を入れてみるも、カクンと膝から落ちた。
「危ない!」
慌てて、マリーが体を支えてくれる。
はぁ、とため息をしてから
「ありがとう、やっぱり無理でした……」
彼女の手を借りてベッドの上に座り直す。
「7日も意識が戻らなかったのですから…足がなえておられるのです」
「そう…ですね」
辛い、切ない、悲しくて情けないと言う感情をいっぺんに混ぜ込んだような顔を一瞬だけ作り、笑う。
「……王子は今宵も見えられるのでしょうか……」
呟いてうつむけば
「いらっしゃるご予定です……」
辛そうに顔を背けながら、マリーは教えてくれた。 そう…
聞き取れるかどうか、分からないくらい小さく呟く。悲壮感マシマシで。いや本当に嫌なんだけどね!
カティスのところには自分から覚悟を持って飛び込んだし、コーディは、まあ、ほだされた。ここまではしょうがない。が、マグロ大好き王子はちょっとな…しかも毎日マグロ三昧だったらしいじゃないですか!
水揚げ食らった身でも、それはちょっとと思いますよ!
なので
「もう少し空でも見られればと思ったのですが……」
今にも儚みそうな声で呟いても許されるでしょう。マッヤーン!
マリーは外の兵士と掛け合ってくれた。
「あの人が衰弱して死んでしまってもいいの⁈」
「しかし、侍女殿」
「1人で上手に歩けもしないのよ!」
「そのようですが…」
「それに歩いてたら鎖の音がここまで聞こえるでしょう?」
「確かにすぐ分かりますが……」
扉の向こう側のやりとりを聞く。しばらくしてマリーは小さな椅子をひとつ確保してくれた。それを窓辺に置き、
「私におつかまり下さい!」
ゆっくりと、一歩一歩進み窓際まで連れてきてくれた。途中、鎖がうるさいし重いしで大変だったが、長さは長く窓辺まで行って用意された椅子に坐る事ができた。
「ありがとう」
型通りの籠絡スマイルを浮かべ、
「もうすぐ、夕暮れなんだね」
と、窓の外を見る。夜になって欲しくないと滲ませて。
「扉の外に控えておりますので、お声かけ下さいませ」
マリーは気がきく良い侍女だった。
さて、外をみる。一体ここは城のどの辺りなのか知らなければならない。どうやらここは地上3階と行ったところか。結構、いやかなり高い。
見えるのは中庭、大門が目に映る。あれは見たことがある。
つい、と鉄格子を撫でる。堅牢な柵だ。窓は小さいが人が通るだけの大きさはある。
目を閉じて、音を拾う。階下から下らない貴族のやり取りが聞こえた。王は退き、責任を……なるほど、アークライトが王座につくのは本当の事らしい。
「失礼します」
マリーが扉を開けた。いつになっても、私が声をかけないから、しびれを切らしたのだろう。もう空は暗くなっている。
「そろそろベッドにお戻り下さい。あまり起きていらっしゃると、疲れてしまいますよ」
私の手を取る。ゆっくりと立ち上がって、来た時と同じくらいの速度で戻る。そんなに距離があるわけではないのだが、遠く感じる。
ベッドまで辿りつくと、疲れを感じる。酷いものだ。
「少しお眠りになられてはいかがでしょうか?」
「そう、だね。そうさせてもらおうかな?」
ベッドに身を横たえると、マリーはふわりと上掛けをかけてくれる。
「ありがとう、おやすみなさい」
マリーはお休みなさいませ、と言って扉をしめた。がちゃり、と鍵がかかる音がする。扉の外の兵士に鍵を渡したようだ。
コツコツとマリーの足音が遠ざかるのを聞きながら、眠りに落ちた。
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