42 / 49
外伝
1 ソランジェ・ショック
しおりを挟む
「ふーやれやれだわ」
「ほんとねぇ」
「……。」
お腹の大きな妊婦さんが3人、柔らかい椅子に座ってハーブティを飲んでいる。
正確には妊婦さんが2人と妊夫さんが1人である。
そう、私はまたお腹に子供がいる。また3人いるらしい。前回と同じくらい、腹がでかい、ついでに重い。
隣にいるのはティナとルーティアでこれまた、お腹が大きい。2人は双子なので私ほど大きくない。
何故 こんな事になったかと言うと私を絶対に裏切らないマッド錬金術師・ドクターSが裏切ったからだ。
裏切ったと言うより、知的好奇心の探究に走ってしまったからなのだが…。
「わ!私!医者の勉強してくる!」
色々落ち着いた後、ソランジェはそう言い残し、旅に出た。どうやら、多胎の出産の際の危険性と、それに対して何もできなかった自分が許せなかったらしい。
十分色々してくれたんだけどもね。
そしてソランジェは帰ってきた。
「私、絶対に産ませますから」
マッド錬金術師ソランジェの敬称にドクターが付加された。
理論が完成すると、実験をしたくなるのがマッドのサガ。
① 妊娠可能ポーションによる多胎率とそれに関わる母体の負担と健康における注意点
②多胎児の成長及び出産に関する諸注意
③出産時のトラブルについて。
「トット…臨床実験が必要だわ…」
「はいでしゅ…ソランさま…」
こうして私の手から離れて自我を持ったようなマッドは正しく暴走した。
「ハーブティを飲むのです!普通のお茶は飲まないでください!」
私は思い出しても腹が立つ、春の日の事を思い出していた。
ーーーーーーーーーーー
花が咲く季節になった。まあまあ田舎のシターンでもあちこちに花が咲き、心が浮き立つような暖かい日が続く。
子供達は元気で、タウンハウスや王城を走り回っている。しかし、アンジェリカやアレクシアの方が格上らしく、勝てない日々が続いているようだ。
「ガーデンティーパーティーがしたい、リィン何とかして!」
「ソランジェまで言うか!」
駄々を捏ねるな!自分でしろ!といいかけたが、何かと世話になっているマッド錬金術師だ。それくらいのお願いは聞いてやるべきだろう。
「あー中庭にテーブルでも出して、シェフに頼めば良いんじゃないか?」
「分かった!頼んでくる!あ、あとチョコレートケーキ食べたい!リィンちの奴!」
とてとてーと走って行くソランジェを見送って、チョコレートケーキくらいはまぁ…手配してやろう。
少し日が開いて、ソランジェのガーデンティーパーティーが開かれた。人も多くなく、こじんまりしたものだが、アルトがいた。
「リィンー!」
最近、突進具合を覚えたコーディ殿下は走ってくるも、途中で止まった。
「僕も来たよー」
「はぁ」
来たよも何もあれからコーディ殿下は我が家に居候している。子供達に取り入って旦那様の座を勝ち取ろうとしているようだ。
単に3人が可愛いだけかもしれないが。
「殿下、何故アルト陛下がいるんですか?」
「わかんないけど、アルトもみんなと遊びたいんじゃないかなー」
まだ、あの戦いの処理が残っているらしく、アルト陛下は忙しい。
「なるほど」
しかし、パーティ会場の片隅でソランジェと
「そちもワルよのう!」
「はっはっは!お代官さまにはかないませんわ!」
と、悪どそうなやり取りをしているのはどうなんだろうか?何を考えておる、アルト屋よ!
「なんだか、庭でお菓子をいただくなんて可愛いこと考えるわね、ソランジェも」
「本当ねえ。ソランジェも女の子なのだわ」
ティナとルーティアがニコニコとチョコレートケーキを食べながら言う。
「それなら女性だけでやれば良いのに、何故私を呼ぶのか」
可憐な花がついた木陰で私は椅子に座って足を組む。
まあ、うららかな陽気の中茶を飲み、甘いものを食べながら、子供達の姿を見るのも悪くないか、そう思っていた。
「良いじゃない、女の子同士でお話ししましょうよ!」
「ティナ、私を数に入れないでくれ」
「リンちゃんも、女の子みたいなものでしょ!」
「……」
解せぬ、何故幼馴染みの女性というのは強くて、話を聞かないのか。
今日はいつもより、酒の香りが強いチョコレートケーキを食べながら、ため息をついた。
「ほんとねぇ」
「……。」
お腹の大きな妊婦さんが3人、柔らかい椅子に座ってハーブティを飲んでいる。
正確には妊婦さんが2人と妊夫さんが1人である。
そう、私はまたお腹に子供がいる。また3人いるらしい。前回と同じくらい、腹がでかい、ついでに重い。
隣にいるのはティナとルーティアでこれまた、お腹が大きい。2人は双子なので私ほど大きくない。
何故 こんな事になったかと言うと私を絶対に裏切らないマッド錬金術師・ドクターSが裏切ったからだ。
裏切ったと言うより、知的好奇心の探究に走ってしまったからなのだが…。
「わ!私!医者の勉強してくる!」
色々落ち着いた後、ソランジェはそう言い残し、旅に出た。どうやら、多胎の出産の際の危険性と、それに対して何もできなかった自分が許せなかったらしい。
十分色々してくれたんだけどもね。
そしてソランジェは帰ってきた。
「私、絶対に産ませますから」
マッド錬金術師ソランジェの敬称にドクターが付加された。
理論が完成すると、実験をしたくなるのがマッドのサガ。
① 妊娠可能ポーションによる多胎率とそれに関わる母体の負担と健康における注意点
②多胎児の成長及び出産に関する諸注意
③出産時のトラブルについて。
「トット…臨床実験が必要だわ…」
「はいでしゅ…ソランさま…」
こうして私の手から離れて自我を持ったようなマッドは正しく暴走した。
「ハーブティを飲むのです!普通のお茶は飲まないでください!」
私は思い出しても腹が立つ、春の日の事を思い出していた。
ーーーーーーーーーーー
花が咲く季節になった。まあまあ田舎のシターンでもあちこちに花が咲き、心が浮き立つような暖かい日が続く。
子供達は元気で、タウンハウスや王城を走り回っている。しかし、アンジェリカやアレクシアの方が格上らしく、勝てない日々が続いているようだ。
「ガーデンティーパーティーがしたい、リィン何とかして!」
「ソランジェまで言うか!」
駄々を捏ねるな!自分でしろ!といいかけたが、何かと世話になっているマッド錬金術師だ。それくらいのお願いは聞いてやるべきだろう。
「あー中庭にテーブルでも出して、シェフに頼めば良いんじゃないか?」
「分かった!頼んでくる!あ、あとチョコレートケーキ食べたい!リィンちの奴!」
とてとてーと走って行くソランジェを見送って、チョコレートケーキくらいはまぁ…手配してやろう。
少し日が開いて、ソランジェのガーデンティーパーティーが開かれた。人も多くなく、こじんまりしたものだが、アルトがいた。
「リィンー!」
最近、突進具合を覚えたコーディ殿下は走ってくるも、途中で止まった。
「僕も来たよー」
「はぁ」
来たよも何もあれからコーディ殿下は我が家に居候している。子供達に取り入って旦那様の座を勝ち取ろうとしているようだ。
単に3人が可愛いだけかもしれないが。
「殿下、何故アルト陛下がいるんですか?」
「わかんないけど、アルトもみんなと遊びたいんじゃないかなー」
まだ、あの戦いの処理が残っているらしく、アルト陛下は忙しい。
「なるほど」
しかし、パーティ会場の片隅でソランジェと
「そちもワルよのう!」
「はっはっは!お代官さまにはかないませんわ!」
と、悪どそうなやり取りをしているのはどうなんだろうか?何を考えておる、アルト屋よ!
「なんだか、庭でお菓子をいただくなんて可愛いこと考えるわね、ソランジェも」
「本当ねえ。ソランジェも女の子なのだわ」
ティナとルーティアがニコニコとチョコレートケーキを食べながら言う。
「それなら女性だけでやれば良いのに、何故私を呼ぶのか」
可憐な花がついた木陰で私は椅子に座って足を組む。
まあ、うららかな陽気の中茶を飲み、甘いものを食べながら、子供達の姿を見るのも悪くないか、そう思っていた。
「良いじゃない、女の子同士でお話ししましょうよ!」
「ティナ、私を数に入れないでくれ」
「リンちゃんも、女の子みたいなものでしょ!」
「……」
解せぬ、何故幼馴染みの女性というのは強くて、話を聞かないのか。
今日はいつもより、酒の香りが強いチョコレートケーキを食べながら、ため息をついた。
2
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる