マイアバターに異世界転生したら宰相だった私に救いの手を!

鏑木 うりこ

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外伝

1 ソランジェ・ショック

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「ふーやれやれだわ」

「ほんとねぇ」

「……。」

 お腹の大きな妊婦さんが3人、柔らかい椅子に座ってハーブティを飲んでいる。

 正確には妊婦さんが2人と妊夫さんが1人である。

 そう、私はまたお腹に子供がいる。また3人いるらしい。前回と同じくらい、腹がでかい、ついでに重い。

 隣にいるのはティナとルーティアでこれまた、お腹が大きい。2人は双子なので私ほど大きくない。

 何故 こんな事になったかと言うと私を絶対に裏切らないマッド錬金術師・ドクターSが裏切ったからだ。
 裏切ったと言うより、知的好奇心の探究に走ってしまったからなのだが…。


「わ!私!医者の勉強してくる!」

 色々落ち着いた後、ソランジェはそう言い残し、旅に出た。どうやら、多胎の出産の際の危険性と、それに対して何もできなかった自分が許せなかったらしい。
 十分色々してくれたんだけどもね。

 そしてソランジェは帰ってきた。

「私、絶対に産ませますから」

 マッド錬金術師ソランジェの敬称にドクターが付加された。

 理論が完成すると、実験をしたくなるのがマッドのサガ。

① 妊娠可能ポーションによる多胎率とそれに関わる母体の負担と健康における注意点

②多胎児の成長及び出産に関する諸注意

③出産時のトラブルについて。

「トット…臨床実験が必要だわ…」

「はいでしゅ…ソランさま…」

 こうして私の手から離れて自我を持ったようなマッドは正しく暴走した。

「ハーブティを飲むのです!普通のお茶は飲まないでください!」

 私は思い出しても腹が立つ、春の日の事を思い出していた。


ーーーーーーーーーーー

 花が咲く季節になった。まあまあ田舎のシターンでもあちこちに花が咲き、心が浮き立つような暖かい日が続く。

 子供達は元気で、タウンハウスや王城を走り回っている。しかし、アンジェリカやアレクシアの方が格上らしく、勝てない日々が続いているようだ。

「ガーデンティーパーティーがしたい、リィン何とかして!」

「ソランジェまで言うか!」

 駄々を捏ねるな!自分でしろ!といいかけたが、何かと世話になっているマッド錬金術師だ。それくらいのお願いは聞いてやるべきだろう。

「あー中庭にテーブルでも出して、シェフに頼めば良いんじゃないか?」

「分かった!頼んでくる!あ、あとチョコレートケーキ食べたい!リィンちの奴!」

 とてとてーと走って行くソランジェを見送って、チョコレートケーキくらいはまぁ…手配してやろう。


 少し日が開いて、ソランジェのガーデンティーパーティーが開かれた。人も多くなく、こじんまりしたものだが、アルトがいた。

「リィンー!」

 最近、突進具合を覚えたコーディ殿下は走ってくるも、途中で止まった。

「僕も来たよー」

「はぁ」

 来たよも何もあれからコーディ殿下は我が家に居候している。子供達に取り入って旦那様の座を勝ち取ろうとしているようだ。
 単に3人が可愛いだけかもしれないが。

「殿下、何故アルト陛下がいるんですか?」

「わかんないけど、アルトもみんなと遊びたいんじゃないかなー」

 まだ、あの戦いの処理が残っているらしく、アルト陛下は忙しい。

「なるほど」

 しかし、パーティ会場の片隅でソランジェと

「そちもワルよのう!」

「はっはっは!お代官さまにはかないませんわ!」

 と、悪どそうなやり取りをしているのはどうなんだろうか?何を考えておる、アルト屋よ!

「なんだか、庭でお菓子をいただくなんて可愛いこと考えるわね、ソランジェも」

「本当ねえ。ソランジェも女の子なのだわ」

 ティナとルーティアがニコニコとチョコレートケーキを食べながら言う。

「それなら女性だけでやれば良いのに、何故私を呼ぶのか」

 可憐な花がついた木陰で私は椅子に座って足を組む。

 まあ、うららかな陽気の中茶を飲み、甘いものを食べながら、子供達の姿を見るのも悪くないか、そう思っていた。

「良いじゃない、女の子同士でお話ししましょうよ!」

「ティナ、私を数に入れないでくれ」

「リンちゃんも、女の子みたいなものでしょ!」

「……」

 解せぬ、何故幼馴染みの女性というのは強くて、話を聞かないのか。

 今日はいつもより、酒の香りが強いチョコレートケーキを食べながら、ため息をついた。

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