【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
106 / 113
オマケ リサイクル再び

7 とても良い匂いだ(フィス視点)

しおりを挟む
「あの方は……」

「どうした、フィス。お前が他人に興味を持つなんて珍しい」

「父上、黙って。ですから、あの方はどなたですか?先ほどヴェールを被った……」

「わたくしの娘、リーシャですわ」

 いつの間にか国王カリウスの傍に引き寄せられいた、美しい女性が一歩歩み出て、頭を下げる。この人がアルフローラ妃。国王カリウスの寵愛を一身に受ける女神と言われる女性か。確かにアルフローラさまは美しい、でも私の心を震わせるのはこの人ではない。
 この人からは……なんだ、母親が息子に向ける親愛みたいなものを感じるし、私もこの人の事を母として大切にしたいそう思うのだ。

「あの」

「行ってくださいますか?あの子はなのです。まだ夜会も慣れておりませぬ」

「勿論ですとも」

 賓客の皇帝の息子を会場からたたきだすような台詞。だがしかし、今の私にはそれが必要だ。それなのに空気が読めぬ我が父が余計な事を口にする。

「フィス、お前はここにいろ、人ならば誰か……」

「黙れクソ父上様。マタタビ食わせますよ」「!?」

 私の上着のポケットにはマタタビの木がいつも入っている。、何故か分からないけれどそうしないといけない気がしている。愛しい人でも釣りあげる用なのかと思っていたが、あまり頭の良くない父上を牽制するのにちょうどいいと最近気が付いた。
 獅子の獣人である父はマタタビに滅法弱い。反して狼の獣人である私にはあまり効果がない。

「少し失礼します」

 お辞儀をして踵を返す。スン、と一つ鼻を鳴らせばあの匂いを辿れそうだ。……とてもいい匂いだった、とても大好きな、もう……これはたまらない。早くこの手に捕まえなければ。

「あの……フィサリス第二皇子!」

 臭い。絡みつくような悪臭と血の匂いに膿んだどす黒い感情が渦巻く女たちが近寄ってくる。ああ、吐き気がする。これは私に害しかなさない。早く排除しないと、鼻が腐りそうだ。

「これはこれは……正妃様、側妃様と王女様ではございませんか」

 だが、足を止めて対応しなければならない。あの匂いの糸はまだたどれるが、目の前の悪臭はきつい。

「あの!フィサリス様はまだ婚約者を決めておられないとか?」

「ええ」

 どんな高貴な身分の女性に会っても心が「これは違う」と否定し続ける。だから婚約者はいないのだが

「宜しければ我が娘たちとお話などしてみませんか」「お断りです」

「え?」

 あ、しまった、本音が。

「どうした、フィス。これだけの美女が揃っておればお前とて気に居る女性もおろう?誰かいたなら帝国に連れ帰っても良いのだぞ?」

「まあ、情熱的ですことオホホ……」

 うるさいクソ父上が!こんな見てくれも最悪なやつら連れて帰る訳ないだろう。どうも父上は脳筋と言うか本能に従いすぎていて駄目だ。皇帝たろうものが、「無理やりヤれば良い」なんて考えだから、問題を起こす。最低だ、私は絶対にそんなことはしない。そう約束したから。

 誰と?分からない……。

 話に割り込んできた父上を盾に、するりと人混みを抜ける。ああ、いい匂い、食べてしまいたいくらいいい匂いの人間を追う。

「ん……」

 途中でとても似ているが、少し違う人間と合流している。こちらも好みの匂いだけれど、やはり最初の方がよりおいしそうだ。先ほどどぶ沼より臭くて醜い匂いを嗅いだから余計に好ましい。

「どこへ……ふふ、あっちか?……ん」

 またどぶ沼の臭いが混じり出した。私は少し足を早める。


 
しおりを挟む
感想 207

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...