無双してるのに、愛されすぎて歩けません(物理) 〜12歳児、異世界でちやほやされ中〜

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第2章:『恋と信仰と学園革命』

第35話 『恋とは何かと聞かれたので、サラダを盛り付けておいた件(BL×無自覚モテ)』

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──王立魔法学園・中庭。

初夏の空気に揺れる木漏れ日の中、ユウトは白いベンチに座り、レタスをちぎっていた。

「ん~、今日のはシャキシャキしてる」

目を細めながら、愛おしそうに野菜と対話する12歳児。その隣には──

「……ユウト」

「ん?」

──王子・ユリウスが立っていた。

 

***

「……さっきの料理、すごかったな」

「ありがと。でも今日のメインはね、このサラダなんだよ。ドレッシング手作りしてみたの!」

ユウトは満面の笑みで、小瓶を取り出す。

「オリーブオイルとレモン、それにちょっとだけハチミツ。隠し味に白バルサミコ!」

「白……?」

「酸味が柔らかいんだ。酢が苦手な人でも食べやすいよ」

その丁寧な説明に、ユリウスの心臓がドクンと跳ねた。

(こんなに……誰かの“やさしさ”に触れたのは、いつぶりだろう)

 

サラダを食べながら、ふとユウトがつぶやいた。

「……ねぇ、ユリウス。恋って、どんな味がするのかな?」

その瞬間──王子の世界が、止まった。

「こ、こい……?」

「うん。みんな“恋をしてる”って言うけど……ぼく、よくわからなくて。なんだか難しそうだな~って思ってたけど……」

レタスを一口、シャク。

「今の、このサラダの味みたいだったらいいなって、ちょっと思った」

 

ユリウスは崩れ落ちそうな膝を必死に支えた。

(今の……告白か? 告白なのか!? ちがう、でも……!)

「やっぱり、ぼくにはよくわかんないや」

ユウトは無邪気に笑った。

その天使の笑顔に、ユリウスは確信する。

──この子は、“理解しない”ことで、人を救うんだ。

「……恋ってのは、もっと……苦くて、辛くて、でも……どうしようもなく甘いものなんだよ……」

そうつぶやいた王子の目尻には、光るものがあった。

 

***

同時刻──

屋上では、学園の生徒たちが双眼鏡を手にユウトを監視していた。

「笑ったぞ今! 笑顔確認!」

「ユリウス様とまた距離が近い……不穏だ……」

「各派閥、対応を急げ! “ユウト争奪戦”フェーズ3に突入するぞ!」

いつの間にか結成された“学園ユウト同盟”の諜報部は、全力で推し活に勤しんでいた。

 

***

「それよりさ、次はパスタ作ってみたいな~。野菜たっぷりの」

「……ぜひ、俺にも食べさせてほしい」

「もちろんっ!」

そう答えるユウトの笑顔に──
国と人心と未来が、またひとつ、落ちた。
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