無双してるのに、愛されすぎて歩けません(物理) 〜12歳児、異世界でちやほやされ中〜

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第3章:『魔界でも恋愛フラグ立てすぎてすまん(商品開発とストーカー化が止まらない)』

第43話 『弁当箱が国宝認定された件(BL×内政ギャグ)』

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「これは……国宝だ……!」

ヴァルガ魔王が、箸を持つ手を震わせながら、声を漏らした。

ユウトが作った“焼き鮭と玉子焼き弁当”──
ただそれだけのはずの箱が、なぜか魔王城で“祭壇に飾られる”こととなった。

 

* * *

 

事の発端は、ただの昼下がり。

「お弁当……持って来たよ~」

ユウトは、魔王ヴァルガに渡すため、ひとつのお弁当箱を両手で大事そうに抱えてきた。
それは、木製の二段重ね。漆塗りの蓋には、小さなウサギの焼き印が入っていた。

「開けていい?」

「……ああ、もちろんだとも」

 

──ぱかっ。

 

ふわっと立ちのぼる、出汁の香り。
黄金色の玉子焼き、ほんのり照りのある焼き鮭、彩りよく詰められた青菜のおひたし。
炊き立てご飯の上には、ごま塩と小さな梅干し。

まるで――芸術。

 

「……この配置……まさか、五行思想に基づいた色彩配置か……?」

ヴァルガの背後で、補佐官が震える。
白(ご飯)、赤(梅干し・鮭)、黄(玉子焼き)、緑(青菜)、黒(ごま塩)――

「すべての属性を“食”で調和させている……っ!!」

 

ヴァルガは、静かに箸をとった。

ひとくち。

──ぱくっ。

 

……しゅわ、と玉子焼きが舌の上で崩れる。

「……ん」

それは、魔界の猛者たちが浴びせる刃よりも、圧倒的に心を揺さぶった。

「甘くて、優しくて……なんだこの幸福感は……!!」

彼の頬が、魔王史上初めて“ピンク色”に染まった瞬間だった。

 

「おい……これは……まさか……」

「はい、作ったの、ぼくですっ」

にこーっ、と笑うユウト。

──その瞬間。

 

「この弁当箱は! 今から魔界の国宝とする!!」

 

「異議なし!!!」

配下全員が即断。
補佐官が感涙。
魔王城の文化財管理局が、その場で弁当箱に“金枠認定シール”を貼った。

 

* * *

 

「でもこれ、返してもらえる……よね?」

「むりだ。もはや神器だ。二度と使えん」

 

そう言いながら、ヴァルガはすでに“その弁当箱専用の祭壇”を設計させていた。

祭壇には魔界産の黒曜石、金の縁取り、背後にはユウトの等身大肖像画(自作)。
さらに──

「えっと、これ、ぼくが描いた“おにぎりのイラスト”だけど……なんで拡大して壁画に……?」

「これは魔界の象徴、“神子飯聖壁画”として代々伝えようと思うのだ」

 

あっという間に宗教と美術と食文化が混ざり合い、魔界はひとつの革命を迎えていた。

 

* * *

 

その夜、城の中庭で。

「ぼく、ただごはん作っただけなんだけどなぁ……」

ユウトは、満天の星を見上げながら、おにぎりを頬張る。
彼の足元には、感極まって倒れた魔族たちが転がっていた。

そして遠くからは、瓦版(魔界新聞)の声が響く。

「号外~! 神子弁当、国宝認定! 次は“みそ汁”が世界遺産申請中~!」

 

ユウトは、にこっ、と笑って言った。

「……じゃあ次は、唐揚げ、作ろうかなぁ」

 

その笑顔が、また一国を動かすとは、まだ誰も知らなかった──。
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