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しおりを挟む『ティル…キスしたい。さっき了承の返事は貰ったよ。』
長い沈黙が明けてのジャンの言葉にドキリとした。
甘い、恋人にキスをねだるような……
『ねぇ…ティルぅ……キスぅ……』
どうしてそんな、急に…………
そんな声で囁かれたら、俺の理性が焼き切れちまう。
俺は、とりあえず返答した。
「キス…ジャンと……そうだな。確かに了承した。」
『だろう? ティルぅ…恥ずかしいの?』
──あー!! 頑張れ俺! 耐えろ!!
俺には弟妹を幸せにするという義務がぁーーー!!!
ふと、頭の中で我に返る。
こんなジャン、明らかにおかしい。
暫し考える。
学園にいても、婚約者とイチャイチャすることもない。
だが、他の婚約者同士はどうだ?
暇さえあればイチャイチャしているぞ?
正直、ジャンとのイチャイチャ妄想のネタとして見ることも多いし……
なのにジャンが婚約者に対して、大事にしたい。
その代わり、婚姻したら覚悟しておいてなんて言って、手を出していないとしたら…
焦れた婚約者がジャンに1服盛るということもある…気がする。
「どうしたんだ、ジャン。媚薬だとしたら誰に盛られたんだ? 婚約者か? だとしたら、ちゃんとその女を襲ってやれよ。
俺は帰る。」
俺はジャンの目を見ることもできないまま、ジャンの部屋のバルコニーを後にした。
翌朝…
目覚めた僕は、ティルに手紙を書いた。
─昨夜の僕の気持ちは本物だ。
話がある。
今晩、また僕の部屋に訪ね来て。
窓の鍵は、開けておくから。─
今日の手紙は、どうしてもティルに届いて欲しくて、昨夜のバルコニーに出てから手紙を送る魔法陣を出す。
魔法陣の起動により、手紙は小鳥に姿を変え、飛び立つ。
………………が、
キェーーーッ
ピィーッ
突如、大きな鳥に襲われた。
僕の放った手紙の小鳥は、逃げ惑うも捕まり、庭に落ちてしまった。
ピュイィィィーーーー
そこへ、指笛の音が響く。
音は、地上から聞こえているようだ。
バササッ
大きな鳥は一度羽ばたくと急降下し、一直線に地上の1点を目指す。
バササッ
羽根を閉じて何者かの肩に乗る。
肩に大きな鳥を乗せた人物は、庭をスタスタと歩いて僕の手紙の鳥の落下地点までやって来ると、指でつまみ上げるようにして持ち上げ、右掌で魔法を解いて手紙の形に戻した。
そして中を読んでから、魔法で手紙を燃やした。
その人物が、振り返ろうと体を捻……
僕は慌ててバルコニーの中へ身を隠す。
けれど、ちょっとだけ頭を出すようにして確認すれば、大きな鳥を扱い僕の手紙を燃やしたのは、爺やだった。
──これまでの手紙も、もしかしたら全部………………
僕の中に疑念が生まれた瞬間だった。
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