【完結】匂いフェチと言うには不自由すぎる

325号室の住人

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僕は、雲のベッドに乗って空を泳ぐ夢を見ていた。
ふわふわ……とても気持ちよかった。

それから、少し大きな雲まで移動したら、そこにティルがいて、僕達は木陰で昼寝してるんだ。

僕はティルの膝枕で、右手を伸ばしてティルの髪や頬に触れた。

ティルは僕に微笑んで、僕の髪を梳いたり、頬を撫でたりしてくれている。

それから言うのだ。

『ジャン、好きだよ。』
と。

そして僕も言う。

『僕もティルのことが好きだ。』
と。

そして、ティルの顔がどんどん近付いて来て、僕がギュッと目を閉じてる間に…

チュッ

あ、いや、音まではしなかった。けれど、唇には確かに柔らかな感触がある。

『ティルごめん。緊張して目を閉じちゃったよ。
もう1回、して…』

夢の中の僕は、素直だなぁ。

ティルは、右手の甲を唇に押し当てるようにしながら、耳まで赤くなってる。

僕は起き上がって、そんなティルに近付き、抱き着くと、その真っ赤になってる左耳を甘噛した。

美味しそうで……

「ぁあっ……」

ティルからの色っぽい声に、僕は我慢できなくてティルの上に乗……………………


ドサドサドサゴテゴテン…


「イタタタタ…」
「イテテテ…」

瞼を上げるとそこは屋外で、僕は何故か、地面に転がるティルに跨がって、ワンピースの裾をティルの顔に掛けていた。

僕は慌ててティルの上から飛び退いた。






俺は、暫く俺の膝枕で眠るジャンの髪に指を差し込んでは、その手触りを楽しんでいた。

けれど、ポカポカした陽射しが暖かくて、ウトウトしてしまったようだ。
前に向かってコックリコックリしていた俺は、あろうことがジャンにキスしてしまったところで目が覚めた。

咄嗟に唇を離して、手の甲に唇を押し付けるようにして、口元のよだれを拭った。

焦って真っ赤になってたと思う。

すると、不意に左の耳たぶをジャンに噛まれた。

「ぁあっ……」

変な声を出してしまって狼狽していると、急に左からジャンの重みを感じて、ベンチから落ちた。

頭を打たないように咄嗟に後ろ受け身したら、上がった頭のせいで、ワンピースの裾越しの柔らかな光の中に、ジャンの股間が─もちろん下着は着用してる。左右で結ぶタイプの紐パンだけどな─御開帳…………

すると、

バササッ

ジャンが跳び去った。


まぁ、いつもと同じで寝ぼけたみたいだな。

俺は、立ち上がるジャンに手を貸そうとジャンに近付いて手を差し出したところで、

「ティル、大変だ! 鼻から血が出てる。」

言われて、慌てて鼻に触れる直前に、ジャンのハンカチが俺の鼻の下に押し当てられた。

「あ、あそこにベンチがある。少し休もうよ。」

ジャンに手を引かれて、最初のベンチに戻ってきた。
俺がベンチの右側へ、ジャンが左側へ座ると、

「ホラ。」

ジャンが自分の膝を叩く。

「?」

「もう!」

首を傾げた俺の首をひっ捕まえて、ジャンが自分の膝に、俺の頭を乗せた。

俺は気付くと、鼻血の出た左を下にしてジャンに膝枕していた。

「止まるまで、ここで休もう。」

言いながら俺の額に触れたジャンの手が冷たくて、気持ち良かった。


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