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第2話 情けない《自分》
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区立藍坂看護専門学校は利里が2年前から通っている看護の学校である。1クラス40人制のアットホームな雰囲気の学校でなおかつ、今年も国家試験の合格率は100パーセントを達する優秀な専門学校だ。しかも看護に対し、意欲的な生徒や天才肌な生徒が多数在籍をしているのだが、優秀すぎるがゆえに 弊害もある。
それは、先生方の指導が区内の中でもいささか厳しいと評判の学校なのだ。だからこそ留年をする生徒もある程度の確率で出てしまうのだが……おわかりいただけただろう。
――その留年をしてしまった愚か者、それが乾 利里であるのだ。
「はぁ~。また追い出された。あの先生、聞く耳持たなすぎるでしょ……」
ふて腐れたように歩きながら利里は学生ホールへと向かう前に、今いるクラスへ歩を進めて引き戸の前に立つ。恐々として引き戸を開けようとした……その時であった。
――ガラッ!
「あっ……」
「あっ、えっと……」
現れた背の高い、黒髪をかき分けた端正な顔立ちの青年に、利里は頭の中で過っては声を掛けようとする。
だが黒髪短髪イケメンな彼を取り巻いている女子たちは、動かない彼を不思議に思って、自らの胸へ引き込むように腕の引っ張りあいをしている。
……悲しきかな。彼女らは普遍な顔立ちの利里には眼中にない。
「蒼柳くん~、なに突っ立っているの~?」
「早く教員室に行こうよ~? おなかすいたぁ~」
「あ、うん」
利里に会釈をして立ち去ってしまう真緒こと蒼柳 真緒は、少し薄っぺらな笑みを見せてその場から立ち去った。そんな状況を目の当たりにし、利里は自身の状況を振り返っては盛大に吐き出す。そして踵を変え、学生ホールへと足を向けて考えていた。
(先生から聞いた話だけど。蒼柳は現役生だけど俺の1個下なんだよな。浪人して、この専門学校に来たのだろうけど)
話したことはない。ただ女の子が群がっていて印象が強く残っていただけだ。そんな赤の他人すぎる純白イケメンに、利里は嫌な表情を浮かべた。あの薄ら笑いだって自分を軽蔑している目のだろうかと思うと、自分が恥ずかしくて堪らない。
――だが不登校を繰り返し、2回も留年をして……今やもう。もう1度留年でもしたら”退学”というのが今の状況だ。”恥の多い人生だ”なんていうフレーズがあるが、今の自分には笑えない。
……どうせあいつを含めた、あの連中なんて俺のことすげぇ馬鹿な奴って思っているのだろうな。まぁ、
――本当にそうだから言えないのだけれど。
「はぁ、まぁクラスメートとは馴染めてはいないけれど……今はテストに単位取得のテストに向けての勉強だ」
(まずはお昼食べてから自習学習しないと。今回のテストも過去問だけじゃ対策できないだろうから、しっかり復習をして……)
そんなことを考えながら、学生ホールと呼ばれた場所へと利里は入室をする。
学生ホールは図書室とは違い飲み食いオッケー、雑談オッケーの場所だ。しかもコピー機も自販機も、さらには電子レンジや流し台に給水機もある。かなり優れた場所なのだ。だから利里はこの場所を気に入っている。便利だからというのもあるが、もう1つの目的もあるのだ。それは自身が内心、密かな楽しみをしていること。
禁断だと思っている感情を持った相手と会うのが、利里の幸福に繋がるのだ。その相手は実習用の計画書を書きながらご飯を食べていた。彼は縁取った眼鏡を掛けている。
(あ、今日は居る。実習の休憩所がこの場所なんだ)
嬉しさで胸を高鳴らせたと同時に利里は少し緊張をした面持ちで、計画書を書いている彼に声を掛けるのだ。気づいた黒髪の天然パーマがかかった彼は、利里の声に反応し、明るく笑った。
それは、先生方の指導が区内の中でもいささか厳しいと評判の学校なのだ。だからこそ留年をする生徒もある程度の確率で出てしまうのだが……おわかりいただけただろう。
――その留年をしてしまった愚か者、それが乾 利里であるのだ。
「はぁ~。また追い出された。あの先生、聞く耳持たなすぎるでしょ……」
ふて腐れたように歩きながら利里は学生ホールへと向かう前に、今いるクラスへ歩を進めて引き戸の前に立つ。恐々として引き戸を開けようとした……その時であった。
――ガラッ!
「あっ……」
「あっ、えっと……」
現れた背の高い、黒髪をかき分けた端正な顔立ちの青年に、利里は頭の中で過っては声を掛けようとする。
だが黒髪短髪イケメンな彼を取り巻いている女子たちは、動かない彼を不思議に思って、自らの胸へ引き込むように腕の引っ張りあいをしている。
……悲しきかな。彼女らは普遍な顔立ちの利里には眼中にない。
「蒼柳くん~、なに突っ立っているの~?」
「早く教員室に行こうよ~? おなかすいたぁ~」
「あ、うん」
利里に会釈をして立ち去ってしまう真緒こと蒼柳 真緒は、少し薄っぺらな笑みを見せてその場から立ち去った。そんな状況を目の当たりにし、利里は自身の状況を振り返っては盛大に吐き出す。そして踵を変え、学生ホールへと足を向けて考えていた。
(先生から聞いた話だけど。蒼柳は現役生だけど俺の1個下なんだよな。浪人して、この専門学校に来たのだろうけど)
話したことはない。ただ女の子が群がっていて印象が強く残っていただけだ。そんな赤の他人すぎる純白イケメンに、利里は嫌な表情を浮かべた。あの薄ら笑いだって自分を軽蔑している目のだろうかと思うと、自分が恥ずかしくて堪らない。
――だが不登校を繰り返し、2回も留年をして……今やもう。もう1度留年でもしたら”退学”というのが今の状況だ。”恥の多い人生だ”なんていうフレーズがあるが、今の自分には笑えない。
……どうせあいつを含めた、あの連中なんて俺のことすげぇ馬鹿な奴って思っているのだろうな。まぁ、
――本当にそうだから言えないのだけれど。
「はぁ、まぁクラスメートとは馴染めてはいないけれど……今はテストに単位取得のテストに向けての勉強だ」
(まずはお昼食べてから自習学習しないと。今回のテストも過去問だけじゃ対策できないだろうから、しっかり復習をして……)
そんなことを考えながら、学生ホールと呼ばれた場所へと利里は入室をする。
学生ホールは図書室とは違い飲み食いオッケー、雑談オッケーの場所だ。しかもコピー機も自販機も、さらには電子レンジや流し台に給水機もある。かなり優れた場所なのだ。だから利里はこの場所を気に入っている。便利だからというのもあるが、もう1つの目的もあるのだ。それは自身が内心、密かな楽しみをしていること。
禁断だと思っている感情を持った相手と会うのが、利里の幸福に繋がるのだ。その相手は実習用の計画書を書きながらご飯を食べていた。彼は縁取った眼鏡を掛けている。
(あ、今日は居る。実習の休憩所がこの場所なんだ)
嬉しさで胸を高鳴らせたと同時に利里は少し緊張をした面持ちで、計画書を書いている彼に声を掛けるのだ。気づいた黒髪の天然パーマがかかった彼は、利里の声に反応し、明るく笑った。
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