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《事故という名の事後》
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事故という名の事後であるが、俺は放心している状態の唯センコーや意外と意識がはっきりしている自分の身の回りをきれいにしていた。
空き教室だったがティッシュなどがあって助かったと内心で安堵して、俺は自分や唯センコーの吐き出した欲をティッシュで包む。
そのまま捨てようかと思ったがここは教室だ。さすがに男の臭い精液がごみ箱に入っていたら先輩方も卒倒するなと思ったので、俺は色付きの袋で閉じて可燃ごみへ捨てに行く。
それから食堂へ足を運んだ。唯センコーが放心していたので目を覚まさせる為にコーヒーでも奢ろうかと考えたからだ。
食堂には幸い人がそこまでいなかった。俺は安心して自販機で冷たいコーヒーとカフェオレを購入し、上へと上がる。その時であった。「あっ、キュウさんっ! まだ残っていたんだっ!」なんと学生ホールと呼ばれる扉から出てきたのは、今日、親しくなった実里ちゃんだったのだ。俺は背筋を伸ばす。
実里ちゃんはにこやかな笑みを浮かべて俺に近寄ってきた。「どこかで勉強でもしていたの? よかったら一緒にやらない?」嬉しいが今はありがたくはない。なので俺は困ったように笑う。
「ごめんね。先生を待たせてあるからさ。また今度一緒にやろうね?」
じゃっ、と言って俺は実里ちゃんから瞬時に離れた。俺、臭くないかな? 汗臭くないかな。こういう時、制汗スプレーとか持ってくれば良かったと俺は身体を嗅ぎながら慌てた様子で離れに向かう。
離れの教室に向かってドアをノックして開け放つ。すると唯センコーがまだぼんやりとした顔をしていた。俺は息を吐いて冷たいコーヒーを唯センコーの額に押し当てる。「ひぃっあっ!?」
可愛らしい声を上げてビクつく唯センコーに俺は息を吐いて両手を前に差し出した。「コーヒーの微糖かカフェオレのどっちがいいですか?」
唯センコーは俺の問いかけにはっとして「じゃあ、あの……カフェオレがいいな」そう恨めしいぐらい可愛らしく呟いたのだ。その天然なあざとさに負けてしょうがなく俺は冷たいカフェオレを差し出した。唯センコーの手が触れる。「ありが、とう……」
「……いいえ」
缶のカフェオレの音と俺が開いた微糖のコーヒーのプルタブの音が鳴る。それから俺たちは無心でコーヒーを飲んでいた。でもあまりにも無言の空間だし、というか、こんな犯罪めいたこと(どっちもだけどね)してしまえば自分たちのどう醜態を黙らせるかが鍵になる。
俺は自分の脳内にあるフラッシュ暗算で考え抜いた。それから叩き出す。
「さっきのは事故です」
「……えっ?」
「俺の暴力で良いので。最悪、退学で良いので今回のことはそれで帳消ししてください」
俺が弾き出したのは自分が犠牲になるということだった。訴訟ものになるだろうが、そしたらそしたらでこっちも何とかしようと俺は考えた。
「最初に誘ったのは先生の方です」そう正直に伝えれば言った言わなかったの骨肉の争いになるが、このあばずれも巻き込まれる。それで運が良ければ俺に慰謝料が払われる。
我ながらあざとい戦術だ。さぁ、どう出るショタ眼鏡センコー?
「……嫌だ。僕は君のこと、退学にさせたくないよ」
唯センコーが急に泣き出しそうな顔をした。でも本当に泣いてしまいそうな顔をするので俺は正直慌てた。やばい、これはまずい展開になった……!
「僕は……、僕がいけなかった、からぁっ……、ひぃっくっ、お願いっ、辞めないでっ……」
それから泣き出してしまうめんどくさいメンヘラ唯センコーに俺は勝手にため息が出てしまった。もうこの人、――めんどくさい。
「……わかりました。辞めませんから、じゃあどうすれば帳消ししてくれますか?」
すると唯センコーは潤んだ瞳で俺を見上げて言い放つ。「……付き合って、欲しい」俺は耳を疑ってしまった。それから大学で酔った勢いでセックスに持ち込んだ大学生の気持ちをしみじみ感じたのだ。
空き教室だったがティッシュなどがあって助かったと内心で安堵して、俺は自分や唯センコーの吐き出した欲をティッシュで包む。
そのまま捨てようかと思ったがここは教室だ。さすがに男の臭い精液がごみ箱に入っていたら先輩方も卒倒するなと思ったので、俺は色付きの袋で閉じて可燃ごみへ捨てに行く。
それから食堂へ足を運んだ。唯センコーが放心していたので目を覚まさせる為にコーヒーでも奢ろうかと考えたからだ。
食堂には幸い人がそこまでいなかった。俺は安心して自販機で冷たいコーヒーとカフェオレを購入し、上へと上がる。その時であった。「あっ、キュウさんっ! まだ残っていたんだっ!」なんと学生ホールと呼ばれる扉から出てきたのは、今日、親しくなった実里ちゃんだったのだ。俺は背筋を伸ばす。
実里ちゃんはにこやかな笑みを浮かべて俺に近寄ってきた。「どこかで勉強でもしていたの? よかったら一緒にやらない?」嬉しいが今はありがたくはない。なので俺は困ったように笑う。
「ごめんね。先生を待たせてあるからさ。また今度一緒にやろうね?」
じゃっ、と言って俺は実里ちゃんから瞬時に離れた。俺、臭くないかな? 汗臭くないかな。こういう時、制汗スプレーとか持ってくれば良かったと俺は身体を嗅ぎながら慌てた様子で離れに向かう。
離れの教室に向かってドアをノックして開け放つ。すると唯センコーがまだぼんやりとした顔をしていた。俺は息を吐いて冷たいコーヒーを唯センコーの額に押し当てる。「ひぃっあっ!?」
可愛らしい声を上げてビクつく唯センコーに俺は息を吐いて両手を前に差し出した。「コーヒーの微糖かカフェオレのどっちがいいですか?」
唯センコーは俺の問いかけにはっとして「じゃあ、あの……カフェオレがいいな」そう恨めしいぐらい可愛らしく呟いたのだ。その天然なあざとさに負けてしょうがなく俺は冷たいカフェオレを差し出した。唯センコーの手が触れる。「ありが、とう……」
「……いいえ」
缶のカフェオレの音と俺が開いた微糖のコーヒーのプルタブの音が鳴る。それから俺たちは無心でコーヒーを飲んでいた。でもあまりにも無言の空間だし、というか、こんな犯罪めいたこと(どっちもだけどね)してしまえば自分たちのどう醜態を黙らせるかが鍵になる。
俺は自分の脳内にあるフラッシュ暗算で考え抜いた。それから叩き出す。
「さっきのは事故です」
「……えっ?」
「俺の暴力で良いので。最悪、退学で良いので今回のことはそれで帳消ししてください」
俺が弾き出したのは自分が犠牲になるということだった。訴訟ものになるだろうが、そしたらそしたらでこっちも何とかしようと俺は考えた。
「最初に誘ったのは先生の方です」そう正直に伝えれば言った言わなかったの骨肉の争いになるが、このあばずれも巻き込まれる。それで運が良ければ俺に慰謝料が払われる。
我ながらあざとい戦術だ。さぁ、どう出るショタ眼鏡センコー?
「……嫌だ。僕は君のこと、退学にさせたくないよ」
唯センコーが急に泣き出しそうな顔をした。でも本当に泣いてしまいそうな顔をするので俺は正直慌てた。やばい、これはまずい展開になった……!
「僕は……、僕がいけなかった、からぁっ……、ひぃっくっ、お願いっ、辞めないでっ……」
それから泣き出してしまうめんどくさいメンヘラ唯センコーに俺は勝手にため息が出てしまった。もうこの人、――めんどくさい。
「……わかりました。辞めませんから、じゃあどうすれば帳消ししてくれますか?」
すると唯センコーは潤んだ瞳で俺を見上げて言い放つ。「……付き合って、欲しい」俺は耳を疑ってしまった。それから大学で酔った勢いでセックスに持ち込んだ大学生の気持ちをしみじみ感じたのだ。
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