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《ツンデレ、ヤンデレ、メンヘラっ!?》
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さすがに混乱した頭では得意の脳内フラッシュ暗算を導き出せない。なので俺は一つ咳払いをして頭を冷やそうかと考えた。しかし、なんとなく電灯の光が神々しく見えてきた気がした。なんだかここに居てはいけない気がしてならない。
(……なんか、辺りが暗い感じがするな?)
閉ざされていたカーテンを開けるともう夜だと判明する。時刻ももう既に夜の七時頃であった。
俺は考えるのが馬鹿馬鹿しくなって再び咳払いをする。それから唯センコーへ話しかけたんだ。「……とりあえず、帰りましょうか」
「あ、う、うんっ!」
唯センコーは涙をワイシャツの袖で拭い帰り支度を始める。それから俺たちは別れて俺は自分の教室で荷物を取って帰って、さてどうしようかという話になった。俺はもう一人きりで身軽な状態である。リュックには看護の教科書が詰まっているが、先ほどの無言で重たい雰囲気なんかよりも身軽に感じた。
(……帰っちまおうかな。それでチャラになるんなら良いし)
でも帰れない自分が居た。だからそのまま職員室へ向かってドアの所で待ち伏せた。守衛さんやほかの先生方も帰っていく中で、俺はなにやってんだろうなぁなんて思った。こんなことをしたってなにが起こるというのだ。
「……俺、バカなことしたなぁ~」
息を吐いてさぁ帰ろうかなと思っているとドアが開いたのでなんとなく覗く。すると似合わない銀縁眼鏡を掛けた唯センコーがきょとんとした表情を浮かべて俺を見るではないか。それから真っ赤に熟れたリンゴのような頬をして俺を見上げる。「えっと、あの……、帰っていると、思ってた……」
最後の方は恥ずかしさでしぼんでいたが、でもどこか嬉しそうな声色をしていた。あの事故があってからツンツンしていて小言を言う唯センコーが可愛さで満ち溢れていることに俺の心臓が高鳴る。なんだこれっ、なんだこのよくわからない、得体のしれない心情は……!?
俺はその感情を拭い去るように足早に出ようとした。「さっさと帰りますよ、暗いんですからっ!」俺が足早な口調と声で去ろうとすると追いかけるように唯センコーが駆ける。それから俺の手をそっと握ったんだ。
「手、握っても良い、かな?」
銀縁眼鏡の奥に宿る大きな瞳に見つめられ、射止められて俺は振り払うことが叶わなかった。「……別に、邪魔じゃなければ」俺ができることはただ、そっけない態度を取ることしかできないでいたんだ。
校門を抜けて駅から約十五分の緑豊かな道を歩いていく。まるで恋人のように手を繋ぎながら、俺と唯センコーは歩いていた。
まだ唯センコーと結ばれたわけではない。本気で結ばれたわけではないと俺は考えている。「……先生は、なんであんな色仕掛けをかましたんですか?」
俺は率直な問いかけをした。どうしてハニートラップに掛からなければならなかったのか、ということだ。あんな事故がなかったら俺は普通に看護学生の生活を送れたのに。
すると唯センコーは瞬時に答えたんだ。「……ヤキモチしたんだ」
「えっ、ヤキモチ?」
「うん。僕は君に一目ぼれしてから君のことしか眼中にないんだ。だから君が女の子で、しかも可愛い現役生の子と話しているのを見かけると、……君を含めた人間を殴りたくなる」
なんか急に怖いこと言ってきたんですけど、この人。電柱の電灯が光って眼鏡が光ったぞ。おい。
「現役生にキャッキャされてニヤついている君をビンタして羽交い絞めにして簀巻きにして、僕だけしか見ないでいるようにしたくなるんだよね」
おい。こいつはツンデレではなくてヤンデレ確定だぞ!? もうメンヘラでもあるから俺は面倒な奴に好かれたってことじゃねぇかっ。
でも、それでも唯センコーは話を紡いだんだ。それはあの初対面の時からであった。
(……なんか、辺りが暗い感じがするな?)
閉ざされていたカーテンを開けるともう夜だと判明する。時刻ももう既に夜の七時頃であった。
俺は考えるのが馬鹿馬鹿しくなって再び咳払いをする。それから唯センコーへ話しかけたんだ。「……とりあえず、帰りましょうか」
「あ、う、うんっ!」
唯センコーは涙をワイシャツの袖で拭い帰り支度を始める。それから俺たちは別れて俺は自分の教室で荷物を取って帰って、さてどうしようかという話になった。俺はもう一人きりで身軽な状態である。リュックには看護の教科書が詰まっているが、先ほどの無言で重たい雰囲気なんかよりも身軽に感じた。
(……帰っちまおうかな。それでチャラになるんなら良いし)
でも帰れない自分が居た。だからそのまま職員室へ向かってドアの所で待ち伏せた。守衛さんやほかの先生方も帰っていく中で、俺はなにやってんだろうなぁなんて思った。こんなことをしたってなにが起こるというのだ。
「……俺、バカなことしたなぁ~」
息を吐いてさぁ帰ろうかなと思っているとドアが開いたのでなんとなく覗く。すると似合わない銀縁眼鏡を掛けた唯センコーがきょとんとした表情を浮かべて俺を見るではないか。それから真っ赤に熟れたリンゴのような頬をして俺を見上げる。「えっと、あの……、帰っていると、思ってた……」
最後の方は恥ずかしさでしぼんでいたが、でもどこか嬉しそうな声色をしていた。あの事故があってからツンツンしていて小言を言う唯センコーが可愛さで満ち溢れていることに俺の心臓が高鳴る。なんだこれっ、なんだこのよくわからない、得体のしれない心情は……!?
俺はその感情を拭い去るように足早に出ようとした。「さっさと帰りますよ、暗いんですからっ!」俺が足早な口調と声で去ろうとすると追いかけるように唯センコーが駆ける。それから俺の手をそっと握ったんだ。
「手、握っても良い、かな?」
銀縁眼鏡の奥に宿る大きな瞳に見つめられ、射止められて俺は振り払うことが叶わなかった。「……別に、邪魔じゃなければ」俺ができることはただ、そっけない態度を取ることしかできないでいたんだ。
校門を抜けて駅から約十五分の緑豊かな道を歩いていく。まるで恋人のように手を繋ぎながら、俺と唯センコーは歩いていた。
まだ唯センコーと結ばれたわけではない。本気で結ばれたわけではないと俺は考えている。「……先生は、なんであんな色仕掛けをかましたんですか?」
俺は率直な問いかけをした。どうしてハニートラップに掛からなければならなかったのか、ということだ。あんな事故がなかったら俺は普通に看護学生の生活を送れたのに。
すると唯センコーは瞬時に答えたんだ。「……ヤキモチしたんだ」
「えっ、ヤキモチ?」
「うん。僕は君に一目ぼれしてから君のことしか眼中にないんだ。だから君が女の子で、しかも可愛い現役生の子と話しているのを見かけると、……君を含めた人間を殴りたくなる」
なんか急に怖いこと言ってきたんですけど、この人。電柱の電灯が光って眼鏡が光ったぞ。おい。
「現役生にキャッキャされてニヤついている君をビンタして羽交い絞めにして簀巻きにして、僕だけしか見ないでいるようにしたくなるんだよね」
おい。こいつはツンデレではなくてヤンデレ確定だぞ!? もうメンヘラでもあるから俺は面倒な奴に好かれたってことじゃねぇかっ。
でも、それでも唯センコーは話を紡いだんだ。それはあの初対面の時からであった。
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