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《この鼓動はなに?》
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すると電話越しで沈黙が続いていた。俺はその沈黙が長く感じてしまう。どうしてだろうか。どうしてこんなことで、――ドキドキする自分が居るのだろう。でもそれは嫌な鼓動なのか心地よい鼓動なのか判別つかないのが幸いであった。
唯センコーは嬉しそうに笑っていた。『ふふっ! じゃあ教えてくれるかな? はぁ~、勇気を出して言って良かった!』
「あ、はは……。ははっ!」
すると俺も勝手に笑っていた。あと夜勤の終了時刻まで仮眠を入れて五時間、か……。
俺は緊張の糸が解けたように欠伸をしてから最寄り駅と夜勤の終了時刻を告げた。それから待ち合わせ場所を指定した。待ち合わせ場所は駅の中にあるカフェにした。唯センコーは俺の言葉を聞いてどこか安心したように欠伸をしていた。大きな丸い瞳が涙目になる姿はさぞ可愛いだろうと俺はふと想像して頭を振る。
『じゃあ、また朝にね~。ふわぁ、久しぶりに夜更かししたぁ。じゃあ、あの……またね?』
「はい、また朝に」
それから俺はスマホの電話を切って仮眠室のベッドに横になった。本当はちゃんと眠りたかったのに唯センコーの乱れた姿が頭を想起しうまく眠れなかったのが今回の辛いところだ。まっ、どうしてそうなったのか知らないけどね。
夜勤は無事に終わり、俺は施設長や職員さん方に挨拶をしてからアルバイト先を出た。今回は死にかけた患者さんもいたが、なんとか夜を過ごせたようだ。
「はぁ~……、あー……、疲れたぁ~……」俺は直帰せずに駅前のカフェに向かう。朝はもう日が照っていて、太陽の光が霞んで見えた。ふらつきはないが頭がぼんやりとする。よく仕事をさせてくれたな、などと俺は施設長に深く感謝をした。
まぁ、仕事では気が抜けないから機敏に動けて良かったけどね。看護師さんの隣でおむつ交換したり、体位交換したりできたからいいんだけどね。
そんなこんなで駅前に着いてカフェへと向かう。すると見知った顔の人物がカフェの前でスマホを弄っていた。「……唯原せんせー?」
唯原せんせーは今日、眼鏡を掛けていなかった。コンタクトでもしているのだろうか。
どうしたのだろうと思って霞む目元を抑えて尋ねる。「眼鏡、どうしたんですか? まさか壊したとか?」
「そう、そのまさかなんだよね~。眼鏡掛けたまま寝ていたら眼鏡が変形しちゃってさ。でも、明日ぐらいにまた同じ型の銀縁眼鏡にしようかなぁとか」
「……せんせーは銀縁眼鏡より黒縁眼鏡みたいな感じで丸い眼鏡の方が似合いますよ」
「えっ、そ、そう……なの?」
カフェに入り俺は眠気覚ましLサイズのアイスコーヒーと腹が空いたのでモーニングのホットサンドを頼んだ。唯センコーはもっちり泡のMサイズのカフェラテを頼んでいる。あったかいのが好きなんだろうな、などと俺はどうしてだが脳内にメモを取る自分が居た。
ここはその場で作ってくれるので俺たちはカウンターで待ちつつ先ほどの眼鏡の話をした。唯センコーが大きな瞳で少し考え込んでいた。「でっ、でも、銀縁眼鏡の方が似合うって、あの……」
「今の彼氏ですか?」
「違うよっ、元カレだよっっ、って、あっ……――」
店内に響き渡る唯センコーの声に俺はおかしくなって少し笑ってしまう。そんな慌てた声を上げなくても別に平気なのに。すると唯センコーは少し顔を紅潮させてそっぽを向いていたんだ。「も、もう……。へんなこと言わせないでよっ!」
「あははっ、ごめんなさい。時間があるとき似合う眼鏡がないか付き合いますよ。今日来てくれたお礼に」
「えっ、ほっ、ほんとっ!?」
えっ、あっ、あれ、なに言ってんだ俺は? そんな面倒なこと自分から言うなんて。でも引っ込みがつかないぞ?
そんなこんなでカウンターでアイスコーヒーとホットサンド、それからもっちり泡のカフェラテが運ばれてきたのだ。俺はかなり自分に対して動揺をしている。
唯センコーは嬉しそうに笑っていた。『ふふっ! じゃあ教えてくれるかな? はぁ~、勇気を出して言って良かった!』
「あ、はは……。ははっ!」
すると俺も勝手に笑っていた。あと夜勤の終了時刻まで仮眠を入れて五時間、か……。
俺は緊張の糸が解けたように欠伸をしてから最寄り駅と夜勤の終了時刻を告げた。それから待ち合わせ場所を指定した。待ち合わせ場所は駅の中にあるカフェにした。唯センコーは俺の言葉を聞いてどこか安心したように欠伸をしていた。大きな丸い瞳が涙目になる姿はさぞ可愛いだろうと俺はふと想像して頭を振る。
『じゃあ、また朝にね~。ふわぁ、久しぶりに夜更かししたぁ。じゃあ、あの……またね?』
「はい、また朝に」
それから俺はスマホの電話を切って仮眠室のベッドに横になった。本当はちゃんと眠りたかったのに唯センコーの乱れた姿が頭を想起しうまく眠れなかったのが今回の辛いところだ。まっ、どうしてそうなったのか知らないけどね。
夜勤は無事に終わり、俺は施設長や職員さん方に挨拶をしてからアルバイト先を出た。今回は死にかけた患者さんもいたが、なんとか夜を過ごせたようだ。
「はぁ~……、あー……、疲れたぁ~……」俺は直帰せずに駅前のカフェに向かう。朝はもう日が照っていて、太陽の光が霞んで見えた。ふらつきはないが頭がぼんやりとする。よく仕事をさせてくれたな、などと俺は施設長に深く感謝をした。
まぁ、仕事では気が抜けないから機敏に動けて良かったけどね。看護師さんの隣でおむつ交換したり、体位交換したりできたからいいんだけどね。
そんなこんなで駅前に着いてカフェへと向かう。すると見知った顔の人物がカフェの前でスマホを弄っていた。「……唯原せんせー?」
唯原せんせーは今日、眼鏡を掛けていなかった。コンタクトでもしているのだろうか。
どうしたのだろうと思って霞む目元を抑えて尋ねる。「眼鏡、どうしたんですか? まさか壊したとか?」
「そう、そのまさかなんだよね~。眼鏡掛けたまま寝ていたら眼鏡が変形しちゃってさ。でも、明日ぐらいにまた同じ型の銀縁眼鏡にしようかなぁとか」
「……せんせーは銀縁眼鏡より黒縁眼鏡みたいな感じで丸い眼鏡の方が似合いますよ」
「えっ、そ、そう……なの?」
カフェに入り俺は眠気覚ましLサイズのアイスコーヒーと腹が空いたのでモーニングのホットサンドを頼んだ。唯センコーはもっちり泡のMサイズのカフェラテを頼んでいる。あったかいのが好きなんだろうな、などと俺はどうしてだが脳内にメモを取る自分が居た。
ここはその場で作ってくれるので俺たちはカウンターで待ちつつ先ほどの眼鏡の話をした。唯センコーが大きな瞳で少し考え込んでいた。「でっ、でも、銀縁眼鏡の方が似合うって、あの……」
「今の彼氏ですか?」
「違うよっ、元カレだよっっ、って、あっ……――」
店内に響き渡る唯センコーの声に俺はおかしくなって少し笑ってしまう。そんな慌てた声を上げなくても別に平気なのに。すると唯センコーは少し顔を紅潮させてそっぽを向いていたんだ。「も、もう……。へんなこと言わせないでよっ!」
「あははっ、ごめんなさい。時間があるとき似合う眼鏡がないか付き合いますよ。今日来てくれたお礼に」
「えっ、ほっ、ほんとっ!?」
えっ、あっ、あれ、なに言ってんだ俺は? そんな面倒なこと自分から言うなんて。でも引っ込みがつかないぞ?
そんなこんなでカウンターでアイスコーヒーとホットサンド、それからもっちり泡のカフェラテが運ばれてきたのだ。俺はかなり自分に対して動揺をしている。
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