17 / 26
《一緒に居たい》
しおりを挟む
俺は動揺している自分を隠しながら席に着いた。カフェにあるテーブル席で唯センコーと向かい合って座るのだが、……唯センコーの顔がどうしてだがまともに見られないのだ。なんだ、この気持ちは!?
俺がそう考えていると唯センコーがカフェラテを一口飲んで顔を薄紅色に染めていた。「美味しいなぁ~。ほっとするっていうか、なんていうか……」それから笑うあどけない瞳をした唯センコーの表情が眩しく見えてしまうのだ。
俺は誤魔化すようにハムチーズのホットサンドを思いっきり食んだ。唯センコーが眩しく見えるのは腹が空いているのと少し眠いからだと思い込ませたんだ。
もぐもぐと食べていると唯センコーが物欲しそうな顔をする。もしかして腹が減っているのかな、そう思ってハムチーズのホットサンドを唯センコーへ差し出した。
「どうぞ、俺の食べかけですけど」
「えっ、いいの!?」
「嫌なら別にいいですけど……」
すると唯センコーはかぶりを振ってそのままかぶりついた。でも口元が小さいのでかぶりついても一口が俺よりも小さい。だから俺はなんとなく口元を綻ばせて笑ってしまう。「ふふっ、小さいじゃないですか。もっと大きく食べて良いですよ?」
しかしそれでも唯センコーはもぐもぐと咀嚼して食べ始めて喉元を鳴らして飲み込んだ。それからあどけない表情で誇るような笑みを見せる。
「君が笑うと僕も嬉しいな。あっ、ちなみに僕は君の君自身ならたとえ口元が小さくても根本を僕の喉元以上に飲み込んでみせるよ」
「なっ……!? なに朝っぱらから……」
俺は突如として出現した下ネタに顔を赤らめて誤魔化すようにアイスコーヒーを飲んだ。それでも唯センコーはふふっ、などと笑ってカフェラテを飲んでいた。「でも本当に美味しいね。君の手から貰って食べたからかな? すっごく美味しいよ」
「……なんかやけに、俺に対して甘くありません? いつもはそんな褒めないのに」
「君を、その……。あ、あ、あやの、綾野くんを独り占めできるなら、僕は褒めるし貶せることだってできるんだから、ねっ」
俺の名字を言えないのになに言ってんだ、などと俺はそんな唯センコーに笑ってしまう。この人は器用そうで不器用なんだろうな、そう思って俺は食事を終えて唯センコーに合わせてアイスコーヒーを飲んでいたんだ。
ほとんどなにを話したかって言われると困ることがある。そもそもそこまで共通点というものがないのだ。俺は社会人だけど金に関しては使うとしたらアニメやドラマをサブスクで見るとか、少年漫画を中古で買うぐらいの趣味だ。それからアルバイトのことや家事のこととか。
アニメやドラマや漫画などはともかく、ほかの話題などつまらないはずだ。でも唯センコーはアニメやドラマや漫画なんかよりも、俺のアルバイトや家事のことを興味深く聞いていた。
特に家事に関しては「僕も頑張らないとなぁ~。偉いねぇっ」そう言って褒めてくれるのだ。それが気恥ずかしくて堪らない。
というかほとんど俺が話してしまった。アルバイトや家事は愚痴みたいなものなのに、唯センコーは嬉しそうに聞いてくれる。それがどうしてか俺も嬉しさを伴わせた。
カフェを出る前にこれからどうしようかと俺は唯センコーに問いかけた。すると唯センコーは真珠みたいな大きな瞳で恥ずかしそうに呟くのだ。「……君のおうちに、行きたいな」その言葉に俺はなぜか嫌悪感を抱かなかった。
ただひたすらにこの人と居たいとどうしてか俺は不覚にも考えてしまうのだ。家に連れ込んでしまったら、また過ちを犯す可能性があるというのに。でもそれでも、――居たい。一緒に居たいのだ。
「……俺の家、汚いですよ?」
「汚かったら僕が掃除してあげるっ!」
「せんせーがやったらなんか逆に汚くなりそうです」
「そんなことないもんっ!」
他愛無い話をして俺たちはカフェを出たのであった。
俺がそう考えていると唯センコーがカフェラテを一口飲んで顔を薄紅色に染めていた。「美味しいなぁ~。ほっとするっていうか、なんていうか……」それから笑うあどけない瞳をした唯センコーの表情が眩しく見えてしまうのだ。
俺は誤魔化すようにハムチーズのホットサンドを思いっきり食んだ。唯センコーが眩しく見えるのは腹が空いているのと少し眠いからだと思い込ませたんだ。
もぐもぐと食べていると唯センコーが物欲しそうな顔をする。もしかして腹が減っているのかな、そう思ってハムチーズのホットサンドを唯センコーへ差し出した。
「どうぞ、俺の食べかけですけど」
「えっ、いいの!?」
「嫌なら別にいいですけど……」
すると唯センコーはかぶりを振ってそのままかぶりついた。でも口元が小さいのでかぶりついても一口が俺よりも小さい。だから俺はなんとなく口元を綻ばせて笑ってしまう。「ふふっ、小さいじゃないですか。もっと大きく食べて良いですよ?」
しかしそれでも唯センコーはもぐもぐと咀嚼して食べ始めて喉元を鳴らして飲み込んだ。それからあどけない表情で誇るような笑みを見せる。
「君が笑うと僕も嬉しいな。あっ、ちなみに僕は君の君自身ならたとえ口元が小さくても根本を僕の喉元以上に飲み込んでみせるよ」
「なっ……!? なに朝っぱらから……」
俺は突如として出現した下ネタに顔を赤らめて誤魔化すようにアイスコーヒーを飲んだ。それでも唯センコーはふふっ、などと笑ってカフェラテを飲んでいた。「でも本当に美味しいね。君の手から貰って食べたからかな? すっごく美味しいよ」
「……なんかやけに、俺に対して甘くありません? いつもはそんな褒めないのに」
「君を、その……。あ、あ、あやの、綾野くんを独り占めできるなら、僕は褒めるし貶せることだってできるんだから、ねっ」
俺の名字を言えないのになに言ってんだ、などと俺はそんな唯センコーに笑ってしまう。この人は器用そうで不器用なんだろうな、そう思って俺は食事を終えて唯センコーに合わせてアイスコーヒーを飲んでいたんだ。
ほとんどなにを話したかって言われると困ることがある。そもそもそこまで共通点というものがないのだ。俺は社会人だけど金に関しては使うとしたらアニメやドラマをサブスクで見るとか、少年漫画を中古で買うぐらいの趣味だ。それからアルバイトのことや家事のこととか。
アニメやドラマや漫画などはともかく、ほかの話題などつまらないはずだ。でも唯センコーはアニメやドラマや漫画なんかよりも、俺のアルバイトや家事のことを興味深く聞いていた。
特に家事に関しては「僕も頑張らないとなぁ~。偉いねぇっ」そう言って褒めてくれるのだ。それが気恥ずかしくて堪らない。
というかほとんど俺が話してしまった。アルバイトや家事は愚痴みたいなものなのに、唯センコーは嬉しそうに聞いてくれる。それがどうしてか俺も嬉しさを伴わせた。
カフェを出る前にこれからどうしようかと俺は唯センコーに問いかけた。すると唯センコーは真珠みたいな大きな瞳で恥ずかしそうに呟くのだ。「……君のおうちに、行きたいな」その言葉に俺はなぜか嫌悪感を抱かなかった。
ただひたすらにこの人と居たいとどうしてか俺は不覚にも考えてしまうのだ。家に連れ込んでしまったら、また過ちを犯す可能性があるというのに。でもそれでも、――居たい。一緒に居たいのだ。
「……俺の家、汚いですよ?」
「汚かったら僕が掃除してあげるっ!」
「せんせーがやったらなんか逆に汚くなりそうです」
「そんなことないもんっ!」
他愛無い話をして俺たちはカフェを出たのであった。
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる