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《曇天の心模様》
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俺が通っている専門学校は一階がクラスルームでその下が学生ホールや食堂がある。そして二階に上がると二年生のクラスルームがあるのだが実習室もあるのだ。ちなみに離れが三年生のクラスルームである。そしてロッカールーム兼着衣室は下の階である。
俺が気合いを入れて黒井くんと幹下と一緒に実習室へ向かおうとすると、急に声を掛けられた。薄いピンク色でストライプ柄のユニフォームを着た実里ちゃんが微笑んで近寄ってきたのだ。「キュウさ~ん、一緒に行こうよぉ!」
すると黒井くんは慌てだし、それをすかさず幹下がにこっと笑んで黒井くんと共に行ってしまう。おい、幹下。そういう空気読むのはやめろっつ~の。
「あぁ……、実里ちゃん。じゃあ、一緒に行こうか」
「うんっ。二人も行っちゃったしさ、行こうよっ!」
「う……うん。そうだね」
そう言って俺の腕にしがみつく実里ちゃんを俺は今、正直言って疎ましいと思っているんだ。申し訳ないんだけど、こういうことをされるとあとでツンデレかつヤンデレかつメンヘラの唯センコーになにを言われるかわからない。
昨日は「浮気しないでくださいっ!」などと言って帰ったから、また唯センコーを傷つけてしまったらと思うと俺の心が痛むんだ。
ここ数日で唯センコーと触れ合ったからか、唯センコーばかり考えてしまう。これが恋って奴か?
そんな俺は上機嫌な実里ちゃんと実習室へ向かおうとした。だけど、その前にどこかで見ているかもしれない唯センコーの誤解を解こうとして辺りを見渡す。
すると実里ちゃんが声を掛けてきた。「どうしたんですか? 急に辺りを見渡して……」
「あぁ。俺と実里ちゃんの実習担当教師って唯原せんせーでしょ? あの人、俺には厳しいからさ。実里ちゃんとはなんともないですよって言っておかないとなぁ~って。そうした方が実里ちゃんも厳しい目で見られないでしょ?」
俺は脳内フラッシュ暗算で導き出した答えで示し合わせた。こう言った方が相手も自分のことを考えてくれていると勝手に思ってくれるから楽なものである。
でも実里ちゃんは顔を伏せたかと思えばいきなり俺に抱き着いてきたのだ。俺はのしかかってくるぬくもりと柔らかい身体で唖然としてしまう。
「わっ、私はっ、キュウさんとなら勘違いされても……いいかなって!」
「……実里ちゃん?」
それでも俺は、今の俺は唯センコーを裏切れないから君の身体を抱きしめられないよ。だから離そうとした時に、――声が聞こえた。「ねぇ、唯ちゃん~。また遊ぼうよぉ」
誰だこの声? 俺は実里ちゃんを無理やり引きはがして階段の下を見やる。すると唯センコーが誰かと話をしていた。俺たち一年生はネームプレートを下げている。まだ皆の名前をクラスメイトも先生方も覚えていないからだ。
でもその男はネームプレートなど下げていない。でもユニフォームは着ている。恐らくだが今、実習期間中の三年生だと見た。
三年生はあと二か月間を病院で過ごせば国家試験対策に入る。ちなみにその次が二年生の実習で、そのあとに俺たち一年生の初めての実習に入る。「ねぇ、唯ちゃんてばぁっ~!」その馴れ馴れしい態度の男は唯センコーへ、うざいほど腕を組んで絡めてくる。
おい、てめぇ少しピアス空けているからって調子乗んなよ。その可愛くてハニートラップを仕掛けるセンコーは俺専用のオナホ……じゃなくて。――彼女なんだよ。「実里ちゃん、ごめんね。ちょっと離れるね」
「え、あ……はいっ!」
実里ちゃんと別れて俺は満面の笑みを浮かべて困っている様子の唯センコーへ駆け寄った。その笑みは男にとっては猟犬のような笑みで、唯センコーにとっては大好きな笑顔のはずだ。「唯原せんせーっ! 実習が始まっちゃいますよ?」
「あぁ……、うっ、うんっ! じゃあ、あの……、それでは」
「えぇ~。待ってよっ、唯ちゃん~! 俺、せっかく時間が空いたのにぃ~!」
時間が空いたんなら記録でも書け、黒髪チャラ男めっ。「行きましょ、せんせー?」俺はユニフォーム姿の唯センコーの腕を引っ張ったのだ。
俺が気合いを入れて黒井くんと幹下と一緒に実習室へ向かおうとすると、急に声を掛けられた。薄いピンク色でストライプ柄のユニフォームを着た実里ちゃんが微笑んで近寄ってきたのだ。「キュウさ~ん、一緒に行こうよぉ!」
すると黒井くんは慌てだし、それをすかさず幹下がにこっと笑んで黒井くんと共に行ってしまう。おい、幹下。そういう空気読むのはやめろっつ~の。
「あぁ……、実里ちゃん。じゃあ、一緒に行こうか」
「うんっ。二人も行っちゃったしさ、行こうよっ!」
「う……うん。そうだね」
そう言って俺の腕にしがみつく実里ちゃんを俺は今、正直言って疎ましいと思っているんだ。申し訳ないんだけど、こういうことをされるとあとでツンデレかつヤンデレかつメンヘラの唯センコーになにを言われるかわからない。
昨日は「浮気しないでくださいっ!」などと言って帰ったから、また唯センコーを傷つけてしまったらと思うと俺の心が痛むんだ。
ここ数日で唯センコーと触れ合ったからか、唯センコーばかり考えてしまう。これが恋って奴か?
そんな俺は上機嫌な実里ちゃんと実習室へ向かおうとした。だけど、その前にどこかで見ているかもしれない唯センコーの誤解を解こうとして辺りを見渡す。
すると実里ちゃんが声を掛けてきた。「どうしたんですか? 急に辺りを見渡して……」
「あぁ。俺と実里ちゃんの実習担当教師って唯原せんせーでしょ? あの人、俺には厳しいからさ。実里ちゃんとはなんともないですよって言っておかないとなぁ~って。そうした方が実里ちゃんも厳しい目で見られないでしょ?」
俺は脳内フラッシュ暗算で導き出した答えで示し合わせた。こう言った方が相手も自分のことを考えてくれていると勝手に思ってくれるから楽なものである。
でも実里ちゃんは顔を伏せたかと思えばいきなり俺に抱き着いてきたのだ。俺はのしかかってくるぬくもりと柔らかい身体で唖然としてしまう。
「わっ、私はっ、キュウさんとなら勘違いされても……いいかなって!」
「……実里ちゃん?」
それでも俺は、今の俺は唯センコーを裏切れないから君の身体を抱きしめられないよ。だから離そうとした時に、――声が聞こえた。「ねぇ、唯ちゃん~。また遊ぼうよぉ」
誰だこの声? 俺は実里ちゃんを無理やり引きはがして階段の下を見やる。すると唯センコーが誰かと話をしていた。俺たち一年生はネームプレートを下げている。まだ皆の名前をクラスメイトも先生方も覚えていないからだ。
でもその男はネームプレートなど下げていない。でもユニフォームは着ている。恐らくだが今、実習期間中の三年生だと見た。
三年生はあと二か月間を病院で過ごせば国家試験対策に入る。ちなみにその次が二年生の実習で、そのあとに俺たち一年生の初めての実習に入る。「ねぇ、唯ちゃんてばぁっ~!」その馴れ馴れしい態度の男は唯センコーへ、うざいほど腕を組んで絡めてくる。
おい、てめぇ少しピアス空けているからって調子乗んなよ。その可愛くてハニートラップを仕掛けるセンコーは俺専用のオナホ……じゃなくて。――彼女なんだよ。「実里ちゃん、ごめんね。ちょっと離れるね」
「え、あ……はいっ!」
実里ちゃんと別れて俺は満面の笑みを浮かべて困っている様子の唯センコーへ駆け寄った。その笑みは男にとっては猟犬のような笑みで、唯センコーにとっては大好きな笑顔のはずだ。「唯原せんせーっ! 実習が始まっちゃいますよ?」
「あぁ……、うっ、うんっ! じゃあ、あの……、それでは」
「えぇ~。待ってよっ、唯ちゃん~! 俺、せっかく時間が空いたのにぃ~!」
時間が空いたんなら記録でも書け、黒髪チャラ男めっ。「行きましょ、せんせー?」俺はユニフォーム姿の唯センコーの腕を引っ張ったのだ。
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