【完結】恋愛強制執行!?―俺様ホストの甘い罠―

砂原紗藍

文字の大きさ
21 / 31
気づけば彼のことばかり

20.素直になれない夜に

しおりを挟む
side 陸

あれから一週間。
最近、カイトとゆっくり過ごせていなかった。
あいつはホスト。俺は普通の会社員。生活リズムが違うのはわかってる。

それでも休みの前日や空いている時間は、どちらかの家で一緒にいることが多かった。
けど、この一週間はずっと客とのアフターや店外デート……。

わかってる。仕事だから仕方ない。売れっ子ホストなんだから。

“忙しくて、なかなか陸との時間が作れない”

カイトはそう言ってたけど、俺の方がよっぽど寂しい思いをしてる。
俺には“他の奴と遊ぶな”だの制限ばっかりで、自分は客と楽しくやってるんだろう。

だから今日は先輩たちに誘われた飲み会に参加した。
別に意地を張ったわけじゃない。……多分。

くだらないゲームの罰ゲームでキスされたりとかはあったけど、正直どうでもよかった。ふざけて頬にされただけだし。

「お前は俺の恋人だろ。だから他の奴に触られるのは嫌なんだ」
「……別に恋人って決めた覚えないし」

そう言いながらも、顔が熱くなってるのがわかる。

「俺が決めた」
「勝手に決めるなよ」

でも、嫌じゃない。そんな自分が恥ずかしくて、視線を逸らす。

「お前を離すつもりなんかねぇから」

その言葉に胸の奥が温かくなった。
でも素直じゃない俺は、カイトから距離をとる。

「……知らねぇ。シャワー浴びる」

立ち上がってバスルームに逃げ込む。鏡に映る自分の顔が真っ赤で情けない。

冷たい水で顔を洗いながら考える。
カイトは本当に俺のことを大切に思ってくれてるんだろう。
まあ、ただの独占欲に見えなくもないけど。
でもあんな真剣な顔で見つめられると……。

「バカだな、俺」

シャワーを浴びて、気持ちを落ち着かせる。でも胸の鼓動はなかなか収まらない。
バスルームから出ると、カイトがベッドに座って待っていた。 

「……もう寝る」
「陸、ちょっと話そうよ」
「話すことなんかない」
「あるよ。俺、ちゃんと説明したいことがあるんだ」

カイトが珍しく真面目な顔をしている。でも今は素直に話を聞く気分じゃない。

「明日にして」

ベッドに潜り込んで布団を被る。

「陸……」

カイトの声が聞こえるけど、返事をしない。
しばらくして、隣にカイトが横になる気配がした。腕を回されて、背中に体温を感じる。

「怒ってる?」
「……別に」
「嘘だ。俺のせいで寂しい思いさせたよな」

図星を突かれて、体が強張る。

「別に寂しくなんか……」
「嘘つくなって。俺も寂しかったよ。陸に会えなくて」

耳元で囁かれて、心臓がまた跳ねる。

「だから明日は一日中一緒にいよう。どこか行きたいところある?」
「……別に、どこでもいい」

そう答えながらも、内心では嬉しくて仕方ない。

「じゃあ俺が決める。陸の好きそうな場所」
「……勝手にしろ」

強がってるけど、もうカイトにはバレてるんだろうな。

「おやすみ、陸」
「……おやすみ」

抱きしめられながら眠りにつく。
素直になれない自分が嫌になるけど、こうしてカイトがそばにいてくれるだけで安心する。

明日はちゃんと話そう。そう思いながら、意識が遠のいていった。​​​​​​​​​​​​​​​​






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

聖獣は黒髪の青年に愛を誓う

午後野つばな
BL
稀覯本店で働くセスは、孤独な日々を送っていた。 ある日、鳥に襲われていた仔犬を助け、アシュリーと名づける。 だが、アシュリーただの犬ではなく、稀少とされる獣人の子どもだった。 全身で自分への愛情を表現するアシュリーとの日々は、灰色だったセスの日々を変える。 やがてトーマスと名乗る旅人の出現をきっかけに、アシュリーは美しい青年の姿へと変化するが……。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

処理中です...