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始まりは人事異動
しおりを挟むここは獣人が住まう国ドラレイド帝国
10年前まで小さな獣人の村々が点在していたこの周囲一帯は植民地までは行かないが、隣にあった悪魔族の大国から度々侵攻され、資源や食料を搾取される被害が起きていた
領土を奪われる侵略までいかなかったのは、元々獣人という存在が身体能力的にも強く、戦闘のセンスが恐ろしくある脳筋が多かったから…
しかし、力の弱い種族も勿論いる…戦闘に適さない種族等は土地を追われ隠せ住む事もあった…
そこで立ち上がったのが獅子の戦士
「「獣人の住まう地を!!俺が守る!!!今こそ安全と平和に保つ為統治する!!!」」
そう、剣を掲げた素晴らしい筋肉とカリスマ性を持つ獅子は瞬く間に隣国から搾取をされていた村々を救い、軍のような集まりとなっていった…
獅子の王は想像を超える強さで負けなどなく勝ち進み、集った獣人も素晴らしい脳筋具合で戦った
結果、隣の大国が完全撤退した事を期に国を作る
その獅子の王によって統治され、作られた新興国がドラレイド帝国だ
たった10年で村しか無かったこの地域は、立派に国として生まれ変わり、今では周辺一帯の獣人全てが住まうと言っていいほどの巨大な帝国へと進化を遂げてた
現国王はムキムキ獅子の国王様…剣を掲げ人々を救った英雄は現在も、その素晴らしいカリスマで国を大きく強固にしている
隠れ住んでいた少数民族が合併を求めてくるほどに…
新興国と侮り、戦争を仕掛けて来る阿呆な他国には勿論、侵攻などさせぬ!!と、サクッと勝ち続けている我が国の未来は明るい
国王には元から群れがあり妻が15人、子は40人程いた、その子供も強いのなんの…1人で軍隊くらい強い、向かう所敵無しなのだ
最も安心で最も豊かな国…獣人の安息の地…それがドラレイド帝国、そんな国に僕は住んでいる
帝国なのに皇帝じゃないの?って、人国方面にも旅に行く、知り合いの渡り鳥くんが言ってたが…皇帝より国王の方が堅そうでかっこいいからと国王陛下がいうのだからしょうがない、それがドラレイド帝国の常識なのだろう
そんな今をときめく…?急成長するドラレイド国では王家のみじゃ国は成り立たないと、国王の直感でスカウトされ一族丸ごと役職に就いたりとかなんかすごい状況だ
例えば建築得意そう!と起用されるゴリラとサイの一族とか…軍で馬に乗るより馬本人で走ったほうが早い!強そう!と馬族が起用されたり…王家の影としてなんかいいサイズ感!と10年前からなんかノリで影としてネズミ族が起用されたり…
そのどれもがいい感じに的確なポジションなのだからすごい
そんな雇用されているネズミ族の1人が僕…だ
僕はチュウラルド、ごくごく普通のネズミ族…魔術が他の獣人よりも好きな、ただのネズミ族…
本当は魔術の研究者になりたかった…のに、普通のドラレイド帝国民だったのに…なんで僕、第一王子の影兼護衛とかしてるんだろう
せめて護衛は別で雇ってくれないかな?無理なのは分かってるけど…
「はぁ…実家に…山奥のおじいちゃんのところに帰りたい…僕には荷が重い…てか、なんで僕ネズミなのに猫科の王家に仕えないといけないの!?護衛相手の狩猟本能が呼び覚まされそうな影って何!?
魔術の研究したいよぉ………」
「おいおい!?チュウラルド!心の叫びが物凄く声に出てる出てる!!
はっはっはっ!本当に面白い奴だよなお前!私の護衛なんて給料もいいし普通なら光栄だと喜ぶ所だぞ?」
バンバンと笑いながら逞しいムキムキの太ももを叩き爆笑するのがこの国の第一王子…ダルジュ様…
国王陛下の血を色濃く引いた獅子の獣人
王家の影に付くネズミ族は僕らチュウ家…ネズミ族の中でも特に魔力が多く、獣人が苦手とする魔術を使用できる
ドラレイド帝国ができてからは、そこそこ由緒正しい家系となったただのネズミ族だ
6男の僕は王家の影とかなりたいとも思って無かった為、表舞台に出ること無く魔術を研究して過ごしていたかったのに…
山奥のおじいちゃんの家に居た僕を、遠征で訪れたダルジュ様が発見、影にしたいとスカウトし…まさかの山奥から王宮の屋根裏へ大出世してしまった
まさかおじいちゃんが定年までの数年、現国王陛下の影をしていたなんて事実を知ったりしながら…
「だって…ダルジュ様…僕はネズミ族ですよ?屋根裏で影をするのがお仕事なのに…室内で護衛の仕事までしろって言うんですもん
この制服だって…何考えたらこんな制服を作ろうと思えるんです?ソックスガーターとか淫魔族の性癖でしか見たことありませんよ!?僕…もう30歳なのに…こんな少年みたいな服着せて…てか動きにくいし…サスペンダーいらないんでボロキレ下さい…」
鏡に映る自分の姿を見て悲しくなる
僕はネズミ族、見た目が可愛らしく、更には若い見た目で老いていくネズミ族…50代でも少年と見間違う幼さがあるネズミ族なのだ
ちゃんとしっかり30歳ですと自己紹介したのに…可愛い見た目なら可愛い服を!!!と本気で美少年の可愛い子猫が着るみたいな服を用意しなくたっていいじゃないか…
これはもう影じゃない、第一王子に可愛がられてるネズミ族の小間使いみたいになってる!!!
「ははは!!その服は自分の影が絶対着ないと逃げた母上の趣味だ!可愛いものには可愛いを着せよ、それが母上の教えなのだから諦めろ!
それを着ているだけで給料が増えるんだぞ?いいことじゃないか!魔導書も追加で買えて!」
「そ、それはそうですけど………うう、おっさんになってまでこの格好は恥ずかしいんですよダルジュ様………」
わしわしとまるで子供のように僕の頭を撫でてくるダルジュ様…おれが身長130cmしか無いのに、ダルジュ様は190cmを超えている…悲しき種族差での身長差を今日も痛感する
ダルジュ様!!まだ18歳の癖に~~……!!!いくら高貴なお人とは言え!!年上は年上として扱って下さいよ!!…………なんて言っても聞いて貰えらえないんだろうな…
暫しの間大人しく撫でられてると、可愛いと褒められて毎日癒しをありがとうと、高級チーズをポケットにパンパンになるまで捩じ込まれた
第一王子でも色々ストレスって溜まるんだろうな…とありがたく高級チーズは受け取っておく
「それはそうと、チュウラルド!お前が言っていた護衛の件だが、丁度いい人材を見つけてなお前と交代制で私の護衛に付いて貰う事にした!
これで少しは息抜きできる時間が増えるだろう?んっ?」
「……………え、ほ!ほんとですか!?!さすがダルジュ様!!雇用環境分かってるー!!てか、側近居ないのがおかしいんですよ!?第二王子も第三王子もその他王子王女もみんな側近いるのに!
フェロモンがどうこうあるのはわかりますけど!僕一人で全部はしんどかったんですからね!」
ダルジュ様は国王陛下の血を濃く引きすぎていて、全身からエロスなフェロモンがダダ漏れなのだそうだ…それはもう一吸いすれば自分を雌にして♡って発情してしまうとかなんとか
僕がここに来るまで高確率で側近が発情していたという悲しい過去がある…それもあって何故か発情しない僕は重宝すると影の仕事しながら護衛もしているのだ
悪い悪いと笑いつつ、ダルジュ様はもうすぐ人事異動でこちらに新しい護衛が到着するのだと教えてくれた
戦場で一軍の特攻隊長を務めていた馬族の青年…今回の作戦で部下を庇って怪我をし、前線から離れたのをスカウトしてきたらしい…一度会ったことがあるが、発情もせず仕事に励むいい男?みたいで…
どんな人なんだろう…?特攻隊長とかどう考えてもデカくて怖い人だと思うし、僕…仲良くできる自信正直無い…けど!多忙な業務が減るならそれは嬉しい!!
色んな意味でドキドキしつつ、僕はダルジュ様と共に新しい護衛の人物を待っていた
何故が、急に?微かに匂いがする気がして…段々いい匂いが近づいて来て来るのを感じながら…
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