ネズミくんは物理的に愛されたい!

たなぱ

文字の大きさ
3 / 11

それは運命の香り

しおりを挟む




待ちに待った人員補充、ダルジュ様が新しい護衛の青年がもうすぐ到着すると言ってから、クンクンと知らずに匂いを嗅いでしまう自分がいる
何故か扉の向こう…廊下の方…どこから漂ってくるか分からない…けど、嗅いだことの無い…物凄く甘くて…いい匂いがする…?


気のせいかと思って「なんかいい匂いしませんか?」とダルジュ様に聞いても「私のフェロモンの匂いを遂に感じたか!?」と理由のわからない返答を返ってきた…何それ嫌だ、やめてくれ


違いますー!!冗談でもやめて下さい!なんか知らないけど僕、ダルジュ様のフェロモンは全く効かないんでここにいるんでしょ!?ダルシュ様良い匂いとか言ったら駄目じゃないですか!
…って、第一王子殿下と他の人には見せられない絶妙に不敬とか言われそうな会話をしつつ、段々と強くなるいい匂いに心拍数が上がるのを感じながら…何処か上の空で護衛の青年を待った…




「只今エレド到着致しました!失礼します!」




コンコンって軽いノックの音と…心地良い、低めの声
これまで生きてて聞いたことの無いようなズシリと心臓に響く声がして、どうしてか心がゾワゾワと謎の緊張に包まれる中、扉は開き、ダルジュ様の部屋に馬族の青年が入ってくる
一目でわかる戦場を生き抜いてきた者特有の強者のオーラ…そして恐ろしい程男前な顔立ち…褐色の皮膚に漆黒の美しい髪、淡い琥珀の瞳…馬族と言うだけあってかなりの高身長…ダルジュ様と比べるとわかる確実に2mはある長身の男…
足を怪我しているのか、右足を庇うように歩き静かに部屋の中央まで来るとダルジュ様の前に跪いた


「発言を失礼します、この度は貴重なお誘い、感謝いたしますダルジュ第一王子
自分はエレド、国の成り立ちより陛下の下で第一軍特攻隊長を務めおりました、確かに腕には自信があります…しかし、本当に自分でよろしいのでしょうか?
戦場にて足を負傷し、馬族としてはもう走れない自分がダルジュ第一王子の護衛等…つと……………」


「よく来てくれたな!エレド!待ちわびたよ
足の怪我など、全く問題無い!私は父上と違い戦場よりも王宮で静かに過ごしたい質なのでな!今後は他国との交流も盛んになる、護衛としてのお前の腕を期待してるぞ!!
そうだな、まずは紹介しよう、お前と同じ護衛の任務についているネズミ族のチュウラ…?…………ん?どうした?変な顔をして、というかエレドもどうした?口が開きっぱなしだぞ?」



どうしたもこうしたもない…
僕は急に目眩がするほど、あまりにも濃くなった良い匂いくらくらして…立っていられずその場で床に座り込んでしまっていた
第一王子の前なのに…元特攻隊長との自己紹介なのに…わかってるのに…足がガクガクする…
なに、これ…身体がゾクゾクとしびれて身動きが取れない…段々と体温も上がってる感じがする…
動きたいのに動かない…礼儀を弁える事も出来ずにいるって事はわかってるのに…駄目だ…これ
原因はわかってる、目の前の…その、元特攻隊長エレド様からとんでもなく良い匂いがするんだもの…!!!



脳を、心臓を、全身の本能を揺さぶるような甘く優しい香り、なのにあまりにも恐ろしく…心臓を突き刺すような香りが元特攻隊長から漂ってくる…
何これ、知らない…こんなの…狂いそうっ♡

よく見ると、エレド様も胸を押さえ、息も絶え絶えと言った感じに僕を燃やし尽くすような目で見てくる…
見つめられてるだけなのに…どうしようもなく嬉しくて…見ず知らずの人なのに愛おしいと感じてしまう…なんで?どうして?急にこんな気持になるなんてあるのか!?




………………まさか、まさか僕は彼の…彼が…僕の……………




頭の中で一つの答えが出そうになり、ダルシュ様が「どうした!?」って心配そうに声を荒げているのがわかった…でも、答えることが出来なくて…
まずい、視線を合わせてるだけなのに気持ちいい…好き…愛してる…って気持が溢れてくる、全然知らない人なのに…愛してるんだ…
全身が歓喜する、喜びに震え互いに求めあってしまう…自分じゃ止められないこの気持ち…これは、これは…もしかして…




【運命】




それしか当てはまらない

「……………っ、はぁっ、ううっ………チュウラルド!!気合いだー!気合いが足りない!!確実に運命!いやいや運命とかそんな事考えてる場合じゃなーい!!腰を抜かしてらんない!不敬!これダルジュ様からみたら何してんだよ、おれの部下仕事しねぇって不敬になっちゃう!!!」

「…………っ、運命…これが運命………不敬………ゔくっ…確かに…!不敬問題が先だ……!」



僕は必死に理性を総動員し自分にツッコミを入れた、ここは職場!第一王子の前!!だって
すると知らぬ間に僕と同じ様に床に座り込んでしまわれていたエレド様と自分自身にツッコミを入れる
そして二人で謎に頷き愛、もう我慢出来そうもないのでダルジュ様にさっさと事情を説明してしまおうと、始めて出会ったとは思えないくらい以心伝心をエレド様と感じつつダルジュ様を見つめた



「「ダルジュ様、大変申し訳ございませんが運命的な番のアレ、伝説のアレを感じてしまい理性が持ちません!!発言と行動が理性を越えてしまいます!!!5分!5分間だけ不敬をお許し下さい!!!」」



見事な言葉の被り具合にさらに運命を感じる…
そのままダルジュ様がいいよ?って言うのと同時に初めましての馬族の青年、エレド様のムキムキの胸に飛び込み、互いに服を脱ぐ勢いで抱き締めあって、直ぐキスできるよ♡な状態で僕たちは互いのフェロモンを実感し合った


はわわわっ♡♡♡やばい、やばい…!!!ダルジュ様いいよって言ってないけど自分じゃ止められない!!
何これ!?何?!この気持ちー!!!本当に不敬で罰せられちゃうかもしれない…!でも、本能が!チーズを前にした自分くらい本能が溢れ出てくる!新体験!!
き、キスくらいは!キスくらいは許して…、いや、許さないで…その先へは進んでないから許して…でも、いや…ちくしょう!助けてダルジュ様ぁ!!


訳もわからず興奮しまくっている現状、運命としか…エレド様が僕の番なんだって事しか思えない事態に動揺しつつ、互いに第一王子王子を目の前にしてキスするとんでもない失態をしちゃいけない、けどしたい!でもぉ!って感じに顔を近づけ、離し、近づけ…離し…を繰り返してしまう



ダルジュ様が今にも大爆笑しそうな顔をしている事も知らずに、ムキムキの胸にしがみつきながら僕は必死に残り僅かの理性と戦っていた






しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

気絶したと思ったら闇落ち神様にお持ち帰りされていた

ミクリ21 (新)
BL
闇落ち神様に攫われた主人公の話。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

処理中です...