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本編
第二王子(前)
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「お前が精霊姫か?」
食堂から部屋に戻る廊下で、後ろから誰かが高圧的な声で呼び掛けてきた。
振り返って相手を確認すると、緩いウェーブのかかった金髪に紫の瞳の青年が立っていた。
服装から察するに、おそらくそれなりの身分なのだろう。
初対面であるにも関わらず高圧的な態度は、初見のキャサリンちゃんを彷彿させる。
ということは目の前の男は王族なのか?
そういえばセインも出てこないしな。
「あんたこそ誰?」
でも俺だって不本意な境遇だし、王族だからって下手に出るつもりはないから、突っ掛かった言い方されればそういう返しをする。
「ふーん。精霊姫が男だってのは聞いてたけど、なかなかの美人じゃん」
何なんだこいつ?
名乗りもせずに人のことを舐め回すように見やがって!
腹が立ったから俺は、無言で身体を180度回転させると、部屋への道を歩き出した。
すると一瞬空間が歪んだ様なグニャリとしたような感覚があって、目の前に金髪紫目の青年が現れた。
歩いていた俺は反応することが出来ずに、男の胸に飛び込む形でぶつかってしまう。
「おっ、精霊姫は大胆なんだな?」
そう言って嫌な笑みを浮かべた男は、俺の体のラインを確認するように背中から腰にかけて手を滑らせた。
「マリオン殿下、失礼しました。姫様! 大丈夫ですか?」
ポワソン少年が慌てて、俺を金髪紫目男から引き剥がしてくれた。
何だこいつ?
転移魔法で目の前に現れるとか卑怯だろ。
何で俺がこいつの胸に飛び込まなければならないんだ!
というか、然り気無く人の体を触ってるんじゃねえよ!
イライラする……。
あれ?
今ポワソン少年は、この男のこと殿下って言ったよな?
それで殿下っていうのは、確か王子に付ける敬称だったはず。
「え? 王子?」
声に出ていたらしく、金髪紫目野郎がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「やっと分かったのか? もしかして兄貴は、お前に俺のこと話してなかったのか?」
「聞いてない」
偉そうに聞かれたけど、本当に知らないのだから正直にそう答える。
兄貴ということは、目の前のこいつはルシアン王子の弟か。
何才なんだろ?
俺と同じくらいにも見えるけど。
「なぁ、お前まだ兄貴と契ってないだろ? あんな奴やめて俺の嫁になれよ?」
今何て言った?
「マリオン殿下、失礼ながら申し上げます。姫様はルシアン殿下が召喚なさった伴侶様にございます。いくらマリオン殿下であらせられても、私は聞き流すことは出来ません!」
ポワソン少年カッコいい! ってそんな場合じゃないか……。
「侍従ごときに指図される筋合いはないな!」
そう叫ぶように言うと、マリオンとかいう王子がポワソン少年を魔法で吹き飛ばした!
「ちょっ! お前! ポワソンに何するんだよ!?」
慌ててポワソン少年の元へ駆け寄ろうとするけど、マリオンの腕が俺の腰を掴んで引き寄せてしまって体勢を崩してしまう。
「おっと!? お前は俺と一緒に来るんだよ?」
そう言われた瞬間、またグニャリと空間が歪んだ気がして咄嗟に目を瞑ってしまった。
そして次に目を開ければ、そこは知らない豪華な部屋だった。
俺の腰を掴んでいたマリオンは俺を姫抱きすると、やたら豪華なベッドに投げこんだ。
「何すんだよクソ王子‼」
いきなり投げるものだから、軽く舌を噛んじゃったじゃないか!
クソっ……。
「この状況でまだそんな強気でいれるんだ?」
「こっち来んな!」
「暴れられると面倒だから拘束させてもらうわ♪」
マリオンは鼻息混じりに魔法を使って、俺の両手両足をベッドに縫い付けるように拘束した。
「あの誰にも興味のなかった兄貴がさぁ、家族の誰にも会わせないほど執着して隠しているんだ。よっぽど良い身体してるんだろうな?」
綺麗な顔をしている癖に、ネットリとした視線が気持ち悪い……。
「そんなのは知らねえよ! いきなり召喚されて伴侶になれとか言われても訳が分からないし、第一俺は男なんだから普通に考えて結婚なんて無理だろ!?」
俺が一思いにそう言うと、マリオンはベッドに乗り上げて俺の顔を除き込んだ。
「お前兄貴に何も聞かされてないのか?」
何もって何だよ?
言っている意味が理解出来なくてキョトンとしていると、ブッと吹き出す音が聞こえた。
馬鹿にされた気がして思わずマリオンを睨みつけると、呆れたような表情で俺を見下ろしていた。
「そんなことより、ここは一体どこなんだよ! それから今すぐに拘束を解けよ!」
「あぁ……。まぁそのまま聞けよ。暴れられても面倒だしな。それにしてもこんな状況なのに強気でいられるなんて、お前凄いな」
「暴れねえから拘束解けよ!」
「それはちょっと信用しきれないから、体勢だけ変えてやる」
魔法で体が浮かされると、ベッドの背にもたれ掛かるように座らされた。
もちろん拘束はされたままだ……。
食堂から部屋に戻る廊下で、後ろから誰かが高圧的な声で呼び掛けてきた。
振り返って相手を確認すると、緩いウェーブのかかった金髪に紫の瞳の青年が立っていた。
服装から察するに、おそらくそれなりの身分なのだろう。
初対面であるにも関わらず高圧的な態度は、初見のキャサリンちゃんを彷彿させる。
ということは目の前の男は王族なのか?
そういえばセインも出てこないしな。
「あんたこそ誰?」
でも俺だって不本意な境遇だし、王族だからって下手に出るつもりはないから、突っ掛かった言い方されればそういう返しをする。
「ふーん。精霊姫が男だってのは聞いてたけど、なかなかの美人じゃん」
何なんだこいつ?
名乗りもせずに人のことを舐め回すように見やがって!
腹が立ったから俺は、無言で身体を180度回転させると、部屋への道を歩き出した。
すると一瞬空間が歪んだ様なグニャリとしたような感覚があって、目の前に金髪紫目の青年が現れた。
歩いていた俺は反応することが出来ずに、男の胸に飛び込む形でぶつかってしまう。
「おっ、精霊姫は大胆なんだな?」
そう言って嫌な笑みを浮かべた男は、俺の体のラインを確認するように背中から腰にかけて手を滑らせた。
「マリオン殿下、失礼しました。姫様! 大丈夫ですか?」
ポワソン少年が慌てて、俺を金髪紫目男から引き剥がしてくれた。
何だこいつ?
転移魔法で目の前に現れるとか卑怯だろ。
何で俺がこいつの胸に飛び込まなければならないんだ!
というか、然り気無く人の体を触ってるんじゃねえよ!
イライラする……。
あれ?
今ポワソン少年は、この男のこと殿下って言ったよな?
それで殿下っていうのは、確か王子に付ける敬称だったはず。
「え? 王子?」
声に出ていたらしく、金髪紫目野郎がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「やっと分かったのか? もしかして兄貴は、お前に俺のこと話してなかったのか?」
「聞いてない」
偉そうに聞かれたけど、本当に知らないのだから正直にそう答える。
兄貴ということは、目の前のこいつはルシアン王子の弟か。
何才なんだろ?
俺と同じくらいにも見えるけど。
「なぁ、お前まだ兄貴と契ってないだろ? あんな奴やめて俺の嫁になれよ?」
今何て言った?
「マリオン殿下、失礼ながら申し上げます。姫様はルシアン殿下が召喚なさった伴侶様にございます。いくらマリオン殿下であらせられても、私は聞き流すことは出来ません!」
ポワソン少年カッコいい! ってそんな場合じゃないか……。
「侍従ごときに指図される筋合いはないな!」
そう叫ぶように言うと、マリオンとかいう王子がポワソン少年を魔法で吹き飛ばした!
「ちょっ! お前! ポワソンに何するんだよ!?」
慌ててポワソン少年の元へ駆け寄ろうとするけど、マリオンの腕が俺の腰を掴んで引き寄せてしまって体勢を崩してしまう。
「おっと!? お前は俺と一緒に来るんだよ?」
そう言われた瞬間、またグニャリと空間が歪んだ気がして咄嗟に目を瞑ってしまった。
そして次に目を開ければ、そこは知らない豪華な部屋だった。
俺の腰を掴んでいたマリオンは俺を姫抱きすると、やたら豪華なベッドに投げこんだ。
「何すんだよクソ王子‼」
いきなり投げるものだから、軽く舌を噛んじゃったじゃないか!
クソっ……。
「この状況でまだそんな強気でいれるんだ?」
「こっち来んな!」
「暴れられると面倒だから拘束させてもらうわ♪」
マリオンは鼻息混じりに魔法を使って、俺の両手両足をベッドに縫い付けるように拘束した。
「あの誰にも興味のなかった兄貴がさぁ、家族の誰にも会わせないほど執着して隠しているんだ。よっぽど良い身体してるんだろうな?」
綺麗な顔をしている癖に、ネットリとした視線が気持ち悪い……。
「そんなのは知らねえよ! いきなり召喚されて伴侶になれとか言われても訳が分からないし、第一俺は男なんだから普通に考えて結婚なんて無理だろ!?」
俺が一思いにそう言うと、マリオンはベッドに乗り上げて俺の顔を除き込んだ。
「お前兄貴に何も聞かされてないのか?」
何もって何だよ?
言っている意味が理解出来なくてキョトンとしていると、ブッと吹き出す音が聞こえた。
馬鹿にされた気がして思わずマリオンを睨みつけると、呆れたような表情で俺を見下ろしていた。
「そんなことより、ここは一体どこなんだよ! それから今すぐに拘束を解けよ!」
「あぁ……。まぁそのまま聞けよ。暴れられても面倒だしな。それにしてもこんな状況なのに強気でいられるなんて、お前凄いな」
「暴れねえから拘束解けよ!」
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魔法で体が浮かされると、ベッドの背にもたれ掛かるように座らされた。
もちろん拘束はされたままだ……。
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